婚約者は俺にだけ冷たい

円みやび

文字の大きさ
上 下
11 / 34
2

6

しおりを挟む



目が覚めたが学校に人の気配がないので寝過ぎたかもしれないと時間を見た。
「十四時!?」
今日は終業式だけだったので十一時半頃にはもう生徒が帰りだしていたはずだ。

保健室にも何人か出入りしただろうに気づけないほど深く眠ってしまっていた。

保健室に行くとは言ったがこんなに長くいるつもりは無かったので困ったことになっているかもしれないと急いで保健室から出た。

やっぱり廊下にも教室にも人は誰一人といない。
冬休みに入る奏多を見れるのは今日だけだったのに終業式の間しか見れなかったと肩を落とした。

職員室に行くと校舎内とは違いほとんどの教師が残って仕事をしている。
「体調はどうですか?」
隣から声がして顔を向けると保険医の安斎がいた。
無愛想で無駄なことは口にしない男から声がかかったことに驚いてまじまじと見てしまう。

「赤谷先生から体調が悪いから起こさないでやってほしいと頼まれていたんですよ。私が帰る時まで寝ているようでしたら車でお送りしようと思っていたんですが……」
奏多を上から下までじっくり見ると頷いた。

「その必要はなさそうですね」
と言うとお礼も言っていないのに職員室を出て行ってしまった。
この時間まで寝ることが出来たのは安斎が保健室に来た生徒に静かにさせていたのかもしれない。
ゆっくり寝れたからか気持ち悪かったのは無くなっている。

和弘にもお礼を言わなければ、と周りを見渡したがいない。
机を見ると荷物はまだあるようなので校舎内にはいるのだろう。

そのうち戻ってくるだろうと溜まっている仕事を片付ける。

手を動かしながらも頭の中は奏多と和泉のことにしめられていた。
いつから?何回くらいしたのだろう。
あの二人は番になるのだろうか。
そうなると奏多から優一に婚約解消を告げられるのだろう。

奏多が婚約解消を優一や理事長に言ったことは一度もない。
もしかしたら優一が知らないところで理事長にお願いしているのかもしれないがそうなると理事長はこれ幸いとすぐに解消してしまうだろう。

奏多から婚約解消を言われることはないと優一はどこかで思ってしまっていたのかもしれない。
別れを告げるのは自分だと勘違いしていたのだ。
奏多の卒業式までは時間があるように考えていたがそれまでに奏多が誰かと番ってしまえばその瞬間、優一との婚約は解消となるだろう。

それとも優一はキープ的な存在だったのかもしれない。
Ωと違ってαは何人もの番を持つことが出来る。

「どうしよう」

奏多と和泉が何度も発情期を共にしているのなら二人が番になるのは時間の問題だろう。

奏多の口から二人の関係の終わらす決定的なことが言われた時、優一は耐えられない。

しかし、優一にはどうすることも出来ない。
奏多に和泉と番にならないでくれ、と頼むことも自分だけを愛してくれとこれから先は一緒にいたいと告げることが出来ない。

もうすぐ奏多と優一のズルズルと続いた関係も終わるのだ。

そう思った時、これ以上悪あがきをせずにすむのかもしれないとどこかでホッとした自分を慌てて追い出し、大きなため息をついた。





しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

巣作りΩと優しいα

伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。 そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

運命の番から逃げたいです 【αとΩの攻防戦】

円みやび
BL
【αとΩの攻防戦】 オメガバースもの ある過去から人が信じられず、とにかく目立ちたくないがないために本来の姿を隠している祐也(Ω)と外面完璧なとにかく目立つ生徒会長須藤(α)が出会い運命の番だということがわかる。 はじめは暇つぶしがてら遊ぼうと思っていた須藤だったが、だんたん遊びにできなくなっていく。 表紙は柾さんに書いていただきました! エブリスタで過去投稿していた物を少しだけ修正しつつ投稿しています。 初めての作品だった為、拙い部分が多いとおもいますがどうか暖かい目で見てください。 モッテモテの自信ありまくりの俺様が追いかけるというのが好きでできた作品です。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...