陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君

文字の大きさ
上 下
45 / 773
サマバケ

DAY8

しおりを挟む
 今日は学校ではなく、ラクタプドームに来ている。高校対抗、学校別のポイント制の大会だ。俺の出番は1日目の200mIM(個人メドレーの略)と2日目の100mFly(バタフライの略)だ。とりあえず今日の出番は昼前だから、アップは軽めにしておこう。

 試合の時のアップは基本的に自由だ。男女別でコースが別れていたり、途中から飛び込み練習のためコースを空けないといけないが、それまでは自由。アップはメインプールとその横にあるアッププールでできて、その行き来は自由。どちらも人でいっぱいで泳げそうになくなるのは目に見えているけど。

 まずはメインプールで長めの距離を落ち着いて泳ぐ。泳ぐのを許可されてからすぐのあまり人がいないときにしないと、遅れると全く泳げなくなる。まずは200mほどゆっくり泳ぐ。終わったときにはプールサイドには人がごった返していたので、俺は諦めてアッププールに向かった。

 アッププールは人こそいるものの、元々25mずつしか泳ぐ気がないので、それで十分だ。肩と足を温めてから、全種目少しずつ泳ぐ。どれも調子はまあまあ。ベストこそ出るもののそこまでのタイムは期待出来なさそうだ。

 飛び込み練習が解禁されたので、列に並ぶ。1本飛んで、ゴーグルのゴムの長さ調整をしてから2本目。ゴーグルはなんの問題もなくなって、俺はアップをやめた。

「加太、調子はどうだ?」
「イマイチですね。」
「何だそれ。でも今日は白野に勝つんだろ。」
「当たり前じゃないですか。」

顧問とそれだけ会話をして、観客席に戻る。試合まではあと2時間ほど。俺は試合を見ながら隣のピー也と話していた。

「カラオケは最終日でいいよな。」
「いいだろ。楓連れていくのは?」
「アウトだ。目の前に幼馴染を見ると俺は何をするか分からん。」
「ハハッ!ならやめとくわ。」

試合前1時間を切ったので俺はイヤホンを耳に突っ込み、音楽を聴き始める。聞いているのは昨日新しく作ったプレイリスト。夏にピッタリのサウンドがだいたい10曲で組んでいる。俺は集中力を高めていく。

 試合前30分。試合用の水着を履き始める。更衣室は使わずにスタンド裏でするのが水泳部の当たり前だ。なぜなら、試合用の水着を履く時に使うザックという布があるため、別に更衣室まで移動する必要がないから。キツめのサイズを自分で選んでいるので履くのには時間がかかる。慣れれば10秒で履けるらしいが。

 試合前15分。招集のアナウンスがあって、俺は召集所に向かう。召集所では、同じレースに出るメンバーが思い思いにストレッチしていて、誰も何も話さない。それぞれのレーン別に別れた椅子に座ってさらに集中力を高めていく。

 試合前3分。前のレースが始まって、俺はジャージを脱ぐ。メッシュキャップを被り、ゴーグルをつける。その上からシリコンキャップを被り、準備完了。最後に肩を軽く伸ばして、自分のレーンの前に行った。

 試合前1分。プールと審判に一礼をしてから、いつものルーティーン。肩甲骨を剥がして首をコキッと音を鳴らす。最後に親指で人差し指の関節を鳴らして、金木研の真似。これでスイッチオン。中学時代から何ら変わらぬルーティーン。周りの音が消えていく。

 ホイッスルが鳴ってスタート台に上がる。ドーム中が静寂に包まれる。ピッという音に反応して飛び込む。若干反応には遅れたが、まずは得意なバタフライ…のはずなのに先頭から置いていかれるのが見える。しょうがない後半勝負だな。背泳ぎは本当に苦手。とりあえず泳ぎきって平泳ぎの息継ぎの時に見えた先頭は15メートルほど先。ここで焦っても遅くなるだけだから。しっかり一つ一つの動作を丁寧にして着実に距離を詰めていく。平泳ぎのターンの時に見れば10mほどまで差が詰まっていた。最後は得意なクロール。地獄のような練習を耐え抜いた体力をフルに使って先頭に追いつくように全力で泳ぐ。1人、2人と抜いていき、ラスト1人になった時にゴールした。タッチの差で2位だった。

 白野には勝てたが、前半に課題があったレースだった。スタンドに戻ってからは応援。無声応援とは言われているが、自然と声が出ていて、試合が終わった時には声が枯れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

処理中です...