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第六機

記録と記憶

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 食堂での別れる直前――水瀬の言葉。

「彼女は知っている。おそらく、だけどね」

 篤はハッキリとしない物言いに水瀬に尋ねる。

「ツバキが何を知っているんですか?」

 無人になった食堂に佇む二人。第三者からしてみれば異様な光景ともいえるその状況で白衣のポケットに手を入れながら水瀬は答える。

「今回、彼女の体を治している際だ。一見損傷の少ない状態で軽傷だが、実際中を見てみれば酷いことになっていた。相当無茶をしたんだろう。重要な部分を除いてほとんどのパーツを取り換えるほどにね……。本来、外を損傷することで内もそれに応じて、損傷する。例外があるとすれば、劣化か冷却液の問題だ。彼女に至ってはもう一つ存在する」

「ギア……。でもツバキには記憶がないはずじゃ」

「確かに記憶というより、記録がない。キミだって知っているはずだ。機械人形にはなるものはない。あるのはと蓄積された経験からなるだ。だが、それは頭の固い研究者、技術者による固定概念だ。キミには伏せていたが、キミが命を落とす寸前だったあの天災の日にキミを助けた機械人形。主を失った機械人形は自ら動くことはない。それにもかかわらず津波の中からキミを救った。色々調べたが、これだと断言できる答えを導き出すことはできなかった。だが私は思っていたことがあった。それまで考えることもしなかったが、彼女は自らの意思で動いたのだと……それは人のように心を持っていたのだと……。何かツバキちゃんに心を芽生えさせた出来事があったはずだ。その何かと関連があったからこそ、ではなくとして、組織に消されたはずのギアの存在を覚え続けているのだろう……。だから彼女は危機があればギアを使おうとするだろう……ツバキちゃんにギアをあまり使わせないように。そうでないと、前も教えたからわかっているだろ。まぁそうゆうことだ。引き留めてすまなかったね」

 ――――
 ――。
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