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イツモノ

俺たちは1学期中間Ⅱ③

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「悲惨だな、こりゃあ。」

自分で作った得点表を見てそう呟く。結果は平均-19点。マイナス教科はほとんどが理系教科だ。

「理系の表とは思えへんね。国語と地理が平均以上で私以上。他はだいたい私よりだいぶ下って感じか。その国語の脳みそ分けて欲しいねんけど。」
「そこが問題なんやけど…って、いたからおったん?船戸さん。」
「ん?『悲惨だな』から。」
「最初も最初やん。」

全く気づかんかった。そんなに集中してたのか。

「そういう船戸さんは?」
「国語は捨ててたから欠点やけど、他は平均以上。」
「欠ったら俺より下やからな。」
「理系教科取れてない人に言われてもなぁ。」

なんか、船戸さんの目が笑ってるんだが。負けた気がしてたまらない。

 テスト返しの時から薄々気づいていたが、今年の理系は平均的に頭がいいっぽい。しかも、素質的な頭の良さ。俺みたいな付け焼き刃の頭の良さでは太刀打ち出来ないくらい、勉強に求められて生まれてきたみたいな奴らがうじゃうじゃいる。

 それでも、もちろん全欠している奴はいて、ひとつの安心材料になっているが、そこと比べていられない。せめて上位、20位から10位くらいでキープしとかないと受験なんか受かるわけないから。

「何確認してるん?」
「有り金。ちょっと行きたいとこあるからな。」
「ふぅーん。そこって本安くて、ポイントつくとこやろ。」
「しかも、まあまあ最近できたとこ。」

船戸さんは俺の目を見て、そしてこう言う。

「前までみたいなギラギラが戻ってる。」
「ギラギラ?」
「そう。去年にあったギラギラ。去年は多少なりとも競争相手がおったからかな?でも、今年はいないからモチベがなかった。ちゃう?」
「確かにそうかも。」
「やけど、今回の結果で競争相手が決まったとか。例えば理想の自分とか。ちゃう?」
「そこまで深読みされると怖いんやけど。」

言われてみると、そんな気がしてきた。理想を超えていかないとって焦ってる感じ…

「なんか前みたいやな。」
「去年みたいやろ?」
「んーん。それよりずっと前。」

俺の瞼の裏に浮かぶのは、空回りしていた記憶。今回はそうならないようにしないとな。

「2人とも~!5欠!イェーイ!」

そう叫びながら戸津井さんが走ってくる。俺は船戸さんと目を合わせた。

 さて、このアホをどうしようか。
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