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キザムノ

お家デート②

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「そうそう、その端っこに突っ込んで。」
「こう?」
「で、クルって回す。クルって。」
「こう?」
「なんでそんなぐちゃぐちゃなんねん!」
「そんなん俺も分からんわ。」

決していかがわしいことをしている訳ではない。神に誓って言おう。まだ手は出さない。

 事の発端は30分前。昼前になったのでお互いにお腹が空いてきた。なので、昼飯にしようということになり、絵空が前もって作る準備をしてくれていたたこ焼きを食べることに。

 ここで問題が起こる。俺は料理センスが皆無だ。トマトを切りすぎてトマトジュースにしたこともあれば、卵も割ることができない。遠征で卵を割らないといけなかった時は、奏に割ってもらった。つまり、未だに卵を割ったことがない。

 そんな奴が、たこ焼きを回すという高難度ミッションをクリア出来るはずがあろうか。んなわけないよね。

 ということで、今は絵空にたこ焼きの回し方を教えて貰っている。

「だから、串でつついたらちょっとカリッてしてるとこあるやろ。それと鉄板の間に串を入れるんよ。」
「ん?これかな?」
「おっ、見つけた?じゃあそれと鉄板の間に串入れて。」

カリッてしてるところのちょい外側。ダメだ。分からん。でも、ここかな?

 回してみたら、たこ焼きの中に入り込んでいって、ぐちゃっとなる。

「あぁあ。もっと鉄板に這わす感じで回すんよ。」
「そんなん、浮くやろ。」
「普通の人は出来んのよ。」
「俺、普通ちゃうから。」
「知ってる。」

絵空は呆れた顔をするが、決して諦めない。今だって、どうやったらできるようになるか考えている。

「よし、じゃあ何回ミスっても私と拓也が食べるだけやから、今日で回せるようにしよう!」
「ありがとな。」

気づけばほとんど焼けていて、食べ頃になっていた。

「「いただきます!」」

ソースとマヨネーズをかけて口に運ぶ。

「美味っ!」
「はふっ(あつっ)!」

俺が美味しさを噛み締めていると、絵空は熱かったらしく、はふはふしている。

「水いる?」
「はひはほぉー(ありがとー)!」

ちびちびと水を飲むその姿は子供っぽくて、思わず微笑んでしまった。すると絵空はジト目で俺のことを見て、

「あっ、今『猫舌なんや~!子供っぽい!』とか思ってたやろ?」
「いや、そんなこと思ってへんよー」
「語尾が変な感じ、『子供っぽい』とは思ってたんや。」
「ナンノコトカナー?」
「図星っぽいね。」

冷や汗をダラダラと流しながら笑う俺を見て、絵空は不敵に微笑む。

 怖ぇ~。
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