上 下
78 / 732
サマバケ

DAY36①

しおりを挟む
 朝、少し早めに目が覚めてしまった。時間は5時前。起きている人も少ないから静かにしておこう。

 お湯を沸かして朝の1杯。ステンレス製のコップに甘酒の乾燥したやつを入れて、湯を注ぐ。スプーンでかき混ぜて完成だ。

「みんな何時ぐらいに起きるかな?」

自分の椅子に座って呟く。気温は涼しいと感じるけど、温かいものを飲むと少し暑いと感じるほど。少しずつ見えてくる太陽を眺めながら1口。理想が叶った。

「おう、桜。起きてたのか。」
「久志こそ早いね。」
「枕が変わるとあんまり寝れなくてな。ふわぁぁ。」
「私もそんな感じ。あんまり寝れてないな。何か飲む?」
「チャイを頼む。」

私はスティックのチャイ・オレを箱から取り出して、ステンレスのコップに入れる。お湯を注いで、これもかき混ぜるだけで完成だ。

「はい、どうぞ。」
「ありがとう。あぁ、染みるぅぅ!」

久志はフーフーしながら少しずつ飲んでいく。少なくとも、このチャイが無くなるまでは2人で話せるな。

「久志ってこういうの初めてだよね。楽しかった?」
「まぁな。知らねぇこともいっぱいだし、まだ人付き合いも手探りだけど、楽しいな。」
「そう。それならよかった。」

私の脳裏には1つの光景が浮かぶ。

『アンタといても何にも楽しくない。』

ダメだ、私。こんなに楽しいのに、この記憶を思い出しちゃ。私は変わったんだから。

「桜?」
「何にもないよ。ちょっと考え事してただけ。」
「それならよかった。」

顔を覗き込んできた久志にそうとだけ答えて、私は甘酒を飲む。少し恥ずかしい。

「桜って、弱いところ見せないよな。」
「そ、そうかな?」
「そうだな。別に素を見せてくれてもいいのに。」
「そ、そう。」

正直言って少し怖い。だって、私の素を見せたらみんな離れていくんだから。このメンバーとそんなので離れるのは絶対に嫌だから。そういう人たちじゃないってのは分かってるんだけど、どうしてもできない。

「もし、私の素がみんなが思っていたのと違うかったとして、離れていかないよね。」
「当たり前だろ。友達だから。」
「友達だもんね。」

そうか。友達か。本当にそう思ってくれてるんだったら嬉しいな。

「おはよ!」
「おはよう、きい。」

まずはきいが出てくる。続いて楓と音羽が出てきて、最後に奏っちが出てきた。

「Q、朝飯頼んだ。」
「しょうがねぇな。ホットサンド作るけど、何挟みたい?」
「Qに任せる。」
「私も。」
「私はハムと卵がいいかな。」
「私はチーズマシマシのハムで!よろしくね、ひい君。」
「俺はテキトーでいいわ。」

久志はバウルーにバターを塗って、パンをしく。具材を挟んで、焚き火の上に置いた。たまに焦げてないか確認しながら、きつね色になるまで焼き続ける。1回あたり、だいたい3分ずつぐらいだから、全員分焼くのにだいたい20分。焼けた分から食べてもらう。ちなみに大好評だった。

 焚き火の火を鎮めながら、軽く片付けを始める。テントの中なら荷物を出して、ブルーシートに乗せていく。さっき楓のお母さんから連絡があったから、あと1時間ぐらいで迎えに来てくれるだろう。タープを畳んで、テントを解体し、残るはそれぞれの椅子だけ。消えていく火を椅子で囲んで眺めながら、楓のお母さんが来るのを待った。

 火が消える。夏の終わりを暗示しているようで、少し哀しい。それでも、学校でまた会えるから、今はセンチな気分にはならないでおこう。

『この夏がずっと終わらなければいいのに』

なんて考えないでおこう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

ハッピークリスマス !  非公開にしていましたが再upしました。           2024.12.1

設樂理沙
青春
中学生の頃からずっと一緒だったよね。大切に思っていた人との楽しい日々が この先もずっと続いていけぱいいのに……。 ――――――――――――――――――――――― |松村絢《まつむらあや》 ---大企業勤務 25歳 |堂本海(どうもとかい)  ---商社勤務 25歳 (留年してしまい就職は一年遅れ) 中学の同級生 |渡部佳代子《わたなべかよこ》----絢と海との共通の友達 25歳 |石橋祐二《いしばしゆうじ》---絢の会社での先輩 30歳 |大隈可南子《おおくまかなこ》----海の同期 24歳 海LOVE?     ――― 2024.12.1 再々公開 ―――― 💍 イラストはOBAKERON様 有償画像

