74 / 724
サマバケ
DAY34①
しおりを挟む
夏休みもあと4日になって水泳部がOFFになったので、これからは遊び放題になった。OFF初日の今日はQの家でゲーム。これは楓の要望だ。何をやりたいか話していた頃から、もう1ヶ月が経ったと思うと、本当に濃い1ヶ月だったなと思う。
「何感慨深い顔になってるのよ。」
「いや、色々あったなって思ってな。」
「まだ、今日ゲームして、明日からキャンプでしょ。もっと濃くなると思うよ。」
隣で歩く楓は、いつもよりほんの少し嬉しそうだ。Qの家まではもう少し。
坂を登って住宅街の中のクリーム色した壁。これがQの家。と言っても桜と一緒に住んでいるから、正確にはQと桜の家だ。インターホンを押すと、マイクの向こうから桜の声がした。
「鍵開いてるから、入って。」
夏の太陽で熱くなったドアに手をかけ開く。
「「お邪魔しまーす!」」
「2人とも遅いぞ。もうQとゲーム始めてるからね。」
「音羽こそ早すぎん?そんなに楽しみだったなかなぁ?」
「はぁ?か、楓!そ、そんなんじゃねぇし。お前らより家が遠いだけだから…」
集合時間は2時ぐらい。こっちも楓が楽しみだからって集合時間の30分前に着くように来ているから、音羽の気持ちもわからないことはない。
「まず何する?」
「もちろんこれ!」
そう言って楓が取り出したのは、某レースゲーム。楓も俺もやりこんではいるが、桜とQはそこそこ強いらしい。もちろん、戦ったことはないが。
1レース目。俺が使うのはあのキノコ頭。カートは比較的軽いため、加速力に長けている。みんなは、Qはこのゲームの原作の主人公キャラ。桜はその相棒。音羽は亀で、楓はお化け。スタート時の順位は上位から、音羽、楓、桜、俺、Q。きいは用事で後から来るみたいだから、ひとまず毎回の1レース目はこの順番だろう。スタートダッシュは全員成功。早くも音羽は1位争いに食い込んでいて、俺たちはそれを見る形で追走。最初のアイテムボックスで赤こうらが当たった俺は、近くのお化けに向かって投げる。しっかりと当て、あたふたしているのを横目に抜き去っていく。本人の方を見れば俺を睨んでいた。右下の順位を見れば、Qが現在1位で独走中のようだ。それを追うのは桜と音羽。俺は現在4位。2人の背中はだいぶ向こうにあるから、落ちてきたおこぼれをもらうとしよう。それでもやはりQはコントロールがうまい。地面は揺れているのに、しっかり飛んで加速をつけて降りてくる。そして、次からの着地点になりそうな場所にバナナを置いたら、後ろの方の誰かが滑っている。Qはそのままゴール。2位が桜で3位が音羽、4位は俺で楓は8位に沈んでいた。
2レース目は言うまでもなく、暴君楓の企みにより集中砲火に遭った。やりやがる。こちらも本気を出すとしようか。
3レース目。俺は持ち前の運の悪さで楓の少し後ろをキープ。次のアイテムボックスで花を引いた。
「火拳!火拳!」
「おい、奏。それ別のゲームだぞ。」
「それでも他の例え方ねえだろ。」
俺は怒涛の追い上げで、1位になった。最終成績では音羽に負けて4位。でも、楓には勝ったから良しとしよう。
ピンポーン
『ごめん、遅れた~!』
「きい、鍵開いてるから入ってこい!」
『はぁーい!』
ガチャっと音がして、トタトタと走る音が近づいてくる。
「ヒーローは遅れてやってくる!」
「遅れすぎだ!」
Qはきいの頭を軽く叩く。きいは頭を押さえながら、周りを見回す。何かに気づいたのだろう。
「みんな、どっか行くん?」
「あぁ、明日の買い出しにな。ゲームはもう終わったぞ。」
「えぇ~っ!」
きいは残念そうに叫ぶ。もう4時だしな、これ以上遅くなると売り場から肉が消えかねん。
俺たちは光善寺から電車に乗り、いつも降りている香里園へ。でも、改札を抜けて向かうのはいつもと逆。商店街を抜けて、目の前に見えてくるのはアル・プラサ。入ってすぐのところにあるスーパーに入る。
「野菜は玉ねぎ、しいたけ、あったらさつまいも。」
「玉ねぎは何するの?」
