上 下
75 / 732
サマバケ

DAY34②

しおりを挟む
 明日の分の荷物をリュックにまとめて背負う。正直言ってめちゃくちゃ重い。こんなのをソロキャンパーの人達は持ったりしているのかと思うと、改めて尊敬できる。

 リビングに降りると、桜はもう準備を終わらせていた。今はソファに座ってテレビを見ている。

「お待たせ。」
「久志、昨日の間に準備してなかったの?」
「今日の晩するつもりだった。」
「フフッ。久志らしい。きいはもうそろそろだって。迎えに行く?」
「1人で行かせるのもな。それくらいしといてやるか。」
「素直じゃないなぁ。」

桜はテレビを消して立ち上がる。俺より少し大きめのリュックを背負って、忘れ物がないことを確認して家を出る。

「いってらっしゃーい!」
「いってきまーす!杏ちゃん、寂しかったら連絡してきていいからね!」
「うん、桜さん。覚悟しといてね。」
「望むところだ!」

桜は先に歩いていく。

「それじゃ、行ってくるぞ。」
「おう、土産話たくさん持って帰ってこいよ。」

杏は手をヒラヒラと振って、俺を送り出す。俺は走って桜のところまで行き、並んで歩いた。

 途中できいと合流して、奏の家まで案内してもらう。夏の騒がしい夜道は寂しさも溶かしていくようで、すぐに奏の家に着いた。

「じゃあ、明日ね。」
「寝坊するなよ。」
「久志こそ。」

俺は手前の奏の家に、2人は奥の海南さんの家に入っていく。

「やっと来たか。」

奏はキッチンで晩ご飯を作っていた。匂いからして炒飯だろうか。手早く食べられるからピッタリって感じだ。

「「いただきます。」」

久しぶりの男2人だけの食事。小さい頃に父ちゃんと2人でラーメンを食べに行ったっきりだ。味付けも薄目で美味い。そこら辺の中華料理屋なら大盛りの量なのに、いつまでも飽きない。これが料理上手の作る料理なのか。

 風呂は男2人だと流石に狭いので1人ずつ。先に俺が入っている間に、奏は布団を敷いてくれていて、寝る用意ももうほぼしてくれていた。

 歯を磨いて、布団に潜り込む。明かりはまだ点いたままだ。

「なあQ。お前、桜と過ごしていて、そういう気にはならないのか?」

奏が言わんとしていることは分かる。それでも俺は…

「まぁ、杏がいるしな。そういう感じにはならないな。それでも、危なかったことならあるぞ。」
「ほうほう。何があったんだ?」
「初日、桜がバスタオル1枚で出てきた。」
「感想をどうぞ。」
「(ありがとうございました。)絶対言うなよ!」
「分かってるって、男同士の約束だ。」

俺たちは指切りをする。

「奏こそどうなんだ?隣に海南さんいるだろ。」
「まあ、そういう気にはならんな。なんか、ずっと一緒にいるから、ドキドキとかじゃなくて、安心的な。」
「それ、もう付き合ってるみたいじゃねぇか。」
「違ぇよ、ただ単にめちゃくちゃ仲のいい幼馴染ってだけだ。」
「本当か?」

奏の頬が次第に熱を帯びていくのが分かる。これ以上は、いつボロを出してもおかしくない。早く話を切らないと。

「明日も早いからもう寝るぞ!」
「あっ逃げた。」

奏は無理矢理電気を消して、眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

人違いで同級生の女子にカンチョーしちゃった男の子の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

処理中です...