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ワタシハ
白兎⑤
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きいと別れて、家に入る。そこで私の記憶が途切れた。
〇〇〇〇〇
「今寝てるけど来てくれないな。何かあったのかな?」
〇〇〇〇〇
気がつけば私は自分の部屋にいた。電気が上にあるから多分ベッドで寝転んでいるのだろう。なんでだろ。
「桜、起きたか?」
「なんで久志が?」
「お前、38.5度もあったんだぞ。気づかんかったんか?」
「そうなんだ。ごめんね。迷惑かけて…」
私は身体を起こして、近くのローテーブルにあるスポーツドリンクに手を伸ばした。
「お、おい!言ってくれたら取ったのに。」
「いいの。自分で出来るから。」
喉に冷たい感触が走る。水分が身体に染み渡っていくようで、気持ちよかった。
「それで、どうやって私の部屋まで運んだの?」
「普通に運んだだけ。俺の部屋でも良かったけど、桜の部屋の方が近かったから。あとごめん!体温測るとき、ちょっとだけ見ちゃった。」
「それくらいいいよ。」
こっちこそ感謝したいくらいだ。
「それで、何があったんだ?」
「それはね…」
怖い。話して、嫌われないか怖い。でも、私は久志を信じてると思ってるから。
「私ね、最近夢を見るんだ。昔の私の夢を。真っ白い世界に昔の私がポツンと独りで座っている夢を。
私って、昔から基本的になんでも出来る方だったの。そこは変わっていないんだけどね。」
「なんの自慢だ?」
「自慢じゃなくて実況よ。ごめんね。
それでね、私には仲のいい友達が2人いたんだ。冴那と陽菜。2人とも家が近くて、よく3人で遊んでいたんだ。あの時はすっごく楽しくて、いい思い出なんだ。花火したり、鬼ごっこしたり。お花見にも行ったっけな。
冴那にはね、好きな人がいたの。冴那の幼馴染の男の子。冴那は、ずっと彼のことが好きらしく、小6の運動会後に告白したんだ。でもね、その次の日から、冴那の態度は変わってしまったの。なんて言われたと思う?」
「ん~なんだろう。分かんないや。」
「『アンタのせいよ。アンタのせいだから、気安く話しかけないでくれる?』って。
私もね、最初は何のことか分からなかったの。別に冴那に何かした訳でもないし、恨まれる覚えもないから。でもね、そのすぐあとに私にはある噂が上がったの。色目を使って男たちを誘惑してるって。バカみたいでしょ。何の報復なのよ。」
「――――。」
「また言っちゃうけど、私って何でも出来たから、全てを察してしまったんだ。冴那がフラれたのは、その男の子が私のことが好きだからだって。自意識過剰も甚だしいよね。確証もないし、その男の子と接点もない。だけど、そうとしか考えられなかった。脳天気なバカどものおかげで、噂は校内を駆け巡って、私は全員から白い目で見られるようになったの。これが私の昔の物語。」
めちゃくちゃ恥ずかしいけど、私のことは全部話した。
「それで、昔の桜には何か言われたのか?」
「『忘れて』って言われたんだけど、分かんないんだよね。」
「何が分かんないんだ?」
「そのあと、私が立ち上がったら、スカートの裾をくいって。」
久志が黙ったので顔を見てみると、真っ赤にして笑いを堪えていた。
「何よ。文句あるの?」
「ごめん。今の桜とはギャップがありすぎて。」
「殴るよ。」
「だからごめんって。」
まだニヤニヤしてるところがムカつくけど、それくらいは許してやろう。
「まぁ、忘れんくていいんちゃう?」
「ふぅん、えっ?」
「昔の桜も、夢に出てくる桜も、寂しいんじゃねぇの?じゃあ、独りにさせておく必要はないだろ。ほら、飯食って早く迎えに行ってやれ!」
