運命の番から逃げたいです 【αとΩの攻防戦】

降参

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もう無理かもしれない。
克也の事を好きだと気づいてもうすぐ一ヶ月がたつ。
克也がどんなに態度や言葉で示してくれても完全に受け入れるのは怖くて決定的な返事は避け続けてきた。

大切にして貰っている。
先週祝ってもらった誕生日。
本当に幸せな一日だった。
誰かに祝って貰える日がくると思っていなかった、それも自分が好きになった人に。

朝起きて誕生日を祝われた時素直に喜べなかった。
生まれてこなければよかった、そう毎年一番実感させられる日だったから。

育ての母はこの日はいつも以上に裕也を罵倒しこき使い、暴力を振るう。
一週間前からこの日の事を考えると食事量が減り睡眠出来なくなった。

それは間宮の家を出た今でも変わらなかった。
あの家から離れさえすれば少しは間宮から切り離されると思っていたのにそんな簡単なことじゃないらしい。

でも、克也はそんな僕の不安を一蹴した。
あの、αの中でもトップのαである克也が自分の言う事をなんでも聞くと言ったときは本当に驚きしかなかった。

初めて尽くしの一日は、僕の一番の幸せになった。思い出すだけで胸が温かくなって目に膜がはる。

そっと首元に手をやるとそこにあるのはあの日もらったチョーカーだ。
今までつけていた国から支給された安っぽいものではなく、肌に馴染む紺の生地、そしていくらかかっているのかダイヤが散りばめられているオーダーメイドのこの世に一つしかないモノ。

これを開けられるのは克也だけだと言われた時、戸惑いや驚きもなく歓喜した。

「もう少しだけ待ってやるよ」
チョーカーをつけて貰った時に耳元で言われた言葉。
「フフッ、つけた後に須藤さんの指紋でしか開かない事を言うなんて…計画犯だな…」
その束縛が裕也を安心させてくれる。
　
本当は今すぐにでも克也のモノになってしまいたい。
克也に項を噛んでもらえたらどんなに幸せか。

でもまず、克也に素直に自分の気持ちを言わなきゃならない。
そして自分自身の問題が解決してからでないと駄目だ。

今まで好きだ、と克也に何度言われても返す言葉はお礼だけだった。
何度も言いかけたがこれを言って克也に捨てられたらという気持ちが捨てきれず口に出来なかった。

でももう無理だ。
捨てられてもいい、捨てられてしまっても今、今だけでも克也の唯一になれるのなら。
克也にいつか裏切られた時死にたくなるだろう。
死ねば良い、克也が居なくなった時には僕の死を悲しむ人はいないし生きる意味もない。

重いと思う。
でも裕也にとって誰かを受け入れるにはこれくらいの覚悟がないと無理なのだ。