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キザムノ
意地③
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次の日、またラクタブドームで試合だ。今日は200m自由形。少し苦手な種目だが、後輩の藍とのバトルだ。
「負けませんよ。」
「藍、俺が負けるかもしれんって思ってるからちょっと傷つくわ。」
藍は最近になって力をメキメキと伸ばしてきている。ちょっと前まではハイアベレージをしたときにへばってたのに、最近は俺より早いタイムで泳いでも、ケロッとした顔をしている。
「そんなこと言って~」
俺が言っていることを冗談だと思っているのか、笑いながら俺の脇腹をつつく藍だけど、決して冗談を言っている訳ではない。本当にその可能性があるからだ。
召集所前でそんな話をしていたら、コールがかかった。
「んじゃ行くか。」
「はい!」
俺たちは気を引き締めて中に入っていった。
俺たちの前に4組あったのに、その時間は一瞬だった。気づけばもう1レーンのスタート台の前に立っていて、いつものルーティーンをしていた。
(調子はそこそこやけど、それは持久系の部分の話。スピードは嘘だと信じたいほど出ない。最初の50mは今の全力で、そこからは体力と相談だな。)
―ピッピッピッピッ…ピー…
「Take your marks…」
―ピッ
リアクションは珍しくいい方だ。浮き上がりも悪くない。そこまでは横とほぼ変わらなかったはずなのに、少しずつ離されていくのが分かる。
(マジかよ…)
そして、50mのターン。浮き上がってから横を見ると、体1個分の差があった。なら、落ちるまで待とうじゃないか。
俺はギアはそのままに、落ちてくる奴らを狩ることを決めた。
100mのターンで1人目の脱落者が出てきた。ターンあとの浮き上がりは逆だったので、ターンで抜き返されたかもしれないが、恐らく大丈夫だろう。
ここから50mは見えない。感覚で少し上げた。実際、この50mが1番キツい。誰も見えない上に、最後のバフがかからないから。少しずつ疲れてきて、水が上手く掴めなくなってくる。指の間から水が逃げていく感じがして、少し足の力を強くした。
ラストのターン。浮き上がって奥の方を見れば、ほぼ横並びのやつが1人。少し楽しくなってきた。勝負ってこんなに楽しかったか?今は藍に負けるとかどうでもいい。今はこの勝負の方が楽しい。
お互いに揺さぶり合いながら、そのままゴールした。先にタッチしたのは俺だった。
「っし」
競ったら勝つ。Distanceとしての俺の意地の勝利だった。
「負けませんよ。」
「藍、俺が負けるかもしれんって思ってるからちょっと傷つくわ。」
藍は最近になって力をメキメキと伸ばしてきている。ちょっと前まではハイアベレージをしたときにへばってたのに、最近は俺より早いタイムで泳いでも、ケロッとした顔をしている。
「そんなこと言って~」
俺が言っていることを冗談だと思っているのか、笑いながら俺の脇腹をつつく藍だけど、決して冗談を言っている訳ではない。本当にその可能性があるからだ。
召集所前でそんな話をしていたら、コールがかかった。
「んじゃ行くか。」
「はい!」
俺たちは気を引き締めて中に入っていった。
俺たちの前に4組あったのに、その時間は一瞬だった。気づけばもう1レーンのスタート台の前に立っていて、いつものルーティーンをしていた。
(調子はそこそこやけど、それは持久系の部分の話。スピードは嘘だと信じたいほど出ない。最初の50mは今の全力で、そこからは体力と相談だな。)
―ピッピッピッピッ…ピー…
「Take your marks…」
―ピッ
リアクションは珍しくいい方だ。浮き上がりも悪くない。そこまでは横とほぼ変わらなかったはずなのに、少しずつ離されていくのが分かる。
(マジかよ…)
そして、50mのターン。浮き上がってから横を見ると、体1個分の差があった。なら、落ちるまで待とうじゃないか。
俺はギアはそのままに、落ちてくる奴らを狩ることを決めた。
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ここから50mは見えない。感覚で少し上げた。実際、この50mが1番キツい。誰も見えない上に、最後のバフがかからないから。少しずつ疲れてきて、水が上手く掴めなくなってくる。指の間から水が逃げていく感じがして、少し足の力を強くした。
ラストのターン。浮き上がって奥の方を見れば、ほぼ横並びのやつが1人。少し楽しくなってきた。勝負ってこんなに楽しかったか?今は藍に負けるとかどうでもいい。今はこの勝負の方が楽しい。
お互いに揺さぶり合いながら、そのままゴールした。先にタッチしたのは俺だった。
「っし」
競ったら勝つ。Distanceとしての俺の意地の勝利だった。
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