上 下
96 / 732
ハジメテ

そして体育祭は始まった④

しおりを挟む
 音羽が恥ずかしい発表をした直後、私はスタートラインに立っていた。この体育祭は結構恥ずかしいお題が多い。『好きな人』こそないものの、『大切な人』とか『推し』とか、そこら辺が多い印象だ。

「はぁ、嫌だな。」

そんなことを呟きながら、私はピストルが鳴るのを待った。

―パァン

音と同時に走り出した私は、封筒を開けて、中の紙を開く。お題は、『一緒にいて楽しい人』って、ほぼ告白みたいなもんじゃねぇか。私の頭に浮かんだのはKYUKA組のみんなの顔。あの中で、私と走ってくれる人を探そう。

 C組の待機場所の前まで行って、みんなと目が合う。

「桜~お題何だったんだ?」
「『一緒にいて楽しい人』だから、か…」
「Q、出番だぞ!」
「ちょっ!」

ニヤリと笑う楓。その私に任せなさいオーラ何なの?とりあえず、久志の手を引っ張ってトラックに戻る。紐がなくなっていないから、まだ誰もゴールしていないだろう。紐を軽めに縛って二人三脚。多分汗臭いんだろうけど、今はしょうがない。そういうことは考えられる競技じゃないもん。ゴールして、委員のところへ。マイクを渡され、お題を言う。

「私のお題は『一緒にいて楽しい人』です。」

頬に熱を帯びていくのが分かる。観客からは「キャー!」と叫び声が聞こえるし、たぶん先生たちも注目している。音羽もこんな感じだったのかな?

「ってことですが、合ってますか?」
「ま、まぁ。桜は俺の家に居候してるんで。」
『え?』

観客が久志の言葉にどよめく。そりゃあそうだろう。恋人でもなんでもない私たちが一緒に住んでるのは、傍から見たら不思議なことなんだから。

「(ちょっと、何言ってるの?)」
「(これ以外言い方ないだろ。)」
「(まあたしかに。)」

「えっと、とりあえずOKです。どうぞ、お幸せに。」

ちょっと!委員長さん!その認識間違ってるよ!

 借り物競争では、ピンクチームはほぼ1位か2位だったので、現時点で2位の紫チームと60点差つけることができている。しかし、午後にあるのはリレー種目ばかり。配点が高いので油断できない。

〇〇〇〇〇

 午後1種目目は部活動対抗リレー。得点には関係ない、お祭り種目だ。水泳部からは、男子も女子も出場する。

 まずは女子のリレーから。女子はジャージで走っている。ゴーグルをつけて。バトンはビート板で走っている。特に目立つ要素がなく、その組では4位だった。

 そして問題の男子のリレー。なぜ問題かというと、先輩のことをあまり悪く言いたくないが、今の3年生はノリと根性でできていると言っても過言では無い。どんな事件を起こすのやら。

 まずは、スタートと同時にバスローブを脱いで水着になる。水着にゴーグルで、普通に靴を履いている。1歩間違えれば通報ものの服装でトラックを走る姿に、思わず笑ってしまった。そして、第2走の先輩からももう脱いでいる。これじゃ、ただの変態クラブみたいやないか。

 レースは結局、柔道部と争う展開になったが、アンカーが抜かされてしまい、5位だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

処理中です...