上 下
211 / 725
ムカシハ

俺の水泳日記⑤

しおりを挟む
 次の日の朝には熱がほぼ下がっていた。玄関まで歩く元気もあるから、ドアを開けて楓と話すことにした。

「おはよ、奏。どんな感じ?」
「7℃台やけど、汗はかいた気せん。」
「マジかぁ。明日からの大会もパスっぽいな。」
「せやな。今から練習か?」
「うん。奏、心配やけど、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」

楓の後ろ姿が見えなくなるまで手を振る。

 さてと、暇になった。文Iを選んだからそこまで課題もない。どうしようか。ゲームするのもなんだしな。ちょっと練習組に失礼だと思う。

「録画リストでも消費するか…」

俺はテレビをつけた。

〇〇〇〇〇

「楓ちゃん!奏は大丈夫か?」
「稲原先輩、熱も落ち着いたし大丈夫ですよ。明日からの大会はパスって言ってましたけど。」
「そうかぁ~。ならよかった。けど、モーニングコーヒーがないのは痛いな。」

練習前。私は質問攻めに遭っていた。「調子どう?」だの、「熱下がった?」だの。でも、みんなが心配してくれてるのは嬉しかった。

〇〇〇〇〇

「ただいま~。調子どう?」
「めっちゃ元気。朝から録画リスト消化してた。」
「ならよかった。ちょっと運動してみる?」
「軽いのやってみるわ。」

まずはストレッチして、体幹系を重点的に鍛えていく。プランクしたり、腹筋したりもした。だが、汗が一向に出ない。

「うっわ、サラサラ。」
「汗かいてないからな。」
「キツい?」
「そりゃキツいぞ。でも、汗が出ない。」
「マジかー。」

「マジかー」は俺もだ。今まで汗だくでやってた体幹も、今は汗ひとつかかず、ただ熱がこもるだけの運動。腹筋も、腹筋はピリピリするのに、身体が熱くなってばっかで、汗が出てこない。

 それよりも不思議なことがある。汗っかきやった俺が、汗をかかなくなったこと。冬でも汗をかいて、頭から湯気がたつのが俺だ。いつも動いたら汗をかいていて、ボットボトになって授業を受ける。それが俺だった。そんな俺が汗をかかなくなるなんて信じられない。絶対何か理由があるはずだ。絶対に。

「これで私も安心して和歌山行けるけど、帰ってきたら江住先生と相談やね。」
「そうやな。その方がいいよな。」
「うん。そうせぇへんと地区に引っかかってくるから。今年は田辺さんに勝つんやろ?」
「もちろん。コテンパのけちょんけちょんにしてやる。」
「期待してる。じゃあ、私は明日の用意あるから。」

楓は立ち上がると俺に抱きついた。

「何?」
「補給中。」
「なんだそれ。」

こうして、俺のGWは幕を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

ハーレムに憧れてたけど僕が欲しいのはヤンデレハーレムじゃない!

いーじーしっくす
青春
 赤坂拓真は漫画やアニメのハーレムという不健全なことに憧れる健全な普通の男子高校生。  しかし、ある日突然目の前に現れたクラスメイトから相談を受けた瞬間から、拓真の学園生活は予想もできない騒動に巻き込まれることになる。  その相談の理由は、【彼氏を女帝にNTRされたからその復讐を手伝って欲しい】とのこと。断ろうとしても断りきれない拓真は渋々手伝うことになったが、実はその女帝〘渡瀬彩音〙は拓真の想い人であった。そして拓真は「そんな訳が無い!」と手伝うふりをしながら彩音の潔白を証明しようとするが……。  証明しようとすればするほど増えていくNTR被害者の女の子達。  そしてなぜかその子達に付きまとわれる拓真の学園生活。 深まる彼女達の共通の【彼氏】の謎。  拓真の想いは届くのか? それとも……。 「ねぇ、拓真。好きって言って?」 「嫌だよ」 「お墓っていくらかしら?」 「なんで!?」  純粋で不純なほっこりラブコメ! ここに開幕!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

普通の男子高校生である俺の日常は、どうやら美少女が絶対につきものらしいです。~どうやら現実は思ったよりも俺に優しいようでした~

サチ
青春
普通の男子高校生だと自称する高校2年生の鏡坂刻。彼はある日ふとした出会いをきっかけにPhotoClubなる部活に入部することになる。そこには学校一の美女や幼馴染達がいて、それまでの学校生活とは一転した生活に変わっていく。 これは普通の高校生が送る、日常ラブコメディである。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

全体的にどうしようもない高校生日記

天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。  ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...