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キザムノ
STORY
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私の過去は今まで話したことがないような気がする。いや、みんな話したことがないから私だけではないか。
父親は私が幼い頃に女を作って出ていき、母親に育てられた。母親は比較的自由な教育方針で、何をやるにせよ、「音羽はそれをやりたいの?」と聞いてくる。料理も、そろばんも、ピアノも。私がやりたいと言ったことには何一つ否定しなかった。
でも、私が小3の頃、母は帰らぬ人となった。
いっぱい泣いた。ずっと私を応援してきてくれたから。
そして私は祖父母に引き取られた。
祖父母は厳しい人たちだった。「勉強だけが将来のためになる」と言って、習い事は全て辞めさせられた。友達と離れ離れになるのは寂しかったけど、しょうがなかった。
そして高校に入って、私は家を出た。早くこの檻から出たかったから。そうすれば今まで分からなかったことも分かるようになるかもしれない。そう感じていた。
だから私には誰かを愛するってことが分からない。誰かのために生きることはやったことがないから。ずっと独りぼっちで生きてきたような感覚だったから。そんなもの必要ないとされていたから。
高校生活が始まって、みんなと仲良くなった。他人の恋愛を見るのは好きだったから、初見でこの2人が付き合っているのは分かった。カレンと仲良くなったのはそれからすぐ後で、ずっと一緒にいる。
こんなことカレンには内緒だが、カレンと一緒にいるのは楽しい。毎日新しいことばっかだし、落ち着く。騒がしい学校内の光景を忘れさせてくれる、そんな存在だ。ついついお節介を焼いてしまう。
でも、それにちゃんと応えてくれるカレンのことが好きだ。LIKEの方で。この胸の高鳴りがそういうことなのかは知らないけど、多分そう。多分。多分…
あぁ、やっぱり私ってカレンといるとおかしくなるみたい。今日もちゃんと会えるかな?
―ピンポーン
この音が毎朝鳴る度に嬉しくなるのは、カレンには知る由もない。
父親は私が幼い頃に女を作って出ていき、母親に育てられた。母親は比較的自由な教育方針で、何をやるにせよ、「音羽はそれをやりたいの?」と聞いてくる。料理も、そろばんも、ピアノも。私がやりたいと言ったことには何一つ否定しなかった。
でも、私が小3の頃、母は帰らぬ人となった。
いっぱい泣いた。ずっと私を応援してきてくれたから。
そして私は祖父母に引き取られた。
祖父母は厳しい人たちだった。「勉強だけが将来のためになる」と言って、習い事は全て辞めさせられた。友達と離れ離れになるのは寂しかったけど、しょうがなかった。
そして高校に入って、私は家を出た。早くこの檻から出たかったから。そうすれば今まで分からなかったことも分かるようになるかもしれない。そう感じていた。
だから私には誰かを愛するってことが分からない。誰かのために生きることはやったことがないから。ずっと独りぼっちで生きてきたような感覚だったから。そんなもの必要ないとされていたから。
高校生活が始まって、みんなと仲良くなった。他人の恋愛を見るのは好きだったから、初見でこの2人が付き合っているのは分かった。カレンと仲良くなったのはそれからすぐ後で、ずっと一緒にいる。
こんなことカレンには内緒だが、カレンと一緒にいるのは楽しい。毎日新しいことばっかだし、落ち着く。騒がしい学校内の光景を忘れさせてくれる、そんな存在だ。ついついお節介を焼いてしまう。
でも、それにちゃんと応えてくれるカレンのことが好きだ。LIKEの方で。この胸の高鳴りがそういうことなのかは知らないけど、多分そう。多分。多分…
あぁ、やっぱり私ってカレンといるとおかしくなるみたい。今日もちゃんと会えるかな?
―ピンポーン
この音が毎朝鳴る度に嬉しくなるのは、カレンには知る由もない。
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