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ハジメテ
そして聖夜は持ってきた③
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「ただいま!」
「おかえり!思ったより早かったね。ご飯の用意してる最中だから、バカ兄は手伝ってね。他の皆さんはゆったりしててください。」
「おい、杏。俺の扱い酷くないか?」
「いつも通りだよ。」
杏ちゃんに呼ばれて、Qはキッチンへ。俺たちはリビングのソファに座って待つことにした。
「なぁ、桜。いつもこんな感じなのか?」
「いつもってほどでは無いけど、こんな感じかな。めちゃくちゃ仲いいよ。」
1度、キッチンを見る。お互いに無言で、それでも、動きやすいような動きをしている。話さなくても通じてるみたいな。
「もうそろそろ5時か。桜さん、ケーキ受け取ってきて。」
「分かった、行ってくる!」
何かを揚げている音がした時、杏ちゃんがそう言う。桜は財布とQの自転車の鍵を持って外に出ていった。
「皆さん、あとはあのバカ兄がポテト揚げ終わって、フランスパン焼いたら出来るんですけど、まだ食べませんよね。」
「ううん、もう食べちゃって、あとで遊ぶのもいいから、先食べちゃおう。」
「了解です。じゃあ、盛り付けだけ手伝ってもらっていいですか?」
『もちろん!』
杏ちゃんはキッチンから少し大きな両手鍋を持ってくる。鍋にはビーフシチューが入っている。
「これ全員分分けてください。」
白い器を7個置いて、杏ちゃんはまたキッチンに戻って行った。多分、フランスパンを切っているんだろう。
「美味しそうな匂いがする。」
楓が鍋のビーフシチューの匂いでとろけている。俺は、全員分のシチューをついでいく。横で楓がパセリをかけて、音羽ときいが端から順番に置いていく。分け終わると、桜が帰ってきた。
「ケーキはとりあえず玄関に置いてるよ。久志、鍵はテーブルの上に置いとくよ。」
「おけ。こっちももうすぐできるから。」
器にポテトを入れたQがリビングの机にそれを置いて、またキッチンに戻っていく。次は、大皿を持ってきた。
「本日のメインディッシュはトンテキだ。」
「おお、美味しそう!」
「礼なら杏に言っとけ。これに関しては全部杏がやってくれたからな。」
「杏ちゃん、ありがとう。」
次に杏ちゃんがスキレットとフランスパンを持って出てくる。
「こっちも出来上がったから食べましょう!」
スキレットの中にはアヒージョが入っている。これをフランスパンに乗せて食べるのか。
『いただきます!』
好きなところに座った俺たちは、手を合わせる。まずはトンテキから。ナイフを入れると、何の引っかかりもなく切れていく。口に運ぶと、溶けるように口の中で消えていった。
「美味い。」
「よかった~。」
杏ちゃんの安堵した声が響く。俺たちには初めて振る舞うから結構緊張したんだろう。
「このビーフシチューも美味しい。これも杏ちゃん?」
「そうだよ、きい姉。上手くできてる?」
「もちろん!」
杏ちゃんの料理スキルすごいな。今のところ食べた料理でハズレがない。料理全般得意なのかな?
「Qが作ったのは?」
「そのポテトとアヒージョ。」
「アヒージョは杏ちゃんだと思ってた。」
音羽が少し驚いている。まさか、Qまでも料理出来たとは。由良家の料理に舌鼓を打ちながら夜は更けていく。
8時過ぎになって、女子たちが先に風呂から上がってくる。次に俺たち。少し甘い匂いがしたが、あまり深く考えるのはやめておこう。
「おかえり~!コーヒー入ってるよ。」
「ありがとう、楓。」
リビングではケーキを食べる準備が整っていた。
「んじゃ、切るよ!」
箱の中から砂糖いっぱいのドーナツ状のケーキを取り出して、音羽が上手く7等分する。てか、音羽分けるのめっちゃ上手いな。
『いただきます!』
また手を合わせて、フォークで1口サイズにカットして口に運ぶ。このケーキは近くのケーキ屋のやつだから何回も食べたことがあるけど、やっぱり美味い。甘さがしつこくなくて、自然とフォークが進む。
「やっぱりここら辺でケーキといえばこのケーキだよね。」
「そうだね、山の上まで行かないといけないけれど、この味が食べられるなら何回でも行きたいね。」
ケーキを食べ終わった俺たちは、ジュースを飲みながら、眠くなるのを待つ。そこまでは今年1年の思い出とかを話して。楽しくなって楓がうとうとしているのに気づかなかった。コテンと俺の肩に頭を乗せて、もう寝そうだ。
「お開きにしようか。楓、寝るよ。」
「んんっ。」
女子は杏ちゃんの部屋と桜の部屋にわかれて寝るみたいなので、俺たちはQの部屋で寝ることになる。
「「おやすみ。」」
『おやすみ~!』
隣の部屋に入っていく女子たちにそれだけ言って、俺たちは部屋に入る。
「なあなあ、最近進展とかあった?」
「何もねぇよ。奏こそあったか?」
「こっちもだ。」
同じタイミングでため息をつく。向こうの部屋でもキャッキャ言ってるから、どうせ恋バナでもしてるんだろ。Qが静かに口を開いた。
「でもな、俺、たぶん好きな人ならできたぞ。」
「ほうほう。たぶんって何か知りたいが、どこの宇宙人だ?」
「お前、ぶっ殺すぞ。」
「じゃあ誰なんだよ。」
