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第五機

同時暴走事件 《東エリア――中央部第二発電施設》 1

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 建物を出た篤は外の状況を見て立ち止まり、息を飲んだ。

「どうなって……いるんだ」

 海上都市のあちらこちらで大規模な火災が起きていた。海からの風に煽られ火の勢いは増すばかりだ。風に乗って灰が舞、焦げた臭いと熱気が襲う。逃げ惑う人々の表情は恐怖に塗り固められている。地獄のような世界に涙すら出ない。

「篤さん!! 私に支持をください。火災を何とかしないと、まだそこまで広がっていません。どうしたらいいですか!?」

 その時、携帯端末が振動して着信を告げる。篤は画面を一切見ることなく耳に当てる。

「こちら……三守」

『篤くん!! 良かった……つながった。私、穂摘。報告するから聞いて。今、暴走していた機械人形をすべて止めることができたの。ただ、戦闘の影響で発電施設が火災になっているの。早いところ消火活動を始めたいんだけど、車両は通れないし、ヘリでは水量が全く足りないの。篤くん? ねぇ、聞いてる?』

 全く相槌のない篤を不思議に思い穂摘は話を中断して問う。

「あぁ、悪い。少し考え事をしてた。それで、そっちで対策は考案済みか?」

『考案どころの話じゃないのよ。暴走事件に対処にあたっていた多くのペアが戦闘続行不能で、本部もばたばた』

「すべてのペアがあたっていたわけじゃないだろ? それなら増援を」

『そうしたいのはやまやまなんだけど、こっちの死守も必要だから……上の人たちは頭が固いから……。現にさっき施設に侵入しようとした機械人形がいたから尚更よ。都市を守らずして何が機甲警察よ!! だから、いま動けるのは篤くん達と十ペア位。でも、合流に時間が掛かりすぎるの』

「要するに、一番近いのは俺達ってことか? 冗談きついぞ……。取り敢えず施設に向かう。対策案はそっちで何とか考えてくれ」

『それにしてもどうして篤くんのヘッドセットに連絡ができないの?』

「さっき戦闘中に壊したみたいだ。これから別のを使う。コード教えるからそっちにかけなおしてくれ」

 篤はコードを教えながらバイク状態を手早く確認して、跨る。それに続いてツバキもまたがってヘルメットをかぶる。通話の終了した端末をポケットにしまい、エンジンをかける。

『篤くん……聞こえる?』

 替えのヘッドセットから穂摘の声が聞こえてきた。

「よく聞こえる」

 人の波を逆らって篤は炎の元へとバイクを走らせた。
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