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第一章 こんにちは異世界
転移成功! ……失敗?
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フェイトさんの転生は無事に成功した。
天界のような庭園は消え、薄れた意識も戻ってくる。
ただ、転生は成功したはずなのに目の前が暗いままだ。
「――ここは?」
ズボンのポケットからスマホを取り出し、電源を入れる。
起動を待ってから懐中電灯モードにして、足元を照らした。
ゴツゴツとした岩肌。
周囲に光を向けても、同じような質感の壁や天井が目に入る。
どうやらここは洞窟のような空間みたいだ。
――ジリリリリリリリ‼
「うわっ!」
いきなり鳴り出した着信音に、思わずスマホを落としそうになる。
手から滑り落ちそうになったスマホを何とか握り直し、誰からの着信なのか画面を見ると――
「フェイトさん?」
発信者の名前が【フェイト】になっていた。
急いで受話器のマークをタップして、スマホを耳元に近づける。
『もしもし? 聞こえるかい、幸助くん』
「聞こえます、フェイトさん」
ついさっき別れたばかりなのに、とても懐かしく感じる声がスマホから流れる。
ここがどこかも分からない状況だからだろう。
フェイトさんの声を聞くと、無性に安心することができた。
『転生は無事に成功したみたいだね!』
「はい。ですけど、ここがどこか分からなくて」
『そう思って、キミのスマホを色々とアップデートしておいたよ! 名付けて【グリモア】!」
「グリモア、ですか?」
「それには限定的なファンタジアの【世界の記憶】に対するアクセス権限があるから、周囲の地図を確認することができるよ。それと、覚えた魔法を記録したり、魔法行使の時の媒体としても使えるからね。あと、充電は電気の代わりに精神力……MPでできるようにしてあるから! ただ、ちょっと張り切り過ぎて神器レベルのアイテムになっちゃったから、無くさないように注意してね?』
怒涛の勢いで説明をするフェイトさん。
正直、言っている内容の一割も理解していないけれど……知らない内に俺のスマホが凄いことになっていることは分かった。
今の説明で分からなかったことは【ヘルプ】の機能で調べられるということなので、後でゆっくり見ることにする。
『最後に、キミの【アイテムボックス】の中にボクが作った身分証なんかも入れておいたからね!』
「何から何までありがとうございます」
『いいよいいよ。それじゃ、頑張ってね!』
通話が切れ、画面がホームに戻る。
多くのアプリが消えてしまって、随分とシンプルな画面だ。
フェイトさんの言っていた「周囲の地図を確認できるアプリ」というのは、この巻物のアイコンで表示されている【地図】のアプリのことだろう。
他にも、アイテムを調べることができると思われる虫眼鏡のアイコンの【検索】のアプリや、魔法関連に使うであろう杖のアイコンの【魔法】のアプリもある。
それと、デフォルトの機能である【カメラ】や【メモ】、【時計】なんかのアプリもあった。
……あれ?
もしかして――
「アドレスがある……」
【電話】のアプリを開き、さらに電話帳を開いてみる。
今までに登録してあったアドレスはすべて消えていたけれど、1つだけ、フェイトさんのアドレスが登録されていた。
――ピコン!
「うわっ⁉」
軽快な着信音と共にバーナーが下がり、メールが届いたことを知らせてくれる。
送り主は――
「……フェイトさん?」
すぐに画面をタップして、メールを開封する。
『
フェイト〈fate-kamisama@Fantasia.ha〉
宛先:薄井 幸助
件名:転生おめでとう!
これからのファンタジアでの生活、頑張ってね!
キミに幸あれ!
P.S.
何か困ったことがあったら電話でもメールでもくれていいからね?
こっちの都合もあるから、すぐには返信できないかもだけど、時間があれば返信するからさ!
』
このメールを消してしまわないように、クリップで留める。
フェイトさんにはお世話になったし、今度何かお供え物をしようと心に決める。
そのためにも、この世界での生活基盤を整えなければ。
まずはここがどこなのかを調べよう。
何か行動を起こすにしても、現在地が分からなければ始まらない。
そもそも、周囲の景色が岩しかない。
さっそく【地図】のアプリをタップして起動する。
アプリは少しのロードを終えた後、周囲の地図を表示した。
――入り組んだ通路
拡大しようと操作するも、自分を中心に半径1キロメートルほどの範囲を表示したところで、途端に処理が重くなった。
それにしても、広い洞窟だ。
一体どこなんだ?
