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困惑
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しおりを挟む「須藤さん、熱ありません?」
「……。ない」
「いや、ありますよ!!!」
昼休み、いつものように旧図書室に来ると克也に引っ張られ膝の上に乗せられたのだがいつもより体温が高い気がした。
それに目元が少し赤くて目も少し潤んでいる。
「しんどくない」
「ちょっと待っててください」
裕也は膝から降りて急いで自分の教室に向かいカバンから体温計を出す。
旧図書室に帰ってくると克也は机に突っ伏していた。
「須藤さん!!!」
「……大丈夫だ」
「測ってください」
克也のネクタイを外し無理矢理脇に挟ませる。
「……帰ってください。38度8分もありますよ!!なんで気づかないんですか!」
「嫌だ。しんどくない」
「しんどくない訳ないでしょう!」
「まだ帰りたくない」
「子供みたいに駄々こねないで!」
克也は目線を下に落としてブスっとしている。こんな顔をする克也は初めて見る。
「昼休みしか会えないのに帰るなんていやだ」
「…なっ!にいってるんですか…」
「だから昼休みは学校にいる」
「…はぁっ………」
「いいだろ、それくらい」
ボッーとしているしグッタリしているのに一人で帰らせるのも心配だしついていったほうがいいかもしれない。
こんな体調が悪いならどうせ一緒にいてもなにも出来ない。
「じゃあ、昼休み終わったら部屋まで送ります。今は人が多くて貴方と外は歩けないし」
「……ほんとに?」
「ええ。だから後少し頑張ってください」
「……ちょっとそこに座って正座して」
「は?」
「いいから…熱でしんどいから早く」
はぁ、とため息をつき裕也は言われたとおりに座ると、克也はズルズルと椅子から降りてきて裕也の膝に頭を乗せ両手を腰に巻きつけてくる。
どうやら我が校の生徒会長様は熱が出ると甘えたくなるらしい。
膝の上に頭がある為手持ち無沙汰になったので頭を撫でてみると克也はビクッとした後安心したように力を抜き目を閉じる。
少しして寝息が聞こえてきた。
「寝てしまった…」
寝るのはいいがここで寝られるのは困る。
部屋まで頑張ってほしかった…。
せっかく寝れたのに起こすのも気が引ける。
こうやって間近で見ると本当に整っているなとまじまじと克也の顔を見てしまう。
こんなに無防備な克也は初めて見る。
学校では人当たりのいい笑みを浮かべてはいるが自分の中には決して入らせていないようにしていたように感じた。
自分といて誰かが安心してくれるというのは自分が必要だと言われてるみたいでくすぐったい気持ちになる。
前より克也の存在が裕也の内側で大きくなってきているのは自分でわかる、でもそれを認めてしまうのが怖い。
また裏切られるかもしれない、とどうしても考えてしまう。
少しボッーとして考えているとチャイムが鳴りハッとする。
せっかく寝たのだからそのまま寝させておきたいがこんな所で寝ていると風邪が悪化してしまうので揺すって起こす。
「須藤さん!起きて!部屋で寝ましょう!」
「…………。嫌だ」
「…は…駄々こねないでくださいってば!」
「だって部屋に帰ったらお前、帰るんだろ?ならまだこうしてたい」
「はっあーーー、ワガママですか!いいから行きますよ!」
裕也はくっついてきた克也を無理矢理剥がして立ち上がる。
「今帰らないのならついていきませんよ」
「……、行こう」
「初めからそうしてくださいよ…」
須藤は熱が上がったのか立ち上がりはするがふらついているので須藤の腕を肩に促し歩けるように手伝う。
「…おもいっ…」
「悪い」
「行きますよ」
克也の部屋を目指して歩く。
なんでも出来て完璧な克也のこんな姿を見られるのは悪くない…。
こんな克也を知っているのはこの学校の中じゃ自分だけだと思うと嬉しくなって思わず笑みが溢れる。
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