陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

キザムノ

課題多すぎ問題①

「ぐへぇ…」
「ぷはぁ…」
「ぬわぁ…」
「うわぁ…」
「…………」

テーブルに倒れる。みんな頭から湯気が出そうだ。

　こんなことになる約4時間前。私のスマホが震えた。音羽からだ。

『今日、そっち行っていい？エアコン壊れた。』
「いいよ。てか、エアコン直るまで泊まってくれても。」
『それはちゃーんと手配済みやから。じゃあ、カレンと今から行くわ。40分後ぐらいに着くと思う。』
「りょーかい。」

私は進めていた古文の課題を止めて、隣の久志の部屋へ。コンコンとノックしたらすぐに「どした？」と聞こえてきた。

「今から音羽と新宮くん来るんやけど、どーする？下降りる？」
「悪いが今回はパスで。今数学で頭死にそうやから。」
「ならしょうがないな。」

　そして40分後。ピンポーンとインターホンが鳴る。

「はいはい！開けるねぇ！」

ガチャっとドアを開けたところにいたのは、2人ではなく3人だった。

「なぜきいがいる？」
「そこで音羽と会ったから、『どしたん？』って聞いたら、ひい君家で勉強するってから来た。」
「まあ、外で話するのもなんやし、入って。」

そう言って、3人を招き入れる。計4人だからリビングの机で十分だろう。

「ところで、ひい君の姿が見えませんが…」
「久志なら自分の部屋で数学やってるよ。」
「そう。」

きいは、そう言って、すぐに見ればもうその姿はなかった。

「ひい君！教えて！」
「ちょっ、おい！なんで、きいが居んだよ！俺は絶賛暗号解読中だ！離せ！」
「やだ！」

2階の久志の部屋が騒がしい。なんとなく絵が想像できて、フフッと笑う。

「じゃあ、2人は始めようか。」
「よくこの状況をするーできるな。」
「ホンマそれ。」

　結局、きいに引きずられて久志も降りてきた。ちゃぶ台を持って。少し離れたところでなんかブツブツ唱えながらやってるあたり、本当にヤバいんだろう。今はそっとしておこう。

「ひい…」
「どしたの？きい？」
「えっと、ここが分かんなくて。」

見せてきたのは数学の問題。少なくとも私たちがいつも解いている問題よりは簡単なやつだ。でも、理系科目だから、文IIの私よりも理系の久志に聞こうとしたんだろう。音羽はさっきから新宮くんにつきっきりやし。

「とりあえず、今の久志に聞くのはやめとこうか。なんかいい感じに集中してるみたいやから。」
「うん、そうやね。無理して連れてきたんやから、自分の好きなことさしてあげよ。」

パッと見てやり方が分かったので、とりあえず教えていく。久志の方が効率的なやり方を知っているんだろうけど、私の所謂『正統法』ってやつを使って。

「ありがと、これで何問かは進みそう。」
「またなんかあったら聞いて。私、久志と違って集中してないから。」
「何それ。」

お互いに顔を見合って、そして笑った。