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接触

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特になにもなく時間がたって今は四限になった。
今のところ須藤が誰かを探してるような噂も様子もない。
状況的に気が緩みそうだが、まだ油断するには早い。

チャイムが鳴ると急いで教科書をしまい、旧図書室に早歩きで向かう。
朝は須藤のことでいっぱいだった頭の中も半分は読みかけの本のことになっていた。

旧図書室に無事にたどり着き周りを見渡すがいつも通り特に人がいる様子もない。

「ふっー、やっと少し息ができる」
朝からずっと周りを気にして警戒するの精神的にも肉体的にもずっしり疲れる。

読みかけの本を探し、窓の近くにある椅子に座る。
ここは裕也のお気に入りの場所だ。 
窓を開ければ適度に入る日の光に入る暖かい風。
とにかく落ち着く。

入学式の日迷ってたどり着いたのが旧図書室だがあの日迷ってよかったと思えるほど過ごしやすかった。
マスクと眼鏡をとると自然と体から力が抜ける。

昔のことがあり裕也は殆どご飯を食べない。
死なない程度に補給しているだけ。
今日ずっと緊張状態だったこともあり栄養補食品ですら食べれる気がしないので本を読み始める。
 
裕也にとって本は今の大嫌いな息苦しい世界から自分の好きな世界に行く大切な時間だ。
その為、初めは須藤の事を頭に置いていたが十分もすればもう須藤ことなど頭から完全に消えていた。

読み始めて三十分たった時、ハッとした。
あの甘い甘い香りがする。本に集中しすぎて気づくのが遅かった。
前と比べ物にならないほどの強い匂い。
これ程まで匂うほど近い距離にいるのに気づかなかった自分にチッと舌打ちした。

心臓が音が漏れそうなほどドクドクなっていて、頭の中も溶けそうだ。
消え入りそうな理性で急いで眼鏡とマスクをつけた。
周りを見渡してみるが誰もいない。
しかし匂いは消えない。
本人の姿が見えないから迷ったが念の為、抑制剤を打つ。

「はぁっ…はっ…」
息はあがってきているが抑制剤も時期に効くだろう。

間違いなくここに須藤がいるのにどこにいるか分からくてキョロキョロしていると急に匂いが強くなり振り返った。


そこには、人をバカにするような笑みを浮かべ立っている須藤がいた。
「お前だな」

裕也はパニックになる。
見つかった。
一日も逃げ切れず見つかってしまった。
ありえない。どうしたらいいんだ。

「なんのこと?」
無理だろうと分かってはいるが誤魔化されてくれと願いながら苦し紛れに言う。
「クッ、こんないい匂いをさせながら誤魔化すのか?馬鹿か。誤魔化される訳ないだろ」
呆れた顔をしながら馬鹿にされる。

どうする?と必死に考えているが須藤からの匂いが強すぎて薬を打ったにも関わらず心臓が早くなり頭が溶ける感じがする。 

頭が回らない。考えが纏まらない。体があつい…。
発情期はまだもう少し先のはずが運命という力のせいか完全にヒートに入ってしまう。

体がαを求めて、目の前にいる須藤に触って欲しくて頭はそればかりになる。
後ろの穴はトロトロと濡れてくるし性器も硬くなりはじめる。

それでも、どうしても負けるのは嫌で微かに残っている理性で唇を噛み痛みで気を紛らわそうとするが効果は薄い。
もうどうしようもない。
須藤はニヤニヤしながら理性と戦う裕也を見ている。
「触ってやろうか?」
そう聞かれ思わず触ってくれと頼みたくなる。

だがどうしても嫌だ。
最後の力を振り絞り自分の手の甲を全力で噛む。
血が出るが気にならず、噛み続け須藤を睨んでいると須藤が焦りだした。

「おいおい、そんなに嫌か」
当たり前だ。なんで喋ったこともない奴とセックスしないとならないんだ。
「頼む。離れ、て」
須藤が側にいる限りどんな薬を打っていても効かない。
もう理性も持たない。
腕を噛んでいる力も抜けてきた。

「はぁ…俺の優しさに感謝しろ」
須藤はそう言うと離れてくれる。
須藤が見えなくなりホッとするが今までの発情期とは別格で自分の全てがαである須藤を、運命を欲しているのがわかる。

駄目だと分かってはいるが普段使っている錠剤の方の抑制剤も口に入れ噛み砕く。

薬を打っていたからこそ微かに理性を残す事が出来たがもしなかったら、と考えただけで泣きたくなった。

とりあえずこの体の熱をどうにかしたい。
全身に力がはいらない為、棚にもたれ、ひきずるようにしてトイレを目指す。




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