110 / 724
ハジメテ
そして今年が終わった
しおりを挟む
「もーういーくつねーるーとー、おーしょーうーがーつー♪」
「杏、あと1回だぞ。」
今年もあと数時間。もうそろそろ日付も変わる。
「ぬくぬく♪久志、みかん取って。」
「動け~、桜~。」
この2人の年末テンションは本当に面倒くさい。杏はいつも通りボケ倒すし、桜はソファに座ったまま動こうとしない。
「いい時間だから年越しそば作るぞ。手伝ってくれ。せめてニシンの盛り付けくらいは。」
「バカ兄ファイト!」
「久志、ガンバ!」
やっぱり一切手伝う気はないみたいだ。別にいいが。そばをゆがいて、お椀に入れて、つゆを注いで、ニシンをのっける。
「できたぞ。」
そう呼びかけると、2人はゆっくりと立ち上がり、椅子に座った。
『いただきます。』
とりあえず、そばを啜る。上手くできていてよかった。
「今年最後の食事か…」
「今年は色々あったね。」
「今までで一番濃かった1年だった。」
思い返してみると、うちに桜が来たことから始まったんだよな。これまでじゃ考えられないほど遊んだ1年間だった。教室で誰かといることも久しぶりだったし、行き帰りを一緒にする友達もできた。
「桜、来てくれてありがとうな。」
「私こそ、居させてくれてありがとう。あのとき、私を家に入れてくれたから、それからが本当に楽しくなったよ。」
桜は顔をクシャっとして笑う。俺は今年、この笑顔を数えきれないほど貰った。それなら、少しくらい素直に話してみてもいいかもしれない。
「あのさ、俺さ、大学は外に出ようと思うんだ。たぶん福井の大学。まだ探してる最中だけど、このまま上に上がっても、水産系の学部ないから、外に出ることは確定だと思う。だから、みんなと過ごすのも、あと2年ちょいくらいだから、来年ももっと楽しめたらいいな。」
杏にも言ったことのない俺のこと。こんなの、こういう時にしか言える気がしない。
「私は久志のことを応援するよ。だから、いっぱい楽しもうね。」
「バカ兄はバカだけど、家族として応援したげる。」
あまりにも素直に応援してくれる2人に、少し嬉しくなった。
年越し10分前。
「すーっ、すーっ…」
杏はソファで寝息をたてている。さっきまで見ていた音楽特番からチャンネルを変えて、桜と2チャンネルでやっている番組の年越しスペシャルを見ていた。
「このドジョウ好きなんだ。あぁ、やっぱり可愛いなぁ。」
「面白い要素もあるのがいいよな。」
「本当にそう!」
今年の干支ソングが流れて、時計の画面に変わった。
―プッ、プッ、プッ、ゴーン
―ピロン
俺と桜のスマホに同時に通知がきた。『KYUKA組』に1のマークがついている。
『Kaede:みんなあけおめ!』
『奏:あけおめ!ことよろ!』
『きの:あけおめ!今年もよろしく!』
『OtO:あけおめ!今年もよろしくね!』
少し時間があって
―シュポ
『桜:みんなあけおめ!今年も1年間、よろしくね!』
横を向けば、桜が笑っていた。
「なんか嬉しそうやん。送っちゃえば?それとも、見られたくない内容?」
「違うっつうの!送るから!」
―シュポ
「みんなあけおめ!去年も1年間楽しかったから、今年も1年よろしくな。」
『今年が楽しみ』なんて思うなんて初めてだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
第3章、これにて完結です!
次の章からはキャラそれぞれの過去編もたまに挟んでいきます!もちろん、通常の時間の流れに沿ったストーリーも更新していく予定です!
これからもよろしくお願いします!
「杏、あと1回だぞ。」
今年もあと数時間。もうそろそろ日付も変わる。
「ぬくぬく♪久志、みかん取って。」
「動け~、桜~。」
この2人の年末テンションは本当に面倒くさい。杏はいつも通りボケ倒すし、桜はソファに座ったまま動こうとしない。
「いい時間だから年越しそば作るぞ。手伝ってくれ。せめてニシンの盛り付けくらいは。」
「バカ兄ファイト!」
「久志、ガンバ!」
やっぱり一切手伝う気はないみたいだ。別にいいが。そばをゆがいて、お椀に入れて、つゆを注いで、ニシンをのっける。
「できたぞ。」
そう呼びかけると、2人はゆっくりと立ち上がり、椅子に座った。
『いただきます。』
とりあえず、そばを啜る。上手くできていてよかった。
「今年最後の食事か…」
「今年は色々あったね。」
「今までで一番濃かった1年だった。」
思い返してみると、うちに桜が来たことから始まったんだよな。これまでじゃ考えられないほど遊んだ1年間だった。教室で誰かといることも久しぶりだったし、行き帰りを一緒にする友達もできた。
「桜、来てくれてありがとうな。」
「私こそ、居させてくれてありがとう。あのとき、私を家に入れてくれたから、それからが本当に楽しくなったよ。」
桜は顔をクシャっとして笑う。俺は今年、この笑顔を数えきれないほど貰った。それなら、少しくらい素直に話してみてもいいかもしれない。
「あのさ、俺さ、大学は外に出ようと思うんだ。たぶん福井の大学。まだ探してる最中だけど、このまま上に上がっても、水産系の学部ないから、外に出ることは確定だと思う。だから、みんなと過ごすのも、あと2年ちょいくらいだから、来年ももっと楽しめたらいいな。」
杏にも言ったことのない俺のこと。こんなの、こういう時にしか言える気がしない。
「私は久志のことを応援するよ。だから、いっぱい楽しもうね。」
「バカ兄はバカだけど、家族として応援したげる。」
あまりにも素直に応援してくれる2人に、少し嬉しくなった。
年越し10分前。
「すーっ、すーっ…」
杏はソファで寝息をたてている。さっきまで見ていた音楽特番からチャンネルを変えて、桜と2チャンネルでやっている番組の年越しスペシャルを見ていた。
「このドジョウ好きなんだ。あぁ、やっぱり可愛いなぁ。」
「面白い要素もあるのがいいよな。」
「本当にそう!」
今年の干支ソングが流れて、時計の画面に変わった。
―プッ、プッ、プッ、ゴーン
―ピロン
俺と桜のスマホに同時に通知がきた。『KYUKA組』に1のマークがついている。
『Kaede:みんなあけおめ!』
『奏:あけおめ!ことよろ!』
『きの:あけおめ!今年もよろしく!』
『OtO:あけおめ!今年もよろしくね!』
少し時間があって
―シュポ
『桜:みんなあけおめ!今年も1年間、よろしくね!』
横を向けば、桜が笑っていた。
「なんか嬉しそうやん。送っちゃえば?それとも、見られたくない内容?」
「違うっつうの!送るから!」
―シュポ
「みんなあけおめ!去年も1年間楽しかったから、今年も1年よろしくな。」
『今年が楽しみ』なんて思うなんて初めてだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
第3章、これにて完結です!
次の章からはキャラそれぞれの過去編もたまに挟んでいきます!もちろん、通常の時間の流れに沿ったストーリーも更新していく予定です!
これからもよろしくお願いします!
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
ボカロカップ9位ありがとうございました!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる