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ハジマリ

俺たちは入学式③

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 画面に映ったのは、あの有田さんだった。

「どしたん?」
「ちょっとお願いがあるんですが…」

何だろうと思い、彼女をよく見るとさっきと同じ制服だ。とりあえず中に入れることにした。

「ごめんね、中散らかってて。」
「こっちこそごめんね。急に押しかけて。」

何甘酸っぱい空気になってるのと杏がジト目で睨んでくる。

「クソ兄、私出掛けてくるから。くれぐれも間違いはないようにね、くれぐれも。」

杏はプンプン怒りながらドアをバタンと閉めた。部屋が静かになる。俺は彼女から醸し出される柑橘系の匂いに侵されそうになっていた。首を横に振って自我を保つ。

「んで何があったの?」

何も隠さないド直球な質問を投げかける。それでも彼女は落ち着いた様子で答え始める。

「帰ったら、うちのアパートが燃えてた。」
「Oh…」

反射的に英語で答えてしまった。

「だから泊めてってことだけど。」
「他の人には相談したの?」
「ううん。みんな遊んでるから、帰り遅くなるだろうって思って。」

あらやだ、こっち側の人間だったのと手を合わせそうになるが、グッと堪える。あと聞き捨てならない言葉言ったよね。なんで俺が遊びに行かないと思ったのかな?まぁ実際そうだけど。

「だって由良君、友達居ないでしょ。」

この一言で俺のHPは1になってしまった。本当なら血を吐いてピクピクするところだか、そんなだらしない姿は見せられない。

「泊まってけば?家見つかるまでならいいよ。」

俺は精一杯のカウンターをかまそうとするが、これがなんと不発。彼女はありがとうと微笑んだ後、テレビに視線を移した。俺のHPは0になった。

 しばらくはニュースを見ていたが、飽きたのか、某ぶっ飛ばし系ゲームをやろうと言ってきた。まあ勿論やるわけだか、そこに座るのはズルくないか?肩と肩が触れそうになる距離に座った彼女は、呑気に鼻歌を歌っている。途中結果は10戦してイーブン11戦目のキャラ選びのときに俺のスマホが鳴った。杏からだ。『晩御飯はいらないよ。』とのこと。俺は『おけ。あと有田さん、うちで居候することになったから服貸していい?』
と返す。すぐに既読がつき、『いいよ。何か事情があるんでしょ。』と返ってきた。俺は時計を見る。もう6時だ。

「有田さん、次でラストにしようか。晩御飯作らないと。」
「うん、分かった!負けないぞぉ。」

足をパタパタさせる彼女はとても可愛かった。

  試合はどうだったかって?勿論勝ったさ。
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