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ムカシハ

俺たちは球技大会Ⅱ②

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 一瞬、空気が止まったように音が消える。そして歓声が起こった。

「「「「ウォォォァァァ!!」」」」

宣言通り当てる。これ以上に気持ちいいものはない。

(覚えとけよ。)
(今は吠えるだけ吠えとけ。)

奏と目で会話して、そしてボールに目を戻す。さっきので外に跳ねたのか、ボールはうちのクラスが持っていた。

 うちのクラスの全員に回転は教えた。どうかけるのかも、どんな動きをするのかも。雑魚が強者に勝つためには抗うほか何もない。外野のやつが投げたボールはまた動いてホイッスルが鳴った。

「おいおい、全員動くんかよ。こんなん対応できんぞ。」

ちらほらと聞こえてくる声。残念だがその通りだ。しかも、普通にまっすぐ投げれるやつもいる。自分で言うのもなんだが、俺たちは今大会のダークホースだ。

 また外野に回ったボールは何回か上を通して、俺のところに回ってきた。次に投げて、相手が諦めるボールといえば、まっすぐ。手首を捻って少しでも変化してもいけない。ただまっすぐなボール。

 放ったボールはまっすぐ相手の足元へ。変化すると踏んで避けずに待っていたから、当たった。

「まっすぐもあんのか?もう分からんようになんぞ。」
「こいつら、そこまでボールも速くないのに。」

そうだろ。これが雑魚なりの抗い方だ。

 そのあともどんどん当てていき、C組は残り10人ほどになった。

〇〇〇〇〇

 Qが楽しそうだ。I組はほぼ当てられてないのに、うちのクラスのやつが当てられていく。変化は毎回違くて、その大きさまでコントロールしている。まさに、鬼だ。

 それでも、俺は負けられない。せっかくの女子のリードを無駄にできない。久しぶりに俺にボールが回ってきた。狙うのは、そう、Qだ。

〇〇〇〇〇

 奏にボールが回った瞬間、自分が狙われてることが分かった。面白いじゃねぇか。

「来ぉォォォい!」

奏も笑っている。俺も笑っている。さぁ、奏。再戦だ。

〇〇〇〇〇

 俺にはQみたいな芸当は出来ない。ただ速くまっすぐ、腹に届け。

〇〇〇〇〇

 まっすぐ、力勝負か。楽しいな。そんな勝負いつぶりだろう。小学校の頃は曲げてたからな。

 構えて、ボールが来たら止める。何回もやった動作。

 腹に衝撃が走る。その瞬間ホイッスルが鳴った。
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