画面を長押しして現在地を表示させる。
『超高難度ダンジョン【絶望の虚】』
天界のような庭園は消え、薄れた意識も戻ってくる。
ただ、転生は成功したはずなのに目の前が暗いままだ。
「――ここは?」
ズボンのポケットからスマホを取り出し、電源を入れる。
起動を待ってから懐中電灯モードにして、足元を照らした。
ゴツゴツとした岩肌。
周囲に光を向けても、同じような質感の壁や天井が目に入る。
どうやらここは洞窟のような空間みたいだ。
――ジリリリリリリリ‼
「うわっ!」
いきなり鳴り出した着信音に、思わずスマホを落としそうになる。
手から滑り落ちそうになったスマホを何とか握り直し、誰からの着信なのか画面を見ると――
「フェイトさん?」
発信者の名前が【フェイト】になっていた。
急いで受話器のマークをタップして、スマホを耳元に近づける。
『もしもし? 聞こえるかい、幸助くん』
「聞こえます、フェイトさん」
ついさっき別れたばかりなのに、とても懐かしく感じる声がスマホから流れる。
ここがどこかも分からない状況だからだろう。
フェイトさんの声を聞くと、無性に安心することができた。
『転生は無事に成功したみたいだね!』
「はい。ですけど、ここがどこか分からなくて」
『そう思って、キミのスマホを色々とアップデートしておいたよ! 名付けて【グリモア】!」
「グリモア、ですか?」
「それには限定的なファンタジアの【世界の記憶】に対するアクセス権限があるから、周囲の地図を確認することができるよ。それと、覚えた魔法を記録したり、魔法行使の時の媒体としても使えるからね。あと、充電は電気の代わりに精神力……MPでできるようにしてあるから! ただ、ちょっと張り切り過ぎて神器レベルのアイテムになっちゃったから、無くさないように注意してね?』
怒涛の勢いで説明をするフェイトさん。
正直、言っている内容の一割も理解していないけれど……知らない内に俺のスマホが凄いことになっていることは分かった。
今の説明で分からなかったことは【ヘルプ】の機能で調べられるということなので、後でゆっくり見ることにする。
『最後に、キミの【アイテムボックス】の中にボクが作った身分証なんかも入れておいたからね!』
「何から何までありがとうございます」
『いいよいいよ。それじゃ、頑張ってね!』
通話が切れ、画面がホームに戻る。
多くのアプリが消えてしまって、随分とシンプルな画面だ。
フェイトさんの言っていた「周囲の地図を確認できるアプリ」というのは、この巻物のアイコンで表示されている【地図】のアプリのことだろう。
他にも、アイテムを調べることができると思われる虫眼鏡のアイコンの【検索】のアプリや、魔法関連に使うであろう杖のアイコンの【魔法】のアプリもある。
それと、デフォルトの機能である【カメラ】や【メモ】、【時計】なんかのアプリもあった。
……あれ?
もしかして――
「アドレスがある……」
【電話】のアプリを開き、さらに電話帳を開いてみる。
今までに登録してあったアドレスはすべて消えていたけれど、1つだけ、フェイトさんのアドレスが登録されていた。
――ピコン!
「うわっ⁉」
軽快な着信音と共にバーナーが下がり、メールが届いたことを知らせてくれる。
送り主は――
「……フェイトさん?」
すぐに画面をタップして、メールを開封する。
『
フェイト〈fate-kamisama@Fantasia.ha〉
宛先:薄井 幸助
件名:転生おめでとう!
これからのファンタジアでの生活、頑張ってね!
キミに幸あれ!
P.S.
何か困ったことがあったら電話でもメールでもくれていいからね?
こっちの都合もあるから、すぐには返信できないかもだけど、時間があれば返信するからさ!
』
このメールを消してしまわないように、クリップで留める。
フェイトさんにはお世話になったし、今度何かお供え物をしようと心に決める。
そのためにも、この世界での生活基盤を整えなければ。
まずはここがどこなのかを調べよう。
何か行動を起こすにしても、現在地が分からなければ始まらない。
そもそも、周囲の景色が岩しかない。
さっそく【地図】のアプリをタップして起動する。
アプリは少しのロードを終えた後、周囲の地図を表示した。
――入り組んだ通路
拡大しようと操作するも、自分を中心に半径1キロメートルほどの範囲を表示したところで、途端に処理が重くなった。
それにしても、広い洞窟だ。
一体どこなんだ?
画面を長押しして現在地を表示させる。
『超高難度ダンジョン【絶望の虚】』
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