お粥を突き出される。さすがにびっくりしたけど、久志にちゃんと食べてるか見られながら食べた。胃袋に食べ物が入って、少し安心できたのか、私はすぐに眠りについた。
〇〇〇〇〇
「今寝てるけど来てくれないな。何かあったのかな?」
〇〇〇〇〇
気がつけば私は自分の部屋にいた。電気が上にあるから多分ベッドで寝転んでいるのだろう。なんでだろ。
「桜、起きたか?」
「なんで久志が?」
「お前、38.5度もあったんだぞ。気づかんかったんか?」
「そうなんだ。ごめんね。迷惑かけて…」
私は身体を起こして、近くのローテーブルにあるスポーツドリンクに手を伸ばした。
「お、おい!言ってくれたら取ったのに。」
「いいの。自分で出来るから。」
喉に冷たい感触が走る。水分が身体に染み渡っていくようで、気持ちよかった。
「それで、どうやって私の部屋まで運んだの?」
「普通に運んだだけ。俺の部屋でも良かったけど、桜の部屋の方が近かったから。あとごめん!体温測るとき、ちょっとだけ見ちゃった。」
「それくらいいいよ。」
こっちこそ感謝したいくらいだ。
「それで、何があったんだ?」
「それはね…」
怖い。話して、嫌われないか怖い。でも、私は久志を信じてると思ってるから。
「私ね、最近夢を見るんだ。昔の私の夢を。真っ白い世界に昔の私がポツンと独りで座っている夢を。
私って、昔から基本的になんでも出来る方だったの。そこは変わっていないんだけどね。」
「なんの自慢だ?」
「自慢じゃなくて実況よ。ごめんね。
それでね、私には仲のいい友達が2人いたんだ。冴那と陽菜。2人とも家が近くて、よく3人で遊んでいたんだ。あの時はすっごく楽しくて、いい思い出なんだ。花火したり、鬼ごっこしたり。お花見にも行ったっけな。
冴那にはね、好きな人がいたの。冴那の幼馴染の男の子。冴那は、ずっと彼のことが好きらしく、小6の運動会後に告白したんだ。でもね、その次の日から、冴那の態度は変わってしまったの。なんて言われたと思う?」
「ん~なんだろう。分かんないや。」
「『アンタのせいよ。アンタのせいだから、気安く話しかけないでくれる?』って。
私もね、最初は何のことか分からなかったの。別に冴那に何かした訳でもないし、恨まれる覚えもないから。でもね、そのすぐあとに私にはある噂が上がったの。色目を使って男たちを誘惑してるって。バカみたいでしょ。何の報復なのよ。」
「――――。」
「また言っちゃうけど、私って何でも出来たから、全てを察してしまったんだ。冴那がフラれたのは、その男の子が私のことが好きだからだって。自意識過剰も甚だしいよね。確証もないし、その男の子と接点もない。だけど、そうとしか考えられなかった。脳天気なバカどものおかげで、噂は校内を駆け巡って、私は全員から白い目で見られるようになったの。これが私の昔の物語。」
めちゃくちゃ恥ずかしいけど、私のことは全部話した。
「それで、昔の桜には何か言われたのか?」
「『忘れて』って言われたんだけど、分かんないんだよね。」
「何が分かんないんだ?」
「そのあと、私が立ち上がったら、スカートの裾をくいって。」
久志が黙ったので顔を見てみると、真っ赤にして笑いを堪えていた。
「何よ。文句あるの?」
「ごめん。今の桜とはギャップがありすぎて。」
「殴るよ。」
「だからごめんって。」
まだニヤニヤしてるところがムカつくけど、それくらいは許してやろう。
「まぁ、忘れんくていいんちゃう?」
「ふぅん、えっ?」
「昔の桜も、夢に出てくる桜も、寂しいんじゃねぇの?じゃあ、独りにさせておく必要はないだろ。ほら、飯食って早く迎えに行ってやれ!」
お粥を突き出される。さすがにびっくりしたけど、久志にちゃんと食べてるか見られながら食べた。胃袋に食べ物が入って、少し安心できたのか、私はすぐに眠りについた。
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