陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ウソツキ

キャンフ

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 俺たちはマキノ駅で降りて、山の中へと歩いていく。

「おお、これが有名なメタセコイヤ並木か。でっか。」
「きいの語彙力では『でっか』しか出ねぇんやな。」
「じゃあひい君やったら?」
「でっか!」

ここら辺には小学校の林間学校で来たことがあるから、何となくどの方向に進んでいけばキャンプ場があるのか分かる。小学校の頃に泊まった民泊を横目に、脇道に入っていく。

 冬場にはここはスキー場として使われるので、その時用のリフト乗り場が右手に見えてきた。もうすぐキャンプ場に着きそうだ。

 温泉施設が見えてきた。その少し手前に小屋があって、そこが管理事務所。予約していた旨を伝えて、料金を払ってから薪を買って高原サイトへ。ここは林間学校のときに使ったところで、少し傾斜があるが、場所によっては気にしないでいいくらい。平日の今日はほぼ貸切状態で、青空を思う存分堪能出来る。

「じゃあ、テント張って昼飯にするか。」
「テントここら辺にする?」
「だな。たぶん残ってるところで傾斜少ないんここだけやろ。」
「見た感じな。」

今日は電車で来たのもあって、ソロテントを真ん中に向かって設営する。傍から見たら、芸人たちのキャンプ会みたいに見えるだろう。タープとテーブルはさすがに持って来れなかったのでレンタルして、それも設営する。

「ひとまずこんなもんかな?」
「要塞が完成やな。」
「音羽、それは言い方が悪すぎるわ。」

俺はシングルバーナーで湯を沸かす。作るのはカップ麺。ヲタ活をしたいならここでカレー麺を食べるのだが、あいにく今日はいい天気。そんなの食べてたら暑くて死にそうになる。

「奏と海南さんが普通ので他がシーフードよな。」
「そそ。へぇ、これってそんな使い方するんだ。」
「桜はシングルバーナー使うの初めてか?」
「いつもコンロばっかだったから。」

そんな画期的な発明じゃないような気がするが、桜は目をキラキラさせている。

「あの~桜さん、お湯沸かしてるだけやのにめっちゃ緊張するんですが。」
「ごめん、もうちょっと見させて。」
「………」

家よりも自由に過ごしてね?リラックスしてくれるのはいいけど。

 沸いたのでお湯を注いで、備え付けのテープで留める。

「奏、よろしく。」
「任せとけ。」

実は今日は全員腕時計を忘れた。スマホのタイマーを使えばいいのだが、この日差しの中では見にくい。俺たちの麺の硬さの好みはバラバラで、徹底した時間管理が必要になるので、まあまあ非常事態だ。そのことを奏に言ったら「いい曲がある」とのこと。ここは奏に任せることにした。

 奏のスマホから流れてきたのは俺も何回か聞いたことのあるメロディー。この曲は…

「これ聞いたことあるわ。確か事変の『能動的三分間』やったっけ?」
「おぉ音羽正解!」
「っし!」

珍しく熊野さんが感情を露わにする。なんだかんだいつも冷静沈着な熊野さんの喜んでいるの見るの初めてかも。

 3分ピッタリで曲が終わる。きいはまだ15秒数えているし、桜と熊野さんに至ってはもう食べ始めている。目安の時間で引き上げたほか3人で小さく『いただきます』と言って食べ始める。外効果もあってか15倍ほど美味しく感じた。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

今回は東京事変さんの『能動的三分間』の曲名だけお借りしました。断りもなくすみません。
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