上 下
108 / 732
ハジメテ

そして聖夜は持ってきた②

しおりを挟む
 さて、何を買ったらいいのだろうか。みんながどんなものを選ぶか予想できないし、ダブるのは避けたい。安牌なのはハンカチや文房具類。これじゃ少し面白くないから、アウトドアショップに向かう。

「これいいな。」

少し店内を見回したあと、俺は1つを手に取った。

〇〇〇〇〇

私はスポーツ用品店のニット帽の前で立ち止まる。

「久志ならこの色。楓ときいはこれか。音羽はこれで、奏っちはこれ。」

誰でも似合いそうな色が見当たらない。

「いや、でも、これなら。」

〇〇〇〇〇

「さ~て、何にしようかなぁ~。私が解散って言ったけど、買ったことないんだよなぁ。」

私は本館の3階にある文房具屋に来ている。とても静かな店で、雰囲気もいい。

「書きやすいボールペン?シャーペンもありだけど、買うなら少し高いのを買っちゃおう!」

私は箱を1つ、手に取った。

〇〇〇〇〇

「私なら、何貰ったら嬉しいかな?」

プラプラと雑貨店を歩く。私と同族のQはさっさと行っちゃったし、周りには見知った顔が見えない。1人でインテリアのコーナーを少し歩く。

「これ、いいね。これなら喜びそう。」

私は1つ手に取った。

〇〇〇〇〇

冬かぁ、冬だなぁ、これなら今の季節にピッタリか。

〇〇〇〇〇

私なんてプレゼント交換なんかしたことないよぉ。

「そうだ、みんなで見た映画のノベライズ版なら!」

みんな、喜んでくれるかな?

〇〇〇〇〇

「よぉし、みんないいもの買ったかぁ?」
『うおお~!』

本館にあるフードコートに集合した俺たちはハンバーガーを買った。1番残りのギガが多い奏のスマホにくじ引きアプリをインストールして、それぞれの名前を入力する。これで引いたくじの名前の人からもらうってシステムだ。

「じゃあ、私から引いていい?」

きいが手を挙げて立ち上がる。奏がスマホを渡すと、縦にスワイプしてくじを引いた。

「音羽のだ!」
「はい、どうぞ。」
「ありがと~!開けていい?」
「きい、全員で開けるから待っとけ。」

きいは少し不服そうにプレゼントを机に置き、ハンバーガーをかじる。

 そのあとも同じようにくじを引いていき、熊野さんが海南さんのを、奏がきいのを、海南さんが奏のを、俺と桜は交換で受け取ることになった。

「それじゃ、開けるよ!」
『せーの!』

〇〇〇〇〇

私が貰ったのはスノードーム。中にサンタとトナカイが入っていて、雪が舞っている。とても綺麗だ。

「ありがとう、音羽。」
「喜んでいただけて何より。」

私はスノードームを大事に袋に戻した。

〇〇〇〇〇

「奏、結構センスあるやん。誰にもあげたことないくせに。」

私が貰ったのは入浴剤の詰め合わせ。実用的で、冷え症の私には少しありがたい。明日の晩から使ってみよう。

〇〇〇〇〇

「これってもしかして…」

袋の中から出てきたのは1冊の本。

「まさかこれって。」
「そう、ワンピの映画のノベライズ版。これならみんな喜ぶかなって。」
「ありがとな、きい。」

〇〇〇〇〇

「これは、なかなかの代物ですな。」
「結構高かったんだから、大事に使ってよ。」
「分かってるって。」

楓からのプレゼントって聞いて、どんな爆弾が入っているのか怖かったけど、案外普通のものだった。箱入りのボールペンなんて使ったことないや。大事にしよ。

〇〇〇〇〇

「久志、これって。」
「ニット帽。見た感じこれが1番暖かそうだなって。まさか、」
「開けてみて。」

俺は袋を開ける。そこにあったのは黒のニット帽だった。

「被ったね。」
「被ったな。」

ハハッと笑い合う。これだけ色んなものがあるのに、まさか被るとはな。ちょっとびっくりだ。

「なんだ、お前ら被ったのか。」
「ホントだ、ひい君たち被ってる!」
「どんな確率だよ、それ。」

そしてみんな、俺たちのことを見て、

『似合ってるから何も言えねぇけどよ。』

と言う。少し恥ずかしいけど、嬉しい。本当にいいプレゼントを貰ったな。

 帰りも樟葉から特急に乗り、枚方市で乗り換える。

「今から、Qの家に行ってクリパか。」
「料理は杏ちゃんが作ってくれるみたい。杏ちゃん料理上手だから本当に楽しみ!」
「そして、お泊まり会して、明日の朝帰ると。」
「まだ、半日も経ってないんだな。」
「楽しいね!」

やがて見慣れた景色になり、俺たちは斜めに傾いた電車から降りた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...