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しおりを挟む綺麗に手入れされた庭を眺めながらメロンを食べている優一を見て隅さんは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「優一くんはいい子だねぇ」
優しく細めた目で誰を見ているのか、優一は知っている。
ここの人たちは皆、優一に優しいがそれは自分の息子や孫を重ねているからだ。
近くにいたら本当は一緒にしたいことを優一にしてくれている。
「そんなことないよ…」
優一が手伝ったりするのは善意からなんかじゃない。
こういうことをしたら周りから必要としてもらえるだろうと打算的な考えで行動しているだけだ。
「あ、そうだ。このメロン、四つ注文来てたよ。もっと増えてるかもだけど」
前回山を降りた時に確認したからもしかするともっと売れているかもしれない。
売り切れもあり得るので早めにもう一度確認しに行かないといけない。
正樹が運用してくれているSNSのおかげでこの町の農作物が広まりつつある。
味はもちろんのこと、作っている姿や丁寧な作業の動画が好印象を与えているみたいだ。
「そうかい。ありがたいねぇ」
隅さんの作る果物は絶品だ。
旦那さんがいた頃は高級料理店などに卸していたらしい。
しかし、隅さん一人では作れる数も少なく今は趣味の範囲でしか作っていない。
少ない分、希少価値が高くいい値段でも売れる。
隅さんは高い値段で売れていることよりも誰かが喜んでくれていることが嬉しいそうだ。
「箱に詰めるの手伝うよ」
「ありがとうねぇ」
隅さんの家の前にある畑に二人で行き、メロンを見ていく。
「これは?」
「うーん」
隅さんに指示を仰ぎながら一番美味しい状態のものを四つ収穫する。
収穫したメロンを家に運ぶ終えると優一はTシャツの色が変わるほど汗をかいていた。
まだ六月とはいえ晴れている日のお昼は暑い。
「隅さんメモもつけるよね?」
「そうだね」
隅さんメモとはメロンの美味しいアレンジの仕方を直筆で隅さんが書いたものだ。
購入者への感謝の思いが込められた一枚のメモは隅さんらしい丁寧な字で書かれている。
購入者からお礼のメッセージが返送されてくるほど喜ばれている。
収穫したのなら早めに届いたほうがいいので今日、山を降りて発送しに行くことにした。
正樹が帰ってきたら車を借りないといけない。
「また後で回収しにくるね」
「ありがとうねぇ」
正樹に連絡をとる為に電話が繋がるところまで行くのに早めに越したことはないだろうと隅さんの家を後にして家に向かった。
汗をビッショリかいていたのでシャワーを浴びたいがすぐに歩くのなら意味ないだろうと考えて服を着替えるだけにする。
「今日はピーマンの肉詰めはやめて下で食べるか」
もしかしたら正樹も一緒に行くと言いだすかもしれない。
いや、なにかよっぽどの用事がない限りついてくるだろう。
一人より二人の方が楽しいし正樹とご飯を食べるのが好きだ。
正樹が一緒に来てくれるのを期待すると楽しみになってくる。
買っておくものややることをメモして携帯を握り締めると電波を求めて家を出た。
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