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誕生日
克也side
しおりを挟む「……ここはっ……」
「フフッ、須藤さんのイメージとは合いませんね!」
裕也は少年のように楽しそうに笑う。
朝ごはんが終わり都心に連れてこられブラブラした後来たのは猫カフェだった。
別に嫌いではない、はずだ。動物と触れ合う機会など今まで無かった。
「また須藤さんの初めて頂いちゃいました?」
猫に自分が囲まれる絵を想像すると寒気がするが裕也が余りにも楽しそうなので克也も嬉しくなる。
「そうだな。電車に乗ったのも初めてだ」
そこについては克也は嫌だったので嫌味っぽく言ってやる。
何処にでも連れていけるように架純を門に呼ぼうとすると止められ電車で行くと言われた。
拒否すると自分と二人でいたくないのか、と上目遣いで見られてしまえば拒否する気持ちもなくなってしまった。
生まれて初めての電車は切符は買えないし、改札は通れなくて周りの人に笑われてしまうし散々だった。
人から自分が可笑しくて笑われるのは初めてで恥ずかしくてイラッとしかけたが裕也が笑うのでまぁいいか、と怒りもすぐに収まってしまった。
「改札通れなくてワタワタしている須藤さん、可愛かったですよ」
裕也がクスクス笑いながら克也に言う。
「……言うな。初めてだったんだからしょうがないだろ!お前が俺をほったらかしにして先に入るから…」
恨めしそうに裕也を見るとより一層笑い出す。
「高校三年生にもなって改札通れないとは思わなかったんですって…!フフッ、動画撮っておきたかった!!」
裕也にここぞとばかりにイジられてしまう。
怒りたい所だが嬉しそうするので裕也が楽しいなら恥ずかしい思いをしたかいがあったと思ってしまう自分は分かってはいたが相当裕也に溺れてる。
「……、この話は終わりだ!入るんだろ?早く行くぞ」
自分から話し出したものの須藤の嫌味など物ともせずイジられるので早く終わらせるしかなくなった。
「なんでちょっと後ろにいるんです?怖いんですか?」
今日は朝からこの顔をよくする、イタズラ小僧のニヤニヤした顔だ。
「……そうじゃない。行きたいのはお前だろ。早く入れ」
裕也はクスクス笑いながらドアを開け、店員に会釈をして質問に答えると席に通される。
「ほら、遊んでこい!」
「須藤さんは?行かないんです?」
「……俺はここから見てる…」
クスクス笑いながら猫が沢山いる所に歩いていく。
ここは席の近くまではこず自分から行くスタイルのようだ。ありがたい。
裕也が座ると猫が沢山寄っていく。
それに優しい顔で撫でている裕也を見ているのがなんともいい。
今日は本当に色んな表情をしてくれる。
今の表情を引き出しているのが猫どもだと思うと憎らしくもあるが裕也にそんな表情をさせたことに感謝も生まれる。
「須藤さーん!!」
2匹の仔猫を抱えて裕也が寄ってくる。
テーブルには猫を連れてこられないのでギリギリの所で克也に見せてくる。
「可愛いですよねー!!」
ニッコリ笑いながら見せてくるが正直猫などどうでもいい。可愛い、デレデレしながら自分の猫でもないのに自慢げに猫を掲げる裕也が可愛すぎる。
「ああ、最高に可愛いな」
何が、とは言わず裕也の目を真っ直ぐ見て告げると猫のことでは無いと伝わったのか真っ赤になって走って逃げていく。
(ああ、可愛い。これは俺の、俺だけのモノだ)
閉じ込めてしまいたい。
誰の目にも触れさせず一日中自分の事だけを考えていればいい。
でも、自分と戦いながら前を向き歩んでいる裕也だからこそ好きになったし、それは閉じ込めてしまえば失われてしまう。
たとえ失っても手放す事は毛頭ないが。
嬉しそうに手をふる裕也。
可哀想だな、とつくづく思う。
やっと間宮から少し距離を置けたのに自分みたいなのに捕まってしまって。
それでもこの世界で裕也を一番大切に思っているのは自分だ。
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