「アルミホイルに包んで火にぶち込むんだと。さつまいもも。Qが簡単だからだって。」
「へぇ、ひい君が。」
きいが少し驚いたような表情を見せて、玉ねぎの入ったネットを手に取る。次は魚売り場へ。
「これ、美味しそう。」
音羽が手に取ったのはイカとコーンのバターソテー。アルミのパックに入っていて、そのまま調理できるらしい。キャンプで使いやすそうだ。それをカゴに入れて、次は肉売り場。
「さぁて、6人だから3kgは食べるよな。」
うーんと悩む。なぜなら、この近くには業務用のスーパーがあるからだ。そっちの方がおそらく安い。
「桜とQは業務用の方見てきてくれ。あったら、連絡くれ。」
「了解。牛豚鶏全部おさえとくね。」
「頼んだ。」
俺たちは笑顔で2人を送り出し、先にパン類を確保する。飲み物は、2人とも好き嫌い無いって言ってたから、テキトーでいいだろう。あとは肉の連絡を待つだけだ。
俺のスマホが振動する。電話がかかってきていた。応答のボタンを押して耳に当てる。
『あったぞ。牛肩500g、牛ロース500g、牛の小腸350g、鶏もも1kg、豚焼肉用1kg。』
「全部頼む。」
『了解。』
俺たちはレジに並び、支払いをする。香里園の改札前で集合して、電車に乗った。
夕陽に照らされて、電車は走る。
「明日も朝早いし、今日は俺と楓の家で泊まるのはどうだ?」
これはあくまで俺の願望だ。受け入れられなくて当然だろう。
「いいんじゃない。元々、楓の家に泊まる予定だったし。」
「私もいいよ。みんな揃ったら楽しいもん。」
「私も賛成。2日いるのも3日いるのも、楽しけりゃいいでしょ。」
「俺も、そっちの方が効率いいだろ。」
みんなありがとうと心の中で呟いた。
「何感慨深い顔になってるのよ。」
「いや、色々あったなって思ってな。」
「まだ、今日ゲームして、明日からキャンプでしょ。もっと濃くなると思うよ。」
隣で歩く楓は、いつもよりほんの少し嬉しそうだ。Qの家まではもう少し。
坂を登って住宅街の中のクリーム色した壁。これがQの家。と言っても桜と一緒に住んでいるから、正確にはQと桜の家だ。インターホンを押すと、マイクの向こうから桜の声がした。
「鍵開いてるから、入って。」
夏の太陽で熱くなったドアに手をかけ開く。
「「お邪魔しまーす!」」
「2人とも遅いぞ。もうQとゲーム始めてるからね。」
「音羽こそ早すぎん?そんなに楽しみだったなかなぁ?」
「はぁ?か、楓!そ、そんなんじゃねぇし。お前らより家が遠いだけだから…」
集合時間は2時ぐらい。こっちも楓が楽しみだからって集合時間の30分前に着くように来ているから、音羽の気持ちもわからないことはない。
「まず何する?」
「もちろんこれ!」
そう言って楓が取り出したのは、某レースゲーム。楓も俺もやりこんではいるが、桜とQはそこそこ強いらしい。もちろん、戦ったことはないが。
1レース目。俺が使うのはあのキノコ頭。カートは比較的軽いため、加速力に長けている。みんなは、Qはこのゲームの原作の主人公キャラ。桜はその相棒。音羽は亀で、楓はお化け。スタート時の順位は上位から、音羽、楓、桜、俺、Q。きいは用事で後から来るみたいだから、ひとまず毎回の1レース目はこの順番だろう。スタートダッシュは全員成功。早くも音羽は1位争いに食い込んでいて、俺たちはそれを見る形で追走。最初のアイテムボックスで赤こうらが当たった俺は、近くのお化けに向かって投げる。しっかりと当て、あたふたしているのを横目に抜き去っていく。本人の方を見れば俺を睨んでいた。右下の順位を見れば、Qが現在1位で独走中のようだ。それを追うのは桜と音羽。俺は現在4位。2人の背中はだいぶ向こうにあるから、落ちてきたおこぼれをもらうとしよう。それでもやはりQはコントロールがうまい。地面は揺れているのに、しっかり飛んで加速をつけて降りてくる。そして、次からの着地点になりそうな場所にバナナを置いたら、後ろの方の誰かが滑っている。Qはそのままゴール。2位が桜で3位が音羽、4位は俺で楓は8位に沈んでいた。
