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サマバケ

DAY35①

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 3時前にセットしておいたアラームが鳴る。俺はそれを止めて、横の奏を見る。まだ寝ている。

「起きろ。」
「んんっ。」
「起きろ!」
「んんんっ。」
「起きろってば!」
「んん~。」

ダメだ。まったく起きる気配がしない。よし、こうなったら。

―ゴン

蹴るしかないよな!

「痛てぇよ!」
「ごめんごめん。」

今日はついにキャンプ当日。行き帰りは海南さんのお母さんに車を出してもらって、その他は俺たちだけ。経験者が2人いるから問題は無いだろう。

 歯を磨き、寝癖を直して外に出る。荷物は昨日の間に車に載せておいたから、クーラーボックスを載せて、女子組の来るのを待つだけ。ガチャっと音がして海南さんのお母さんが出てくる。

「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
「おっはよう!みんなはもう少しで出てくるからね。先乗っとく?」
「はい、今日はお願いします。おばさん。」
「奏くんも、何かあったら呼んでいいからね。」
「了解です。」

俺たちは奥の2席に座る。この車は9人乗りで、左側1列を荷物置きにしているからあとは5席余っている。人数も余裕だ。

「おはよー!2人とも早いね!」

海南さんが1番前の右側に座る。続いてきいが目を擦りながらやってきて、その左に。熊野さんは寝癖が治らなかったのか、必死に髪を押さえながら2列目の右側、奏の前に。

「おはよ!2人とも!」

桜は俺の前に座った。全員服装はほぼ同じで、半袖のTシャツにジーパン。どこかの山に石炭でも掘りに行くのかな?

「行くよー!」

海南さんのお母さんはそう言ってエンジンをかけ、ゆっくりと発車した。

 キャンプ場には8時に着いた。まだ前日からの客が残っているが、それほど混んでいる訳では無い。奥の方に大きく場所を取れそうなところを見つけたので、そこで下ろしてもらう。

「じゃあ明日の昼前に迎えに来るからね!」

海南さんのお母さんは窓から手を振って、帰って行った。

 川沿いだからか、枚方と比べたらいくらか涼しい。空気も美味しいし、はしゃいでいる子供も少ない。駅の方からディーゼル車のエンジン音が聞こえてきて、風情を感じる。

「よし、まずは設営だな。自分たちのテント立てて、タープ張るぞ。」

チャチャッと設営を済ませて、昼飯の準備。カップラーメンで済ませる予定だから湯を沸かすだけ。シングルバーナーで湯を沸かして、注ぐ。3分待って完成だ。いつも食べているのより、3倍は美味い。外効果もあるのだろうか。

「なんか美味しいね。」
「キャンプ飯って感じがするな。」

 昼飯後、俺と桜は野菜の追加を頼まれたので、1つ隣の駅の近くにある道の駅に。新しく出来たところなので、人も多く、美味しそうなのもいっぱいあった。

「頼まれたのは、青ネギか。とりあえず、これは買っといて…」
「ねえねえQ。なんでこんなにお茶が多いんやろ?」
「ここら辺がお茶の有名な産地やからちゃう。知らんけど。」

あと、お菓子類も頼まれたので、大福とティーパックの煎茶を買う。レジで支払いをして、キャンプ場に戻った。

 4時くらいまでは、この夏にあったことを話していた。熊野さんはカレンに料理を教えていた話を、俺は1人旅したことを、奏と海南さんはクラブの話を、きいは家族旅行の話を、そして桜は杏とショッピングに行った話をした。煎茶を淹れてさっき買った大福を食べる。買ってすぐだから、餅が硬くなってなくて美味しい。煎茶も甘味と渋味のバランスがちょうどよくて美味しかった。

「そろそろ、晩御飯の準備だな。」
「と言っても、焼くだけだけどね。」

夜になると近所の迷惑になるから、先に薪を割っておく。奏にレクチャーしてもらって、燃えやすいように細くしていく。女子組はその間に鶏肉を一口大に切って、下味をつける。今日はシンプルに塩だけ。隣の奏は、俺が切って細くなった薪を削って、先っぽに花みたいなのを作っている。

「なんだそれ?」
「フェザースティックって言って、燃えやすくなるんだよ。やってみるか?」

薪とナイフを手渡された俺は、見様見真似でやってみる。が、できる気配がしない。

「まあ、練習だな。」

そう言って、奏はそのフェザースティックに火をつける。焚き火台にそれを置いて、細い薪から順番に乗せていく。みるみるうちに火は大きくなり、焚き火らしくなってきた。さぁ、夜のスタートだ。
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