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サマバケ

DAY22

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「絵に書いたような人生ってあると思う?」
「どうしたんだ?楓。」

俺のベットで寝転んでいる楓は、スマホを見ながらこう問いかける。うちのクラブにはお盆休みがなく、基本的に午前中にクラブがあるので、午後はこうして過ごしている。

 ちなみに俺は練習ノートを書いている最中。今日の感想を書こうとした時に、問いかけられたのだ。

「それで、何読んでんだ?」
「昨日、奏が教えてくれた漫画。アプリで初回全話無料になってたから最新話まで読み進めた。」
「あぁ、モブね。たしかにあれは絵に描いたような物語かも。」
「でしょ!私もこういう恋愛したいなぁ。でも、私の好きな人はちょっと鈍感なんだよね。」

楓の頬が少し赤くなった気がしたが、たぶん気のせいだろう。あと、こいつが好きになるくらいなんだから、そりゃあイケイケ系で、ノリもよくて、イケメンで、優しいやつなんだろうな。俺からは程遠い存在だ。

「そういえば奏はそんな願望あんまり言わないよね。」
「たしかにな。」
「何で?」
「俺は現実主義だからな。」

楓の目を見て、まっすぐに言う。もちろん照れくささも少しはあるが、こいつがこういう話を持ってくるのは初めてじゃないので、慣れた。

「へー。少しは現実逃避したらいいのに。」
「してるぞ、漫画読んでいる時はな。」
「妄想とかしないの?」
「しないな。」
「それで生きていける精神が欲しいわ。」

楓はコテンとこちらに転がって、次はうつ伏せの状態になる。何年も一緒にいるので分かるが、これは「甘いもの欲しい!」のサイン。

「お菓子取ってくるわ。」

それだけ言って立ち上がり、お菓子箱の中からチョコブラウニーとクッキーを取ってまた戻る。戻った時には楓は俺のベットの上で女の子座りになっていた。

「いつもごめんね。」
「ここは俺の家だ。いいってことよ。」

たしかにお前はくつろぎすぎだとは思うが。とは死んでも言えない。たしかにこいつと遊ぶようになってから1人の時間は減ったし、楽しくない訳ではない。俺はこの時間が好きだ。

 晩ご飯は家で食べて帰るらしく、簡単に素麺を作って、食べる。5人前近く作ったのにものの10分でなくなっていた。食べ盛りとは怖いものだ。

「また明日ね。」
「おう、また明日。」

そう言って楓を見送ってから、洗い物をして、明日の用意をして、風呂に入る。そういえばお泊まり会はやったこと無かったな、なんて思いつつ、男女で泊まるのはなって自制しながら、体を洗う。湯船に浸かりながらぼーっとして、温もったら上がる。髪を乾かして寝間着に着替え、誰もいないリビングを抜けて自分の部屋へ。ベットに倒れ込むとほのかに楓の匂いがした。そこで意識が途切れた。
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