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困惑

克也side

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自分の腕の中で温かいものがもそもそと動き目が覚めたので目を向けると銀色のふわふわな髪の毛があり驚いた。
どういうことか理解できないでいると腕の中からくぐもった声がする。

「起きたんですか…」
「なんで一緒に寝てるんだ?」
「………はぁ…須藤さんに引っ張り込まれたんですよ!!寝たっぽかったので自分の部屋に帰ろうとしたら手を引かれて腕の中に閉じ込められて出れなって気づけば寝てしまってました…」
「……それはなんというかすまない」
「それより熱はどうですか?」
「下がった」
確かめるために裕也は手のひらを克也のおデコに持ってくるとホッとした顔になり手を下ろす。

「今何時ですか?」
「夜中の四時だな」
「……あぁ……朝までいていいですか」
「勿論だ」
寮は門限の二十三時から朝の六時半まで全部屋鍵がかかるようになっているのでこの時間に帰ることが出来ない。

それにしても誰かが自分の部屋にいるのは変な感じだ。
朝までそばに裕也がいると思うと口角が上がってしまう。

「なに笑ってるんですか!!!」
「お前がいると思うと嬉しくてな」
「っ!またそういうことを言って!」
「ククっ…」
「もう一度寝てください、さっきまで熱があったんですから…僕はソファー借ります」
裕也がベットから降りようとするので肩を掴み倒しそのまま捕まえる。

「なっ!」
「ここで寝ろ」
「嫌ですよ!」
「嫌とか言うな、熱があった奴をほったらかしていくのか?」
「もう下がってます」
「……しんどくなってきた……頭が痛い気もする」
「…子供ですか」
「いいだろ、今日くらい」

裕也は苦笑いすると諦めたのか抜け出そうと入っていた力を抜き脱力すると克也から距離をとるように寝返りをうち背を向けた。
克也は裕也を抱き寄せ腕の中に抱き裕也の首元に顔を埋め匂いを堪能する。

「くすぐったい!!!」
「いい匂いがする」
首元にスリスリしているとクスクスと笑い声が聞こえる。

「いつもの生徒会長と違いすぎて誰か分かりませんね」
「嫌いか?」
「いや、今の方が僕は好きです」
「……もっかい言え」
「何を?」
「今の」
「今の方が僕はすき、ぐぇ…苦しい!」
思わず聞けた好きと言う言葉に抱きしめていた腕に力が入ってしまう。

かわいい、好きだ、絶対誰にも渡さない。

「今日は学校行くんですか?」 
「行くよ」
「無理しないほうがいいんじゃ…。」
「心配してくれてるのか?でも生徒会の仕事もたまるしな」

この学校は生徒会の権限が強い分仕事の量が半端じゃない。
その代わり授業に出なくて良かったり他の人より広い部屋に住むことが出来る。

「学年首位をキープしながらあの生徒会の仕事をこなすなんてちゃんと寝てます?」
「まぁな。勉強はやらなくても出来るし」
「うっわー……今大多数の学生を敵にまわしましたよ」
裕也が自分はさも勉強出来ません、みたいな感じを出してるけど本当はこの学校でもトップになれるくらい賢いのは知っている。

「俺に付き合って学校早退させたんだ、昨日の欠席はどうにかしておく」
「いいんですか?ありがとうございます!もう一つ頼みたいんですけど今日1限始まるまでいていいですか?」 
「いいけどどうした?」
「その時間なら寮に人いないんで」

裕也は素顔がバレてしまうのは本当に嫌らしい、変装していてもどちらでも好きだが自分だけが裕也の素顔を知っているのは嬉しい。

裕也のそばにいるといい匂いがして眠くなってくる。

「須藤さん?寝ました?」
裕也に身体にまわしていた手に手が重ねられ握られる。
「貴方のお陰で最近は楽しいです、ありがとう」

そんな声が聞こえ笑みが漏れるも眠気に耐えられず意識が落ちた。





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