陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ワタシハ

期末⑤

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 今日の教科はまあまあ自信がある。数Aのときに公式を忘れたから、他の問題を解きながら公式を自分で作ったときはヒヤヒヤしたけど、とりあえずできた方だとは思う。あとは明日だけ、明日だけ…

「おーとは♪何辛気臭い顔してんの?」
「辛気臭いって…それより、楓、やけに上機嫌ね。」
「まぁ、『拝め奉らえ!』とはいないけど、『褒め奉らえ』くらいは思っておいていいかなって感じ。」
「あー、調子いいんやね。」
「そそ。」

なんか、楓と2人で話すのも久しぶりな気がする。いつもみんながいるしな。

 いつも通りの楓語もなんとなく自動翻訳できるようになってきたし、逆に自動翻訳ができないと面白くないような。やだ!絆されてる!

 私は、楓を閉ざしていた頃から知っている。あの頃は私と奏っちくらいしかしゃべり相手がいなかったっけ。それが今では私よりもみんなと喋れてる。保護者でもないけど、なんか感慨深い。

「音羽、感慨深い顔してどうしたん?」
「ん?いや、急にあの頃の楓の作文読みたくなっただけ。タイトルは確か『深呼吸』やっけ?」
「ウギャァァァァァアァァ!」
「なんてね、嘘嘘。」
「嘘つきは泥棒の始まりやで。」
「フフッ、私が読むわけないやん。冒頭が『深呼吸すると』から始まる、病み病み作文なんて。」
「ちょっと読んだし!ちょっと読んだしぃ!」
「はいはい。本当は人って成長するんやなって思って。」
「そうです!海南楓は成長するんです!」
「そうやな。」
「どこ見てんねん。殺すで。」
「ごめんごめん。」

ここ数年で楓は少し遠い存在になったと思う。それでも、ちょっと戻ってきてくれて、ずっとそこにいてくれる。『私の』って所有格をつけたくないくらいの私の親友。私の自慢の親友だ。

 それに比べて私はどうだろう。ちょっとは成長出来ているのかな?まだあの頃に囚われたままの気がする。そんな私が楓の隣にいてもいいのかなんて何百回も考えた。考えて、考えて、隣にいてくれようとする楓に応えようと思った。

 楓に微笑んでみる。楓は首を傾げたが、すぐににへらと笑った。あぁ、遠いな。

 楓は鞄を持って私に手を伸ばす。

「音羽、教室閉まっちゃうよ。帰ろ。」
「だね。帰ろ。」

私は楓と手を繋いで教室を出る。

「どしたん?」
「んーん。何にも♪」

楓はずっとニコニコしていた。
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