運命の番から逃げたいです 【αとΩの攻防戦】

円みやび

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「………、いやです!!!」
「なっ!!」


なぜ僕が助けないといけないのだろう。
こいつらに今更復讐してやろうなんて思っちゃいない。

でも克也がやってくれた事でこれから裕也に関わる気を失ってくれたのならわざわざ助ける意味もない。

「僕が助けてって言ったとき君たちが笑いながらなんて言ったか覚えてる?僕はね、一語一句覚えている。そんな僕に助けて貰おうなんて虫がよすぎるんじゃない?」
「…それ…はっ!」
二人は悔しそうに顔を歪めながら裕也を見上げる。

「もういいだろ?裕也、行くぞ」
克也はそう言ってもう一度裕也の手を引く。
この場にこれ以上いる理由はないので裕也も素直についていく。

「くそやろう!!!!αに寄生するしか能のないクソΩが!!おまえが幸せになんてなれると思うなよ!!!ぜってぇこの写真バラまいてやるからな!!!」

寄生するしか能のないΩか。
そうはなりたくないが当たってもいるのかもしれない。克也にこれだけ助けて貰った訳だし。

言われた言葉が心に残り一瞬裕也の足が止まるといつもより数段低い克也の声がした。

「黙れ」
克也が振り返ろうとするがそれを裕也が止め手を引っ張った。
早くこの場所から離れたかった。
まだ裕也に対する暴言が聞こえてくるがあの二人に何を言われてももう大丈夫な気がした。

「帰るぞ」
「せっかく来たのにっ」
「またくればいい」
「……うんっ…」

気持ちがごちゃごちゃして我慢出来なくなり涙が溢れてくる。

まさか自分があいつらに対してあんな態度をとれる日が来るとは思わなかった。 
二人のあの様子を見ると裕也ともう関わろうとはしないだろう。

少しは過去を乗り越えられただろうか。
もしそうなら須藤のおかげだ。
ひとりなら乗り越えるどころかまたオモチャに成り下がって終わっていたかもしれない。

「すど、さ…っ…」
「ん?」
「ゔっ…、…ありがとゔぅ……。っ、グスっ…」

子供みたいに涙がボロボロ出てきてしゃっくりを上げて泣いてしまう。
そんな裕也を見て通りすがりの人たちが何事かと振り返り注目するがそんなことを気にする余裕もない。

繋がれている手に力がこめられ後ろからあいている手で頭を強めに撫でられる。
「よく頑張ったな」
びっくりする程優しい声がして心がホッとなり収まりつつあった涙がまた溢れてくる。

「…ゔぅ…、そんな優しい声出せたんですねっ……!!」
「ふっ、いつもの調子が出てきたな」

嫌なこともあったが今日は遊びに出てきて良かった。
過去を少し精算出来たし、行きたかった場所にも行けて克也とも仲良くなれたと思う。





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