55 / 55
降参
6
しおりを挟む「…実はね、僕にも好きな人がいるんだぁ、その人ね、昔にΩがわざと発情期にその人の所に行って無理矢理番になろうとする事が何度かあったらしくて、Ωが嫌いなんだーー。結局はその人が抑制剤もってたからなにもならなかったんだけど…」
それはよく聞く話しでもある。
Ωは仕事を見つけるのも一苦労で抑制剤も高い。
愛人でもいいからαに囲ってもらおうとする者は今だ多い。
そういう人たちのせいでΩはそういうものだという認識が広まってしまう。
「……それは、また、」
好きな人が自分の性別を嫌いというのは辛すぎる。
性格や見た目なら変えられたかもしれないが、性別はどう頑張っても変えられない。
「…まぁ、ね。でも、高校の間に絶対好きになってもらうんだ!その為に克也に頼んで転校させて貰ったからね!!頑張らないと!」
結衣は凄い。裕也のことを強いと言ったがどう考えても結衣の方が強い。
その人の為に転校するなんてよっぽどだ。
「…強いな…」
「フフッ、僕も強くないよ。そう見せてるだけだよ。一緒に頑張ろうね」
結衣は少し悲しそうにするが裕也に笑いかける。
辛さは比べるものじゃないが、裕也は克也の側にいられるし幸せなんだと実感する。
「このこと、今まで暁斗と克也しか知らないしあの二人は人の話しとか興味ないからこうやって話せる人が出来て嬉しい!」
「…僕もアドバイスとかは出来ないけどしんどい時はいつでも言ってくれ、何処にでも行く」
「うん!その代わり、裕也くんもだよ!少しの不安でも人に言えば楽になる事もあるしね!」
ありがたい。結衣には感謝しかない。
人と関わらないと決めていた裕也だったが、克也を通じて色んな人と出会えて良かった。
「着きました」
運転がうますぎて止まっていた事に気づかなかった。
「一日ありがとうございました」
運転手にお礼を言うと一瞬ビックリした顔をするも少し笑いお辞儀される。
間宮も当然のようにお抱えの運転手がいるが裕也はこういうのには慣れてないので申し訳なさが残る。
「結衣も。楽しかった、今日」
「良かった!!僕も!また行こうね!」
「ああ、またな」
結衣は寮に戻らないのかもう一度車に戻った。
裕也は走り出した車ににお辞儀をして寮に帰る。
部屋に戻り息を吐く。
楽しかったが放課後遊びに行くのは凄く疲れる。
睡魔が襲ってくるので急いでシャワーを浴びベットに横になるとすぐに瞼が落ちてくる。
その時、顔の横に置いていた携帯が鳴り、目をこじ開け出る。
『おかえり』
「………ただいまぁ。」
眠すぎて頭が回らず半分は夢の中に落ちながら何とか口を動かす。
『結衣とのデートは楽しかったか?』
「……、うん、たのしかった、」
『そ』
「でも、つぎは、克也といきたいなぁ…」
克也が何かを言う前にずっと胸の中にあった事が口から出る。
最近、美味しいものを食べた時、楽しい事があった時、須藤に教えたくなったり分かち合って一緒にしたい気持ちが湧いてくる。
常に一緒にいたいと言ってるみたいだが、そういう訳でもない。
それにしても、頭が回らない。ボワッと頭の中に白く霧がかかったみたいに考えがまとまらない。
『…そうだ、俺とももっと過ごすべきだ。』
「フフッ、寂しいんだ?」
『……そうじゃない。足りてないだけだ。』
「だから寂しいんでしょ?僕も会いたいよ、」
いつもは思っていても恥ずかしくて言えない事も眠いからなのか言えてしまう。
「克也に会いたいよ…、」
『……今から行く。』
プツリと切られた電話に切られちゃったな、と寂しく思いながらもかろうじて繋いでいた意識も持たず眠ってしまう。
「……んん、?」
ぼんやりと意識が浮上してくるとあるはずもない匂いと体温が裕也にピッタリくっついている。
(なんで、克也がここに…?)
結衣と遊んで帰ってきてすぐ寝た、よな。
思い返してみても分からないのでこれは起きてから聞こうと今を楽しむ事にする。
いつもは自分から寄って行くのも一苦労だが克也は今眠っているので自由だ。
ビッタリくっついている胸の当たりに顔をスリスリして匂いを堪能する。
「いい、におい、」
どれだけ匂っていても飽きることなく裕也を満たす香り。
スーハーと鼻息が聞こえるくらい強く匂っているとさすがに起きたのか克也の手が裕也の髪をとく。
「朝から盛ってんのか?」
「…なっ!違いますよ!!」
「…じゃ、煽ってんのか?」
「…違うってば!!それよりなんでここにいんの!」
克也は不機嫌そうに眉を寄せ目を細める。
「お前が会いたいって言ったんだろう」
裕也は考えてみても思いつかずハテナしか浮かばないのが顔に出ていたのか更に眉間に力が入る。
「はぁ…、そんな事だろうと思った。珍しく素直に会いたいって言うから来てみれば気持ち良さそうに熟睡してるし…」
「ええ!僕が会いたいって言ったんですか?そしてなんで鍵が開くんだ!」
「……、生徒会長だからな」
自分が会いたい、と言っただって?
克也がどれだけ忙しいか知っているつもりだ。
邪魔にだけはなりたくなくてどれだけ寂しくても自分からは言わないと決めていたのに。
うーん、と唸り昨夜の事を考えているとなんとなく電話していた気もしてくる。恐らくその時ポロリと言ってしまったのだろう。
「…はぁ、すみません。遅い時間だったのに」
せっかく会えたのに眠っていたなんて勿体なさすぎる。
33
お気に入りに追加
1,806
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、



【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭

僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
うん?立ったまま活躍の胸で涙を流す。?
最高にイイ!無自覚なαの執着具合とΩ君の可愛さ!なんだか甘々になってきましたね〜。ニヤニヤしちゃう!
これからも無理せず執筆してくださいませ
エブリスタで読ませて頂いてました。
最初お名前が違っていたのでわからなかったのですが
こちらを読ませて頂きわかりました。