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ハジマリ

私たちは球技大会

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 試合が近づくにつれ鼓動が五月蝿くなってくる。息も切れ始め、自分が緊張しているのを感じる。奏は何か男子を集め、話している。時折歓声が上がるのを私たちは静かに見ていた。男子が散り散りになったあと、奏の視線を感じた。幼なじみだからだろうか。アイツの言いたいことは目を見れば解る。私は女子を集めた。

「男子たちは頼りないけど、必死に団結しようとしてる。私たちはしっかりリード作って、アイツらの気持ちを軽くするよ。」
『うん!』
「後で仲良い男子にでもなんか奢って貰えるよう、約束しとき!」
『うん!』
「いくよ~!」
『ソイヤ!』

アンタのやって欲しいことはやったよ、奏。黙って見ときな。

 試合開始のホイッスルと共に私がボールを投げる。相手3人にあたってそのまま外野に出た。外野は3方向、それぞれに配置している。向かって左と右の外野の紗友と一稀がフライで相手を翻弄する。たまに速いボールを挟んで少しずつ当てていく。そしてまた外野に出る。その繰り返しだ。

 うちのチームは比較的、ボール保持率が高い。そのため、内野の人数はあまり減らない。今のところ毎試合2桁は残している。今回も気づけば残り10人ほどにしていた。

 嵐の前の静けさとはこのことだろうか。比較的体格のいい子が少し前に出てくる。何も言わず、ただその存在だけを示すように。それを見た紗友がその子を狙って投げる。その子はニヤリと笑ってそれを取り、投げたのを認識したときにはもう、ボールは私の隣に転がっていた。

「ウェーイ!」

相手チームの男子の声が鳴り響く。私はそのボールを手に取り、他の子を確実に当てていく。あと半分のコールがかかった時には、コートには、もう、その子しか残っていなかった。依然、冷めることのない相手チームの熱。狙えば取られて、こちらのチームの子が当てられる。あと2分のコールがかかれば、こっちのチームはあと6人になっていた。私はその子にボールを投げる。1度弾きながらもキャッチされ、その子は私も狙ってきた。受けようとするも、ボールは左の方に抜ける。当たったなと思った時、うちのクラスから歓声が上がった。振り返ればボールを持っている桜がいる。桜はボールを外野に預けると、こっちに寄ってきた。

「後でダッツ。」
「ありがと。」
「少しは後ろも信じてくれなくちゃね。」

桜は手を上げると、外野からボールが回ってくる。桜は受け取るとそのまま足元を狙ってボールを投げる。その子は片足を上げ避けるも次のボールには間に合わなかった。試合終了のホイッスルが鳴る。私はそのまま仰向けに寝転んで、空を見上げた。体に疲れがどっと押し寄せてくる。7-0。午前中ほどでは無いものの、ソフト部がいないうちのクラスにしては優秀な成績だ。呼吸を整えると視界に手が伸びてくる。見覚えのあるゴツゴツした手、奏の手だ。私はそれに手を伸ばし、立ち上がる。そして奏の肩を叩いてこう言う。

「負けたらダッツね。」
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