上 下
165 / 724
ウソツキ

コイマチ

しおりを挟む
「なぁ、ピー也。最近顔色ええな。」
「そうか?ん~まぁいいか。お前やから言うけどな、俺、彼女出来てん。」
「ふぅーん。はぁ?」
「やから、彼女できてん。」
「はぁ!?」

〇〇〇〇〇

 時は遡って、テスト最終日の晩。俺と絵空こと南部絵空は電話をしていた。

『もぉーしもーし?』
「聞こえてるぞ。どした?」
『どっか遊びに行かん?』
「ええけど、日曜日スタバ行くやん。」
『でさ~、もったいないし映画でも行かんって。』
「ええけど、今なんかやってるか?」

最初はそんな会話だった。しかし、夜が老けていく度に内容が変わっていって…

『あの2人、めっちゃいいカップルやんな!』
「分かる。近づきすぎず、遠すぎない的な。」
『そうそう。』

全然関係ないところまで話が飛んでいた。

『田辺はさ、彼女とか欲しいんちゃうん?』
「願望はあるけど、なんせ素材が素材やしな。絵空は?」
『ん~、今はないかな?男友達ぐらいが丁度いいし。私、分かってるから言ってみなよ。田辺の好きな人。』

俺はそのとき軽くフリーズした。俺は絵空のことが好きだからだ。相手がそういう相手を持つことを考えていないのに、俺が告白してもいいものか。でも、これ以上の好機はない。いや、もう一生訪れないかもしれない。

『―おーい、聞こえてる?』

そんなことを考えていたら軽く30分ほど経っていた。絵空の声にも微かに怒りが混じっている。

「聞こえてる。驚くなよ。」
『分かってるから驚かないって。』

俺は1つ深呼吸をした。

「俺は、絵空のことが好きだ。」

今は振り向いてもらえないかもしれない。それでも、これは挑戦だ。望みはほぼない。勝率はほぼゼロ。我ながら無駄な勝負だと思う。それでも、いつかその足を動かせる。そんな宣言だ。

『えっと…ちょっと待ってて。』

彼女はミュートになった。

〇〇〇〇〇

『俺は、絵空のことが好きだ。』

イヤホンの奥から聞こえてくる声に私の思考は停止していた。えっ?田辺が、私の事…好き?どういうこと?ハルのこと好きなんじゃないの?

「もう、分かんない。」

さっきまで分かってるって言ってた人のセリフではないけど、もう分からない。だって、そういう素振り見せてなかったから。なんせ急だし。なのに、少し嬉しく思っている私がいる。

「この気持ちは?」

私はその答えを知っている。だけど認めたくない。だから、彼は私の傷を癒してくれるのかな?

 私はミュートを切った。

〇〇〇〇〇

 絵空のアイコンの横からミュートの記号が消えた。

『ねぇ、少しだけ昔話をしていい?』
「…………」
『私ね、中2の頃、田辺のこと好きだったんだ。だけどそのとき、仲良くしている男子と噂が立ったんだ。全然そんな関係じゃないのに。』
「……………」
『毎時間のように来る冷やかし隊のみんなの顔が怖かった。何回も否定してるのに、「嘘つくな」とか、「恥ずかしがんなって」とか。その声を聞くだけで苦痛だった。吐きそうになるくらい。』
「なら…」
『大丈夫。私が話したくて話してるから。それで、生活指導の先生に相談して事態は収束したけど。』
「………………」
『ねぇ、だから、その…』
「……………」
『誰にも言わないでね。親友以上恋人未満的なライトな関係で、付き合おう。』
「あぁ、誰にも言わない。約束する。」

そうして俺たちは『親友』という仮面を被ることになった。

〇〇〇〇〇

「―って感じ。」
「っんぷ」

俺は危うく電車を甘いゲロで汚すところだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました

星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位! ボカロカップ9位ありがとうございました! 高校2年生の太郎の青春が、突然加速する! 片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。 3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される! 「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、 ドキドキの学園生活。 果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか? 笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!

処理中です...