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本性
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しおりを挟む本の世界から引き戻されたことに不機嫌さを隠さないで須藤に話しかける。
「須藤さん?なにか僕にご用ですか?」
「お前…何度も呼んでるんだが」
「すみません、本を読むと周りが見えなくなるもので。それで?」
「………」
須藤は口角を上げる。
うっわ、この人めちゃめちゃ悪そうな顔してるよ。
いつもの嘘っぽさ全開の笑顔はどこにいったのだ。
「如月……お前、俺の運命の番だよな?俺と付き合え」
「…………?は?」
いやいや、こいつなんて言った?あり得ない言葉が聞こえたんだが。
「すみません、ちょっと意味がよくわかりません。」
「だから、お前は俺と付き合うんだ」
「ごめんなさい、無理です。あり得ません」
理解が追いつかない。
僕は関わらないでくれと伝える予定だったのがなぜ付き合うという話しになっているんだ?
「拒否権なんかあると思ってるのか?」
「当然あるでしょう。逆になぜ無いんです?」
付き合うのが当然とかどういう思考回路してるんだ?
「俺はタダ働きはしない主義なんだ。昨日助けたの忘れたのか?」
「それはありがたいと思っています!!でもっ!それが何故付き合うという話になるんですかっ!!」
「助けたお礼に俺がそれを望むから。」
「無理です。僕は、関わらないでくれと貴方に話すつもりだったんですから」
「よく考えろよ?あの時俺がドアの前に立っていなかったらお前はどうなってた訳?」
そんなこと言われなくともよく分かっている。間違いなく犯されていただろう。
だからといって、代償がでかすぎないか?
「僕は目立ちたくないんです。貴方と付き合うことになったら全校生徒から注目の的じゃないですか。なにか別の形でお礼しますから…」
「そんなに目立ちたくない訳?じゃあ付き合わないなら教室で話しかける」
「…………」
「ついでに俺と運命の番だと皆に言うか。いいのか?」
「いいわけないだろっ!!!」
あり得ないことを言われすぎて思わず叫んでしまう。
「如月、付き合うよな?」
いやいや、無理だろ。
僕は誰とも関わりたくないんだよ。
特に須藤みたいな目立つやつは。
でも断れば教室で話しかける上に運命の番だと言うだと?クソっ、選択肢なんてないじゃないか。
「付き合えばいいんだろっ!!!!」
「わかればいいんだ。わかれば」
ムカついて須藤を投げ飛ばしそうになるのをフッーと息を吐き気持ちを落ち着かせた。
「その代わり、周りに人がいる時は話しかけない事。付き合っていることは誰にも話さないこと、約束してください」
「……いいよ、分かった。その代わり俺の言う事はなんでも聞けよ」
「……は?」
「さっきも言ったろ?タダ働きはしない主義だって、」
最低だ。なんてやつと運命なんだ。
僕がいったい何をしたんだよ。
須藤と番たいやつなんて山ほどいるのに何故僕なんかを選んだんだ。
神様の馬鹿。
「クソ野郎」
「褒め言葉をどーも」
誰だよ?
須藤を優しい天使だと、言ったやつは。
天使どころか人間でもない。悪魔じゃないか。
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