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ワタシハ

期末④

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 うちの学校では、3学期期末は日曜日を挟む。これがありがたいんだか、ありがたくないんだか。

 そして、杏の行っている中学校も、3学期期末は日曜日を挟む。これもありがたいんだか、ありがたくないんだか。

 故に、今、俺の隣にいるのは杏だ。

「バカ兄、ここ教えて。」
「別にいいけどよ、範囲違うからこっちの勉強もやりたいんだよな。」
「復習はやればやるほど伸びる。やんな?」
「やな。しょうがない。可愛い妹の頼みだ。」
「兄さん、キモイ。」
「うっ、、、」

ねぇ、この子、こういう時だけ兄さん呼びするのやめてくれないかしら。悪い気はしてないんやけど。

 杏の出す、絶対零度の吐息にぶつかる、俺の火の息。って厨二病発言は今は置いといて、

「それで、どこなんだ?」
「ここなんだけど…」

杏が見せてきたのは、数学の発展問題。数学が苦手な俺にとっちゃ、結構難しい問題だ。

「ええと、ちょっと待っとけ。」

久しぶりに頼られたのが嬉しかったからか、少し頑張ってみようとペンを持った。そんなことも束の間。

―ピポパピポパピポパパパパン…

俺のスマホが揺れる。表示されているのは奏だった。

『頼む!家庭教えてくれ!』
「あぁ、ちょっと後ならいいけどよ。」
『ん?何か用事か?』
「いや、実はな―」

奏に、杏が詰まっていることを相談する。すると、返ってきたのは意外な答えだった。

『テレビ電話にしてくれ。』
「お、おう。」

そう言われて、テレビ電話に変える。杏が見えるように向きを変えた。

『杏ちゃん、おっひさ~!』
「どうもです。加太さん。」

若干の温度差が心地よい。

『それで、どの問題だっけ。』
「これなんですが…」

杏はインカメからカメラに変えて、問題を映す。俺がスマホを持ってやることになった。

『それなら、同じようなやつ見たことあるわ。楓、ちょっと持ってて。』 
『いいけど、後でアイスね。』
『はいよ。』

向こうは向こうで仲良さそう。今日も、2人で勉強か。

『それで、解き方なんだが―』

 10分ほどかけて丁寧に説明する。だからといって先に答えを示さず、あくまで理解出来ているか確認しながら。はっきり言って、分かりやすすぎる。

『―てな感じなんだけど、理解出来た?』
「はい!バカ兄の100倍ほど分かりやすいです。」
「おい、杏!」
『ハハッ!それなら良かった。またなんかあったら訊いてくれ!Qを通してでもいいし、直接でも。』
「ありがとうございます!」
『ほなな!』

そう言って、奏は電話を切った。再び、沈黙が訪れる。その静寂を切り裂いたのは、杏だった。

「バカ兄って、春休みどうするの?」
「どうするも何も…」

分かってる。去年は完全に放浪してたからな。その間、杏には寂しい思いをさせたわけだし。

「今年は家におるわ。」
「なら、みんなで楽しめそうだね。」

その顔は、少し悲しそうだった。
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