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ムカシハ

俺の水泳日記③

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「大丈夫?」
「大丈夫すぎて困る。」
「相変わらず熱に強いね。」
「まあな。」

家に帰ってきてから、ずっと楓に看病してもらっている。看病とは言えないほど、風邪っぽい症状ではないんだが。

「うわっ!9度2分!それでよく普通な顔してられんね。」
「そんなあんの?そんな感じしねえんやけど。」
「ホンマな!目もしっかりしてるし、足も、お腹はちょっと熱いか。おでこは?」

楓は顔を近づけて、おでこを合わせてきた。

「おい、ちょっ!」
「ん?どしたの?風邪っぽくないんやろ?」
「やけど…」
「ならええやん。おでこはあんまか?首は冷やしとこか?」
「お、おう。助かる。」
「ちょっと待っててね。」

 先週も熱が出ていた。前回はそのまま5日間休んで復活したけど、今回はそれよりも短くて済みそうだ。なら、大会も…

「おまたせ。今、どうやったら大会行けるかって考えてたやろ。やめときなよ。また熱出したら、次は地区に引っかかるから。」
「でも…」
「でもちゃう!私学はさすがにパスせぇへんと!せやないと、このまんま倒れまくらなあかんかもしれへんで。」
「それくらい分かってる。でも、泳がないと、勝てないから。」
「まだ拓也さんに勝とうとしてんのか。大丈夫やって。いっつも上から見てる私が保証する。」

練習では勝ちっぱなしだ。でも、試合になるといっつも負ける。先生からはメンタルが弱いとか、そう言われてるけど、何となくそれだけじゃ足りない気がする。

「それでも、できることは全部したいから。」

しばらくの沈黙。3分、いや、5分あったかもしれない。

「分かった。ここ最近で変わったこと言ってみて。」
「楓?」
「奏がその気なら、私も協力する。だって私はマネージャーやから。選手のサポートをするのがマネージャーやろ?それに、ちょっとだけ頑張ってほしいって思ったから。」
「最後のが本心やろ。」
「っさいな!はよ言え!」
「はいはい。

 最初に異変を感じたのは先月末。練習中に急に息が上がるようになって、それからタイムが止まり始めた。そのときはいつもより体温高いかな?とは思っていたが、タイムも出ているから、そのせいかなって思っていた。

 先週、熱が出ていた時だ。珍しく熱が高いのに汗があまり出なかった。でも、温かいものを食べたら汗が出たので別にいいかなって思った。

 先週末の大会。1レース目は何ともなかった。だけど、2レース目。いつもならさらに調子が上がるはずなのに、身体が動かなかった。なぜかは分からない。

 そしてこのGW。午前練は特に何ともなかった。だけど、妙に身体がだるかった。アップのときの飛び込んでの練習の時、少しフラついた。寝起きだからだと思っていた。キックのとき、そこまで頑張っていないのに体温が上がっていた。頭をつけると異常なくらい水が冷たく感じた。そしてサブメインで、身体が限界を迎えた。

って感じかな?」
「ふーん。じゃあ、汗をかきにくくなったでいいんかな?」
「たぶん。」
「ちょっと調べてみるわ。」
「よろしく。」

俺は1度眠りについた。
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