陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ワタシハ

言葉③

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 はぁ、随分いい夢を見たな。

「奏、奏!」

3年間聞きなれた声。あぁもうすぐ、4年間か。

「奏、起きてるんでしょ?」
「そうと言ったら?」
「起きて!」

ゲシゲシと腰を蹴られる。コイツも元々水泳をしていたからな。なかなか強いんだわ。

「痛えって。おはよう、楓。」
「おはよう、奏。」

笑顔でそう言ってくる。この笑顔はおそらく「漫画貸して」か「暇やからどっか遊びに行かん?」だろうな。漫画はこの前貸したばっかりだから、答えはおそらく後者か。

「ちょっと待っとけ。準備してくる。」
「ブブ~!正解は、暇だけど寒いから家でゴロゴロしてたいでした!」
「やっばり変な答えじゃねぇか。」
「彼女のお願いを変ってどゆこと?」
「最近は2回に1回は当たるようになってきたけどよ、めっちゃ難しいぞこれ。なんなら楓もやってみるか?今俺が思ってることは?」

うーんと楓は少し考える。今俺が思ってることかー。どんなことして楽しませようかなとかかな。

「どんなことして楽しませよう?とか?」

えっ、コイツ、エスパーなの?なんでほぼ一言一句間違わずに答えんねん。

「それで、正解は?」
「正解。どんなことして楽しませようかな~って。」
「意外と簡単やん。」

ふふんと胸を叩いて自慢げな様子。楽しそうで何よりだ。あっ、そうだ。そろそろ起きないとな。楓との時間も無くなるし。

 体を起こしてリビングまで手を繋いで歩く。繋ぎ慣れたというのはおかしいが、幾度となく繋いだ手はいつまで経っても変わらない感触。いつも通り一緒に朝食を食べて、片付けする。時々手が当たったりするが、もうそんなことでオドオドすることはない。4年も一緒にいるからな。

「フフッ。奏って最初は朝、ベッドに忍び込んだ私にビクビクしてたのにね。」
「こんなことを慣れたくはなかったな。」
「そんなのいずれ一緒に寝るんだから言ってられへんで。」

楓は少し顔を赤らめながらニヒヒと笑う。俺の体温も少し高くなった気がする。

「そういや、朝来るのは久しぶりだな。」
「なんとなく来たくなってね。」
「なんとなく?」
「そう、なんとなく。」

〇〇〇〇〇

 夢で、昔いっぱい遊びに来てたのを思い出して、あの頃のようにやってみたけど、色々覚えた私には少しハードルが高かったかな。

 朝食の片付けを終えた私たちはテレビの前のソファに腰掛ける。奏が足を広げて座ったので、私がそこに座る形で。

 溜まっているアニメを見る。まあ、いつも通りの光景だ。オープニングが終わったとき、後ろから締め付けられる感触があった。腰には奏の手。

「どうしたの?」
「特別な人には特別なことをしないとな。」
「誰のセリフのパクリよ。」
「さぁて、誰のだっけな。」

なんでこういう時だけ全問正解なのよ。
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