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ハジマリ
俺の初回授業③
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昼休みの始まりを合図する、4時間目の終わりのチャイムが鳴る。普通ならここで仲のいい友達と昼食を食べるのだが、今日だけは違った。
「起立、気をつけ、礼。」
「「「お願いします。」」」
今日の他のどの授業よりも大きい号令がかかる。俺は教壇に立って静かになるのを待った。
「約束通り教えてやるが、俺も腹減ってるからな。ついてこいよ。」
俺がそう言うと「はい!」と大きな返事が返ってくる。それを聞いて話し始めた。
「1つ注意がある。初心者が作詞するのに重要なのは、技術よりも感覚だ。あくまで個人の意見だがな。まず、こんな感じで机を叩いてみる。」
俺は右手の人差し指と中指をテキトーにバラバラに動かして、パターンを作った。
「今叩いた音は基礎になる。この音を頭で再生しながら、鼻歌を歌ってみる。」
ふふふふーんとメロディを作っていく。バックのギターやベースもできないから、これは想像で補う。
「で、今できたのはこんな感じだ。」
そして俺は黒板に歌詞を書き始めた。
––春を
問いかけて 問いかけてるんだ
真っ白い問題用紙の上
あられもない戯言を書き連ねてはかき消して
僕は
追いかけて 追いかけてるんだ
標もない地図を広げ
間違った青い正解を正す
A.答えは知らない––
そして俺はこれを指しながら教え始める。
「最初は韻とか考えんくていい。俺も今パッと考えたヤツだから上手くないけど、なんとなくでもこんな感じで形になんねん。」
「先生、どうしてもアイディアが出て来なかったらどうしたらいいですか?」
女子が1人立ち上がった。えと、こんなやついたっけ。
「ん~そうやな。好きな人のこと考えるとか。」
冗談まじりでそう答えた。そこら中で「おお~」と声が上がる。一方その女子はボンと音を立てて顔を赤くしている。青いな。
「一言で言うと、作詞は慣れもある。来週までに納得いくまで書いてみたら、いいものができるんじゃねぇか。他、質問あったら直接来てくれ。んじゃ終わり。」
「気をつけ、礼。」
「「「ありがとうございました。」」」
10分ほど遅れた昼休みが始まる。それぞれ食堂に行ったり、机をくっつけたりして楽しいランチタイムをしている。俺は窓際のいつもの席で弁当を開いた。ただそうしているだけなのに、自然と人が集まってくるのはなぜだろう。モテ期きたかな?
「来てないよ。本当は音羽の周りに集まりたいけどQが動かないから。」
海南さんエスパーかよ。
「Qってさ、多分天才だよな。」
「分かる。」
「だね。」
「右どー。」
おいおい、そんな褒めても何も出ねぇぞ。嬉しいけど。
「あ、あの…。」
声をかけられた方向を見ると、見たことのある女子が立っていた。確か入学式のときに1人でいた女子だ。最近こういう雰囲気の人から話しかけることが少なかったので、自分を指差して確認するとこくりと頷いた。
「えっと、私のこと覚えてる?」
「えっ。」
作詩のことだと思っていたので、予想だにしない質問に頭がショートしそうになっていた。すると彼女は恥ずかしそうに丸眼鏡を外した。切り揃えた髪の隙間から見えた目には見覚えがあった。
「もしかして…きい、か?」
「何で気づかなかったのよ、ひい君。」
他の4人は俺に知り合いがいたことに驚いて「えぇ~!」と叫んでいた。
よし、あとで殴ろう。加太くんだけ。
「起立、気をつけ、礼。」
「「「お願いします。」」」
今日の他のどの授業よりも大きい号令がかかる。俺は教壇に立って静かになるのを待った。
「約束通り教えてやるが、俺も腹減ってるからな。ついてこいよ。」
俺がそう言うと「はい!」と大きな返事が返ってくる。それを聞いて話し始めた。
「1つ注意がある。初心者が作詞するのに重要なのは、技術よりも感覚だ。あくまで個人の意見だがな。まず、こんな感じで机を叩いてみる。」
俺は右手の人差し指と中指をテキトーにバラバラに動かして、パターンを作った。
「今叩いた音は基礎になる。この音を頭で再生しながら、鼻歌を歌ってみる。」
ふふふふーんとメロディを作っていく。バックのギターやベースもできないから、これは想像で補う。
「で、今できたのはこんな感じだ。」
そして俺は黒板に歌詞を書き始めた。
––春を
問いかけて 問いかけてるんだ
真っ白い問題用紙の上
あられもない戯言を書き連ねてはかき消して
僕は
追いかけて 追いかけてるんだ
標もない地図を広げ
間違った青い正解を正す
A.答えは知らない––
そして俺はこれを指しながら教え始める。
「最初は韻とか考えんくていい。俺も今パッと考えたヤツだから上手くないけど、なんとなくでもこんな感じで形になんねん。」
「先生、どうしてもアイディアが出て来なかったらどうしたらいいですか?」
女子が1人立ち上がった。えと、こんなやついたっけ。
「ん~そうやな。好きな人のこと考えるとか。」
冗談まじりでそう答えた。そこら中で「おお~」と声が上がる。一方その女子はボンと音を立てて顔を赤くしている。青いな。
「一言で言うと、作詞は慣れもある。来週までに納得いくまで書いてみたら、いいものができるんじゃねぇか。他、質問あったら直接来てくれ。んじゃ終わり。」
「気をつけ、礼。」
「「「ありがとうございました。」」」
10分ほど遅れた昼休みが始まる。それぞれ食堂に行ったり、机をくっつけたりして楽しいランチタイムをしている。俺は窓際のいつもの席で弁当を開いた。ただそうしているだけなのに、自然と人が集まってくるのはなぜだろう。モテ期きたかな?
「来てないよ。本当は音羽の周りに集まりたいけどQが動かないから。」
海南さんエスパーかよ。
「Qってさ、多分天才だよな。」
「分かる。」
「だね。」
「右どー。」
おいおい、そんな褒めても何も出ねぇぞ。嬉しいけど。
「あ、あの…。」
声をかけられた方向を見ると、見たことのある女子が立っていた。確か入学式のときに1人でいた女子だ。最近こういう雰囲気の人から話しかけることが少なかったので、自分を指差して確認するとこくりと頷いた。
「えっと、私のこと覚えてる?」
「えっ。」
作詩のことだと思っていたので、予想だにしない質問に頭がショートしそうになっていた。すると彼女は恥ずかしそうに丸眼鏡を外した。切り揃えた髪の隙間から見えた目には見覚えがあった。
「もしかして…きい、か?」
「何で気づかなかったのよ、ひい君。」
他の4人は俺に知り合いがいたことに驚いて「えぇ~!」と叫んでいた。
よし、あとで殴ろう。加太くんだけ。
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