「耳貸せ。」
「おう。」
耳をQに近づける。
「(…)」
「やっぱりかぁ。」
「おかえり!思ったより早かったね。ご飯の用意してる最中だから、バカ兄は手伝ってね。他の皆さんはゆったりしててください。」
「おい、杏。俺の扱い酷くないか?」
「いつも通りだよ。」
杏ちゃんに呼ばれて、Qはキッチンへ。俺たちはリビングのソファに座って待つことにした。
「なぁ、桜。いつもこんな感じなのか?」
「いつもってほどでは無いけど、こんな感じかな。めちゃくちゃ仲いいよ。」
1度、キッチンを見る。お互いに無言で、それでも、動きやすいような動きをしている。話さなくても通じてるみたいな。
「もうそろそろ5時か。桜さん、ケーキ受け取ってきて。」
「分かった、行ってくる!」
何かを揚げている音がした時、杏ちゃんがそう言う。桜は財布とQの自転車の鍵を持って外に出ていった。
「皆さん、あとはあのバカ兄がポテト揚げ終わって、フランスパン焼いたら出来るんですけど、まだ食べませんよね。」
「ううん、もう食べちゃって、あとで遊ぶのもいいから、先食べちゃおう。」
「了解です。じゃあ、盛り付けだけ手伝ってもらっていいですか?」
『もちろん!』
杏ちゃんはキッチンから少し大きな両手鍋を持ってくる。鍋にはビーフシチューが入っている。
「これ全員分分けてください。」
白い器を7個置いて、杏ちゃんはまたキッチンに戻って行った。多分、フランスパンを切っているんだろう。
「美味しそうな匂いがする。」
楓が鍋のビーフシチューの匂いでとろけている。俺は、全員分のシチューをついでいく。横で楓がパセリをかけて、音羽ときいが端から順番に置いていく。分け終わると、桜が帰ってきた。
「ケーキはとりあえず玄関に置いてるよ。久志、鍵はテーブルの上に置いとくよ。」
「おけ。こっちももうすぐできるから。」
器にポテトを入れたQがリビングの机にそれを置いて、またキッチンに戻っていく。次は、大皿を持ってきた。
「本日のメインディッシュはトンテキだ。」
「おお、美味しそう!」
「礼なら杏に言っとけ。これに関しては全部杏がやってくれたからな。」
「杏ちゃん、ありがとう。」
次に杏ちゃんがスキレットとフランスパンを持って出てくる。
「こっちも出来上がったから食べましょう!」
スキレットの中にはアヒージョが入っている。これをフランスパンに乗せて食べるのか。
『いただきます!』
好きなところに座った俺たちは、手を合わせる。まずはトンテキから。ナイフを入れると、何の引っかかりもなく切れていく。口に運ぶと、溶けるように口の中で消えていった。
「美味い。」
「よかった~。」
杏ちゃんの安堵した声が響く。俺たちには初めて振る舞うから結構緊張したんだろう。
「このビーフシチューも美味しい。これも杏ちゃん?」
「そうだよ、きい姉。上手くできてる?」
「もちろん!」
杏ちゃんの料理スキルすごいな。今のところ食べた料理でハズレがない。料理全般得意なのかな?
「Qが作ったのは?」
「そのポテトとアヒージョ。」
「アヒージョは杏ちゃんだと思ってた。」
音羽が少し驚いている。まさか、Qまでも料理出来たとは。由良家の料理に舌鼓を打ちながら夜は更けていく。
8時過ぎになって、女子たちが先に風呂から上がってくる。次に俺たち。少し甘い匂いがしたが、あまり深く考えるのはやめておこう。
「おかえり~!コーヒー入ってるよ。」
「ありがとう、楓。」
リビングではケーキを食べる準備が整っていた。
「んじゃ、切るよ!」
箱の中から砂糖いっぱいのドーナツ状のケーキを取り出して、音羽が上手く7等分する。てか、音羽分けるのめっちゃ上手いな。
『いただきます!』
また手を合わせて、フォークで1口サイズにカットして口に運ぶ。このケーキは近くのケーキ屋のやつだから何回も食べたことがあるけど、やっぱり美味い。甘さがしつこくなくて、自然とフォークが進む。
「やっぱりここら辺でケーキといえばこのケーキだよね。」
「そうだね、山の上まで行かないといけないけれど、この味が食べられるなら何回でも行きたいね。」
ケーキを食べ終わった俺たちは、ジュースを飲みながら、眠くなるのを待つ。そこまでは今年1年の思い出とかを話して。楽しくなって楓がうとうとしているのに気づかなかった。コテンと俺の肩に頭を乗せて、もう寝そうだ。
「お開きにしようか。楓、寝るよ。」
「んんっ。」
女子は杏ちゃんの部屋と桜の部屋にわかれて寝るみたいなので、俺たちはQの部屋で寝ることになる。
「「おやすみ。」」
『おやすみ~!』
隣の部屋に入っていく女子たちにそれだけ言って、俺たちは部屋に入る。
「なあなあ、最近進展とかあった?」
「何もねぇよ。奏こそあったか?」
「こっちもだ。」
同じタイミングでため息をつく。向こうの部屋でもキャッキャ言ってるから、どうせ恋バナでもしてるんだろ。Qが静かに口を開いた。
「でもな、俺、たぶん好きな人ならできたぞ。」
「ほうほう。たぶんって何か知りたいが、どこの宇宙人だ?」
「お前、ぶっ殺すぞ。」
「じゃあ誰なんだよ。」
「耳貸せ。」
「おう。」
耳をQに近づける。
「(…)」
「やっぱりかぁ。」
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