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イツモノ

俺たちは中央大会②

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 いつも通り別々にアップをして、スタンドに戻るとすぐに競技が始まった。

「行け行け!行け行け~行け~行け行け行け!みのり!」

1つ目の競技である4×100mフリーリレー予選から会場のテンションはMAXだ。

「オォォォウレイ!川端瑞希!」
「お前がやらずに誰がやる!」
「行け行け!行け行け!」
「行け行け~行け~行け行け行け!みずき!」

誰も自分の出る競技のことなんか気にしていない。ただただ、目の前でレースをしているチームメイトを応援するだけ。

 男女のリレーの予選が終わる頃には、もう酸欠だった。

「お前、1500やで。」
「知らん、そんなん。応援賞は俺のもんや!」

うちのチームには応援を1番頑張った人に『応援賞』がある。これは江住先生の独断と偏見で決められるものだ。だからこそ、

「全部全力で、やろ?」
「たしかに。」

 自分が弱いのは知っている。いい順位なんか取れた試しがないし、大阪レベルならせいぜい予選敗退くらいのレベルだ。だからこそ、ちゃんと順位の取れる人に、俺は全てを注ぎ込みたい。

「奏、飴いる?」
「ありがとう、楓。」

楓から『舐めたらあかん』のCMでおなじみの飴を貰う。俺の出番まではあと3時間半だ。

 試合のときの3時間半なんかあっという間だ。気づけばもう召集所にいた。

「体の調子はどや?」
「俺は別になんとも。ピー也は?」
「俺は調子いいで。残念ながら。」

 ピー也は試合に強い。いや、練習が弱すぎるだけか。江住先生はそんなピー也に勝てって言ってくるけど、俺はこいつ以上に勝てない相手を知らない。太地先輩は諦めがつくが、こいつはなんか勝てないって感じだ。

 でもそんなのも今回で終わり。この大会は1500も400もピー也と隣というこの状況を楽しむ。それで、勝てたらラッキー。それだけだ。

「3組目、コース入って。」

係の先生に従って4レーンの飛び込み台の前に立つ。左隣にはピー也。お互いに集中しているが目が合った。俺が微笑むとピー也も微笑む。そして、俺は左拳を突き出した。

「(ニカッ)」

ピー也が笑って拳を合わせる。さぁ、ラスト前だ。
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