ログボしかとってないクソゲーに転移したので無双しようと思います

名無し@無名

文字の大きさ
上 下
2 / 6

諦めも肝心

しおりを挟む
 
『いやだから、この舞台になってるゲームは「エタニティ・ラスト・テイルズ」では無く「ヘコヘコクエスト」です』
「……は?」
『そうです、ヘコヘコクエストです』

 何故かドヤる妖精。
 頭の中の整理が追いつかない中、妖精が口にする訳の分からないゲームについて言及した。

「知らない、アタイそんなゲーム知らない」
『またまたぁ。よく言いますよ、毎日プレイしてくれてるクセにぃ』

 いやいや、何かの間違いだろう。
 だって俺がまともにプレイしているのなんてエタニティ・ラスト・テイルズくらいだぞ? 寧ろそれ以外のゲームに裂く時間など有りはしない。

『じゃあそのスマホ見て下さいよ。そこにちゃんと有りますから』
「……そうだスマホ!」

 今はゲームの世界に転移しているけど、なんとも都合よくスマホを持ったままだ。助けて文明の力、Goog◯eなら何とかしてくれないか!?

「……おん?」

 おかしいぞ。画面上では普段は有るはずの充電とアンテナのアイコンが消えている。まるでバッテリーや電波の概念が消え失せた様にだ。
 なるほど、やはりゲームの世界だからこそ電力や電波を気にするなという訳だ。周りに電柱なんて立っていない。
 ふむ、ファンタジーな世界ならリアリティなんて野望ってもんだ。
 順応速度としては中々だと自負しつつスマホの画面をスクロールしてみた。一番目の画面にはエタニティ・ラスト・テイルズが存在している。
 出来るなら俺はこのゲームの世界に行きたかった。今からでも何とかならないだろうか。
 しかし、妖精は希望的観測をブチ壊す様に『人間諦めが肝心ですよ』と2つ隣の画面にスクロールしろと言ってきた。
 渋々だが言われた通りにすると、そこに有るのはダウンロードしたけどプレイしていないログボを回収するだけの放置ゲー達が羅列されていた。

「ああ、石だけ回収してるゲームだわコレ」

 自分で言うのもアレだが、どうにも律儀な性分らしくダウンロードしたゲームのログインは毎日欠かさない。
 いつか手の平返した様に人気が出るかも知れない。だったら石は回収しておいて損はないだろう。一縷の望みが俺にそうさせてきたのだ。
 結果的にスマホの容量を圧迫しただけに留まってしまったが、そんな有象無象のゲーム達の中に、このクソゲーは確かに存在した。

「ヘコヘコクエスト……これか!?」

 大体のゲームアイコンは可愛い女の子キャラやメインモンスターになっているだろう。しかしこのゲームのアイコンはどう見ても『男性用トイレのマーク』である。
 パッと見でゲームなのかも分からないだろう。近場のトイレを探すアプリと言われた方が納得できる。
 そそられない、圧倒的にそそられない。
 そもそもどんなゲームなのかも思い出せない、何故ダウンロードしたのかも謎だ。

『いやーしかし、ウチの社長も思い切りましたよねぇ。「我が社のゲームを愛して下さる皆様に最高のサプライズをプレゼントしよう」っていきなり言い出したんですよ。それでユーザーの皆さまの、その精神のみを現実世界から抜き取りゲームの世界に転移って凄くないですか? 昨今の科学技術でも不可能なレベルの事を、多額の費用を投じて実現させたのですから』
「……おい待て、じゃあ俺は今、精神だけ引っこ抜かれてゲームの世界に来ているって事でいいのか? なら現実での俺の身体は!? と言うか時間軸とかどうなるんだよ!?」
『はい? まぁリアルでは時間は経過し続けていますね。そんで精神を抜かれた方々は漏れなく「アヘ顔ダブルピース」をしたまま意識不明となるそうです。そのアヘ顔なんちゃらが何の意味かは私には分かり兼ねますが』
「最悪じゃないか!!」

 終わった、マジで終わった。
 なんだよアヘ顔ダブルピースで意識不明って。それなら寧ろ殺してくれよ。俺の両親はそれを見てどう思う? 部屋を開けたら息子がアヘ顔で倒れてんだぞ?

『切り替えましょ♪』
「切り替えられっかよ、どんなメンタルお化けだよ」

 しかしこのゲームを作った社長がとんでもないサイコ野郎だと言うのは確信した。
 ともなれば、この先に待つのは不安と恐怖以外の何者でもないだろう。

『まぁこうなった以上、津田さんもこの世界を楽しみましょうよ。ゲーム上のアバターの能力や所持品は、全て津田さんのステータスとして反映されますから』
「……そんな気になれるかよ」
『まま、そう言わずに。ログイン勢だったら貯まってるんじゃないですか?』
「あん?」
『“石”ですよ石! みんな大好きなヤツです』
「石? ……あー、ガチャする為のか」

 それを聞いて少しだけ興味が湧いた。ガチャと言う甘美なワードは、どんな絶望的な状況でもユーザーの脳を溶かすらしい。
 だがしかし、とりあえずガチャは置いといて俺は俺自身のステータスを確認する事にした。

「おい妖精、俺のステはどこで見れる?」
『ステータスですか? ええとまずはスマホのヘコヘコクエストをタップして下さい。この世界ではスマホのアプリ上で自身の情報を見る事が出来ます。ガチャとか装備も同じですね。因みに、他のアプリは存在こそしますが起動できませんのであしからず』
「ほうほう」

 妖精に言われた通りにアプリを起動する。すると、俺のステータスや装備品を弄る画面が出てきた。

 ▪️名前:あなたさらな
 ▪️ランク:6
 ▪️装備
 武器:プラチナダガー『S』Level.4
 頭:胴の兜『N』
 胴:布の服『N』
 腕:ただの籠手『N』
 腰:ベルト『N』
 足:くつした『N』
 ▪️アバター装備
 頭:無し
 胴:津田のダサいシャツ
 腕:無し
 腰:無し
 足:津田のダサいパンツ
 ▪️紹介文
『よろしくお願いします!』
 ▪️フレンド
『0人』

 うん、見事にチュートリアルのみをクリアした状態だ。
 ガチャは自分の装備を引く仕様らしく、お情け程度に始めのガチャで少しレアなのが出ている。
 通常の装備と異なり見た目用のアバター用の装備もあるのか。意外と細かい所を補完しているなクソゲーのクセに。
 それよりなんだよ【津田のダサいシリーズ】って。悪意たっぷりに私服をディスって来やがる。
 服の趣味は良くないがダサくはないぞ?

『いえ、客観的に見て津田さんはダサいです。津ダサいさんです』
「羽むしるぞクソ妖精が」

 当然、リセマラなどしていないので出たモノをそのまま装備していると言った所だろう。キャラの名前も適当に決めたまま、なんとなく分かってきたぞ。
 なら、僕の今すべき事は見えた。

「己の強化……祭りの時間だ!!」

 そう、みんな大好きガチャである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神々に育てられた人の子は最強です

Solar
ファンタジー
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。 その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん 坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。 何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。 その赤ん坊はすくすく育ち地上の学校に行った。 そして十八歳になった時、高校生の修学旅行に行く際異世界に召喚された。 その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無双するお話です 初めてですので余り期待しないでください。 小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました

竹桜
ファンタジー
 いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。  だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。  そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。  これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

処理中です...