陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

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ワタシハ

積雪②

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 校門から見えるグラウンドは真っ白だった。

「うわぁぁぁぁ!」
「キィャーーー!」
「ハハハッ!」

こんなに寒いのに、陽キャ共は自分たちだけの空間を作ってやがる。まったく、愉快な奴らだ。

「あ~あ、あんな空間には入りたくないな。」
「きいもそうなのか。じゃあ、上行っとこう。」
「俺と楓は遊んでるわ。なんかあったら呼んでくれ。」

2人の荷物を受け取って教室へ上がる。中は、陽キャがいない分、静かだった。

「まさか、ここまでとはな。」
「カッコ書きを言ってくれ。」

ここでこのセリフをぶっ込んでくる桜には尊敬するわ。

「さてと、奏の席は…」

俺は自分の2つ隣の奏の席に荷物を置いた。

 席替えをしたのはちょうど1週間前。これまで3回席替えをしてきたが、近くにはいつものメンバーが全員揃っていた。しかし、今回はきいと海南さんが1番前という超神引きをして、桜が3列目の窓側、1番後ろの席で俺と熊野さんと奏が横並びになっている。

「熊野さん、1時間目何やったっけ?」
「数Ⅰ。」
「寝るな、こりゃあ。」

ロッカーから教科書とノートを取り出して、窓の外を眺める。うちの教室からはグラウンドが見えるので、珍しいものに群がるアリ達を見ることができる。もちろん、人もいるが。

「あっ、ヘッスラしてる。」

アリ達の中の1人が全身を真っ白にしながら立ち上がる。絶対風邪ひくな。

「あぁ、遊びたかったのにな。」
「しょうがねぇだろ。陰の居場所を奪うのはいつだって陽の当たる奴らだ。」
「そうやね。行き帰りだけで我慢するか。」

俺ときいは窓の外を眺めるだけ。グラウンドから聞こえてくる笑い声を恨みながら。

 楽しい楽しい生物の時間が終わって、終礼が始まる。というか、6時間目の間に終礼をしたので、チャイムと同時に、クラスの大半は教室の外へ飛び出した。

「まったく、元気な奴らだな。」
「電車が静かになるまで残ってようか。」
「そうだな。」

クラブに行く奏と海南さん、カレンに呼ばれた熊野さんを見送って、3人で教室内に残る。中は自習しているやつと、帰りたくないアピールをしている陽キャが残っている。見事なコントラストだ。

「私って昔はこんな風に見えてたのかな?」
「少なくとも俺はそんな感じに見えてたぞ。」
「久志、怒るよ。」

ポコポコと桜が俺の胸を叩いてくる。

「桜、ゴメンて。」
「今日の晩ご飯は作ってよ。」
「はいよ。」

喋っていたら、時間は早く過ぎていき、たぶん電車が4~5本行った頃に俺たちは教室を出た。

「はぁ、さすがに残ってないか。」
「昼間は降っていなかったからな。」

アスファルトを踏みしめて駅へと歩く。おそらく今年はもう雪は降らないだろう。来年は楽しめるかな。
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