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ムカシハ

俺の体調不良①

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 コチコチと時計が進む音がする。時間は11時過ぎ。

「はぁ~、だりぃ。」

脇に挟んだ体温計がピピッと鳴る。39.4℃だった。

「全くそんな感じしねぇんだけどな。」

 体調不良を感じ出したのは2時間目の終わり際。少しずつ寒くなってきて、少し熱があると感じた。

 今日は朝練だった。いつものように外で体操をして水に入る。アップこそ何ともなかったが、メインに入ってから少しずつ呼吸がしにくくなってきた。長距離練ならほぼ毎日感じることなので、今までの疲れが残ってると思い、そのまま泳ぎきった。

 教室に戻ったら、クーラーがついていた。流石に寒かった。1時間目は寝れる授業だったので、爆睡ちゃんをかましてやった。そして2時間目。誰かがクーラーを消してくれたはずなのに、まだ寒かった。次第に頭が痛くなってきて、唇が乾燥してきた。その時、俺は熱があると感じた。

 その休み時間に保健室に行くと、38.0℃あった。俺はそのまま早退して、家に帰ってきた。家には誰もいない。いつもならおばさんに頼るが、生憎おばさんも今日は仕事だ。俺は諦めてベッドに横になった。



「―きて。起きて。起きて、奏。」
「んあ?」
「大丈夫?生きてる?」
「うわぁ!」

目の前にいたのは楓だった。

「お前、クラブは?」
「テキトーに理由つけて帰ってきた。お昼ご飯は?食べてないよね。じゃあせめて水くらいは?飲んでなさげか。」
「楓、今何時だ?」
「えっ?いや、7時やけど。」
「嘘ん。」

俺はあれから8時間も寝ていたのか。随分疲れが溜まっていたんだな。

「とりあえず、なんか作ってくるから。待ってて。」
「お、おう。」

 15分経って、楓が戻ってきた。

「まったく、お粥が苦手な人ってこの世にいるんやね。」
「悪ぃな。だいぶ前に吐いた記憶があるんだよ。」

楓が持つ土鍋の中にはたっぷりの雑炊が入っていた。

 俺はお粥が食べれない。何が嫌いとかじゃなくて、体がお粥を受け付けていないみたいな感じだ。口の中に入った瞬間に吐きそうになる。だから昔からできる限り雑炊にしてもらっていた。

「鍵は、奏のお母さんにもしもの時用って貰って、その時にお粥が食べられないのも言ってたから。」
「いつの間にそんなことが…」
「付き合う前。」
「相変わらず勘が良くてムカつく親だな。」

なんか嬉しいこの気持ちは何だろう。
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