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ウソツキ

イチマイ

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「お前ら、忘れ物はないな?」
「ちゃんと見たよ~。」
「じゃあ行くぞ。」

管理棟のおばちゃんに軽く挨拶してから歩き始める。来た道と同じ道。それでも全く違う表情をしている。

「この景色はいつ見ても壮観やわ。」
「確かに、この角度とか。」

奏っちは車がいないことをいいことに、道の真ん中に立つ。そしてカシャリ。

「奏ってこういう時はセンスあるよね。あとでグループで送って。」
「もちろん。」

奏っちが歩道に戻ってくる。楓に預けていた荷物を取って、また歩き始める。

 途中、さっきの私たちと同じように車道の真ん中で写真を撮っている親子に出会った。どうやら、自撮りしようとしているようだ。前のみんなはそんなことも気にせず喋っている。私の出番か。

「あの~、写真撮りましょうか?」
「あっ、お願いします。」

少しは笑顔を作れていただろうか。私はスマホを受け取って、一度横持ちでピントを合わせてみた。何かが違うような気がして、縦持ちに変える。こっちだ。

「じゃあいきまーす!はいチーズ!」

―カシャッ

「ありがとうございます。あの、もし良かったら、撮りましょうか?」

父親は、後ろで待っているみんなを指さす。私は目で「どうする?」と訊く。私的にはどっちでもいい。

「撮ろ!」
「だね。」
「そういや、今日撮ってねぇもんな。」
「まったく、しょうがないな。」
「……」

みんな荷物を置いてぞろぞろ歩いてくる。

「ポーズどうする?」
「Q、ギャルピやってみて。」
「うわっ、似合わねぇ!」
「どうする?」
「そのまんま『KYUKA』とかでどう?」
「きい入れなくなるし。」
「ん~、きいはテキトーにやれ!」
「え~!」

―カシャッ

『えっ?』
「すみません、でもめっちゃ楽しそうだったんで。」

私たちはスマホを受け取って、さっきの写真を見る。そこにはみんな楽しそうに笑っている瞬間が入っていた。

「いいな。」
「うん、これが私たちって感じするし。」
「せやな。」
「音羽、後で送ってね。」
「うん。」

私はスマホをポケットにしまって撮ってくれた親子の方を見る。

『ありがとうございます!』
「いえいえ、こちらこそ撮ってもらったんで。じゃあ、お気をつけて。」

私たちは別れて、駅までの道を歩く。

―ブルル

ポケットの中の私のスマホが震える。私はすぐにRINEをつけた。

Karen 『コリーダコロシアム!』
     『写真』

カレンはコロッセオの写真を送ってきた。向こうの友達と一緒に写っている。楽しそうなのにどこか寂しそうに見えた。

 私はさっき撮った写真を送って「次はこっちにも入ってね」と送る。

「音羽、ニヤついてるけど、いい事あった?」
「へっ?そんなことないけど、どしたの?桜。」
「ん~?ならいいけど。」

頬が熱くなってるのはきっと今日が暑いからだ。
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