アンタッチャブル・ツインズ ~転生したら双子の妹に魔力もってかれた~

歩楽 (ホラ)
青春
とってもギャグな、お笑いな、青春学園物語、 料理があって、ちょびっとの恋愛と、ちょびっとのバトルで、ちょびっとのユリで、 エロ?もあったりで・・・とりあえず、合宿編23話まで読め! そして【お気に入り】登録を、【感想】をお願いします! してくれたら、作者のモチベーションがあがります おねがいします~~~~~~~~~ ___ 科学魔法と呼ばれる魔法が存在する【現代世界】 異世界から転生してきた【双子の兄】と、 兄の魔力を奪い取って生まれた【双子の妹】が、 国立関東天童魔法学園の中等部に通う、 ほのぼの青春学園物語です。 ___ 【時系列】__ 覚醒編(10才誕生日)→入学編(12歳中学入学)→合宿編(中等部2年、5月)→異世界編→きぐるい幼女編 ___ タイトル正式名・ 【アンタッチャブル・ツインズ(その双子、危険につき、触れるな関わるな!)】 元名(なろう投稿時)・ 【転生したら双子の妹に魔力もってかれた】

朝起きたらイケメンだったはずの俺がブサイクになっていた

綾瀬川
青春
俺は西園寺隼人。15歳で明日から高校生になる予定だ。 俺は、イケメンでお金持ち、男女問わず友達もたくさん、高校生で美人な彼女までいた。 いたというのが過去形なのは、今日起きたら貧乏な家でブサイクになっていたからだ。 ーーなんだ。この体……!? だらしなく腹が出ていて汚いトランクス履いている。 パジャマは身につけていないのか!? 昨晩シルクのパジャマを身に纏って寝たはずなのに……。 しかも全身毛むくじゃらである。 これは俺なのか? どうか悪い夢であってくれ。 枕元のスマホを手に取り、 インカメで自分の顔を確認してみる。 それが、新しい俺との出会いの始まりだった。 「……は?」 スマホを見ると、超絶不細工な男がこちらを見ている。 これは俺なのか?夢なのか? 漫画でお馴染みの自分の頬を思い切りつねってみる。 「痛っっっ!!!」 痛みはばっちり感じた。 どうやらいまのところ夢ではなさそうだ。 そうして、俺は重い体をフラフラさせながら、一歩を踏み出して行った。

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

個性派JK☆勢揃いっ!【完結済み】

M・A・J・O
青春
【第5回&第6回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】 【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】 庇護欲をそそる人見知りJK、女子力の高い姐御肌JK、ちょっぴりドジな優等生JK……などなど。 様々な個性を持ったJKたちが集う、私立の聖タピオカ女子高等学校。 小高い丘の上に建てられた校舎の中で、JKたちはどう過ごしていくのか。 カトリック系の女子校という秘密の花園(?)で、JKたちの個性が炸裂する! 青春!日常!学園!ガールズコメディー!ここに開幕――ッッ! ☆ ☆ ☆ 人見知りコミュ障の美久里は、最高の青春を送ろうと意気込み。 面倒見がいいサバサバした性格の朔良は、あっという間に友だちができ。 背が小さくて頭のいい萌花は、テストをもらった際にちょっとしたドジを踏み。 絵を描くのが得意でマイペースな紫乃は、描き途中の絵を見られるのが恥ずかしいようで。 プロ作家の葉奈は、勉強も運動もだめだめ。 たくさんの恋人がいるあざとい瑠衣は、何やら闇を抱えているらしい。 そんな彼女らの青春は、まだ始まったばかり―― ※視点人物がころころ変わる。 ※だいたい一話完結。 ※サブタイトル後のカッコ内は視点人物。 ・表紙絵は秀和様(@Lv9o5)より。

処理中です...