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イツモノ

水と疲れと①

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 水の感覚がなくなってくる。今が何本目かも分からない。ただ、上手く水が押せない。それだけだ。

「楓!何本目?」
「えっと、16本目。あと10本。」
「マジかよ。」

楓とそれだけ交わしてまた泳ぎ始める。いや、それくらいしか話せないの方が合っているだろう。

 今日のメインは100m×25で短いサークルで同じタイム、同じストローク数で合わせる練習。休憩なんかなくて、横でダッシュして止まってって練習をしているみんながムカついてきた。

 横のレーンでダッシュされるとストローク数が狂ってしまうし、なんせ体力が奪われる。こっちにしちゃ、ほぼ凪いだところの方が泳ぎやすいのに、練習環境はそれとはかけ離れている。ピー也曰く、「波は自分で作ればいい」らしいが、そんなことしたら、疲れて死ぬ。

(あっ、来るな。)

遠くで声が聞こえてきたので、恐らく横のレーンも出発したんだろう。そうなれば、こっちは準備しなくてはならない。できる限り離れて、そんでもって水に乗るフォームに切り替える。

(はい来たー。)

まるで水の山のような波が押し寄せてきて、そして、少し流される。これだけでストローク数1回分くらいのロスだ。

(ほんと先生考えてくれよな。)

そう心の中で呟いた。

 少し泳げば、

「あと5本!」

って楓がコールしてくれる。だんだんターンの度に腹筋が痛くなってきたし、ストローク数も増えてきた。色々使う筋肉を変えながら泳いでも、筋肉がもたない。体力はまだまだ残っているのに。

 隣のレーンはもうダウンを始めている。その中で泳ぐなんて、あ~メンタルがやられそうだ。

(潰れんなよ、俺の肩。)

そう自分の筋肉にエールを送る。横ですれ違うピー也を見てる感じ、ピー也の方が疲れていそうだ。終わったら文句の嵐だな。それに耐えれるだけのメンタルは、残ってるか。

(あと、400しかない)

400mと聞いたら長いなと思うが、25分の4と聞けばいけるんちゃうと思っているそこの皆様。その答えはNOです。俺たちが泳ぎすぎて、「しかない」って言っちゃってるだけで、長いのは長いです。

 そして、ラスト1本。shortの奴らはもうプールから上がってやがる。良かったね。俺たちが疲れすぎてなんも言えんときで。

 そして、ターンを3回回れば、今日の練習が終わった。
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