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ムカシハ

最強の闘い③

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 試合も後半に差し掛かった。

「ソフトバレーボール投入!」

そのアナウンスと同時に審判からソフトバレーボールが投げ込まれる。それはこっち側のコートに入って、すぐに私の手元に回ってきた。

「もう?」
「一発目、しっかり決めちゃえ!」

ポンとくるみに背中を押されて、前に出る。また何かするんじゃないかって感じの眼だ。

 私は人の視線が苦手だ。だから出来れば目立つことはしたくないし、誰かの前に出るなんて言語道断。常に陰に隠れて、誰の邪魔にもならないようにする。そんなのが私だった。

 それを変えてくれたのが、由良君たち。文化祭の時に、私を接客の方に回してくれた。由良君が勧めてくれたらしい。それからだ。人の視線があまり怖くなくなったのは。勿論、怖い時もある。でも大分減った方。そんな私にしてくれたのが由良君たちだ。

 前に1歩踏み出す。

 これは私なりの恩返しだ。いつかは知らない人ともちゃんと話して、ちゃんと笑顔で、そういられるように。

 ボールを握る。

 いつかは人の視線なんか全く怖くないって言えるように。

 振りかぶる。

 LoveとかLikeとかそんなんじゃないけど、

 大好きな由良君のために。

 投げたボールは橋本さんとは全く違う軌道を描く。ほぼ水平に飛んでいき、少し左に曲がったあと、大きく左へ。

 私の狙いは元からただ1人だ。

 ボールは海南さんの左頬を掠め、さらに奥へ。

「バーン!」

教室の隅でぼーっとしていた私に1番最初に話しかけてくれた、私が変わる本当のきっかけをくれた、大切な、大切な、大切な親友。

 私の狙いは、琴奈ただ1人だ。

 目の前にいきなりボールが来た琴奈は、さすがにびっくりしている。私くらいしか狙わないもんね。

 そして、琴奈の腕に当たって、地面に落ちる。

「エーイ!」

それくらいの歓声。この一球に込めた思いには誰も気づかない。ピーッとホイッスルが鳴って、得点が追加される。

「私は琴奈にも見ておいて欲しいんだから。」

そう呟いて、くるみとハイタッチする。

〇〇〇〇〇

「んで、2人差か。」
「ごめん、奏。」
「いや、Qの息がかかった船戸さんがいるのに、これで抑えられたのはいいんちゃうか?」

男女の入れ替わりの時に、奏と話す。あんなこと言ったのに、リードできていないなんて、ちょっと悔しい。

「まぁ、あとは俺たちに任せとけ。」
「ん。任せた。」
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