2レース目は言うまでもなく、暴君楓の企みにより集中砲火に遭った。やりやがる。こちらも本気を出すとしようか。
3レース目。俺は持ち前の運の悪さで楓の少し後ろをキープ。次のアイテムボックスで花を引いた。
「火拳!火拳!」
「おい、奏。それ別のゲームだぞ。」
「それでも他の例え方ねえだろ。」
俺は怒涛の追い上げで、1位になった。最終成績では音羽に負けて4位。でも、楓には勝ったから良しとしよう。
ピンポーン
『ごめん、遅れた~!』
「きい、鍵開いてるから入ってこい!」
『はぁーい!』
ガチャっと音がして、トタトタと走る音が近づいてくる。
「ヒーローは遅れてやってくる!」
「遅れすぎだ!」
Qはきいの頭を軽く叩く。きいは頭を押さえながら、周りを見回す。何かに気づいたのだろう。
「みんな、どっか行くん?」
「あぁ、明日の買い出しにな。ゲームはもう終わったぞ。」
「えぇ~っ!」
きいは残念そうに叫ぶ。もう4時だしな、これ以上遅くなると売り場から肉が消えかねん。
俺たちは光善寺から電車に乗り、いつも降りている香里園へ。でも、改札を抜けて向かうのはいつもと逆。商店街を抜けて、目の前に見えてくるのはアル・プラサ。入ってすぐのところにあるスーパーに入る。
「野菜は玉ねぎ、しいたけ、あったらさつまいも。」
「玉ねぎは何するの?」
「アルミホイルに包んで火にぶち込むんだと。さつまいもも。Qが簡単だからだって。」
「へぇ、ひい君が。」
きいが少し驚いたような表情を見せて、玉ねぎの入ったネットを手に取る。次は魚売り場へ。
「これ、美味しそう。」
音羽が手に取ったのはイカとコーンのバターソテー。アルミのパックに入っていて、そのまま調理できるらしい。キャンプで使いやすそうだ。それをカゴに入れて、次は肉売り場。
「さぁて、6人だから3kgは食べるよな。」
うーんと悩む。なぜなら、この近くには業務用のスーパーがあるからだ。そっちの方がおそらく安い。
「桜とQは業務用の方見てきてくれ。あったら、連絡くれ。」
「了解。牛豚鶏全部おさえとくね。」
「頼んだ。」
俺たちは笑顔で2人を送り出し、先にパン類を確保する。飲み物は、2人とも好き嫌い無いって言ってたから、テキトーでいいだろう。あとは肉の連絡を待つだけだ。
俺のスマホが振動する。電話がかかってきていた。応答のボタンを押して耳に当てる。
『あったぞ。牛肩500g、牛ロース500g、牛の小腸350g、鶏もも1kg、豚焼肉用1kg。』
「全部頼む。」
『了解。』
俺たちはレジに並び、支払いをする。香里園の改札前で集合して、電車に乗った。
夕陽に照らされて、電車は走る。
「明日も朝早いし、今日は俺と楓の家で泊まるのはどうだ?」
これはあくまで俺の願望だ。受け入れられなくて当然だろう。
「いいんじゃない。元々、楓の家に泊まる予定だったし。」
「私もいいよ。みんな揃ったら楽しいもん。」
「私も賛成。2日いるのも3日いるのも、楽しけりゃいいでしょ。」
「俺も、そっちの方が効率いいだろ。」
みんなありがとうと心の中で呟いた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
おっぱい揉む?と聞かれたので揉んでみたらよくわからない関係になりました
星宮 嶺
青春
週間、24hジャンル別ランキング最高1位!
ボカロカップ9位ありがとうございました!
高校2年生の太郎の青春が、突然加速する!
片想いの美咲、仲の良い女友達の花子、そして謎めいた生徒会長・東雲。
3人の魅力的な女の子たちに囲まれ、太郎の心は翻弄される!
「おっぱい揉む?」という衝撃的な誘いから始まる、
ドキドキの学園生活。
果たして太郎は、運命の相手を見つけ出せるのか?
笑いあり?涙あり?胸キュン必至?の青春ラブコメ、開幕!
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる