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第一章 双星(小型浸透怪獣ギラル 突撃衝角怪獣ザンダ 近接火砲怪獣ガンガル 登場)
降臨~あるいは理不尽な展開に苦しめられるのであればそれ以上の理不尽をぶつけても許されるとは思う~
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「兄さん……!」
自分の兄の乗ったミニパトが爆炎に包まれるのを見て勇はうめき声を上げた。
勇が乗っている巨大ロボットは起動するとコクピットの全面がモニターに変わるようで、今は360度どの方向を見ても透明な球体の中にいるように周囲の光景が映し出されている。
しかも勇が視線を向けるのに合わせて画面をズームしたり、複数のサブウィンドウが自動で現れて勇が見たいと思った方向の景色を的確に表示してくれるのだ。
そんなサブウィンドウの一つに、ズームされて炎上するミニパトが映し出されていた。
「翔さん……が。私が、あんな事を言ったせいで……ごめん……ごめんなさい、勇君……」
シートの後ろで雪奈が、ごめんなさい、と連呼しながら泣いている。
あの兄が、死んだのか。どんな事でも勇よりも上手くこなし、それを鼻に掛ける事も無く、いつだって優しく勇の失敗を笑ってフォローしてくれ、自分を導いて来てくれたあの兄が。
「……雪奈さん、お願いだから、今は泣かないで」
唇を噛み締め、力一杯レバーを握り締めると、勇は視線を正面の怪獣の方へと向けた。
嘆いている暇は無かった。
兄が新しい怪獣の気を引いてくれている内に目の前の怪獣を相手には優勢に戦いを進めていたが、それでもまだ動きを止め切れてはいない。
「今は、兄さんが作ってくれたチャンスを生かして、まずこいつを倒さないと……!」
拳を握り締め、連打を放つ。
「行け……スターブレイバー!」
Star braver
このロボットが起動した時、読み方すら分からない様々な文字で大量の単語がモニターの前面に流れたが、その中で最後に表示され、そして唯一読む事が出来たのが英語で表示されたその言葉だった。
それらが全てこの巨大ロボットの名前で、搭乗者が理解出来るように数多の言語でそれを表示しているのだろう、と言うのは何となく分かった。
新しい方の怪獣が動きを止めたミニパトから興味を失ったように頭を下げる。あれが再びこちらに向かってくる前に何とかして一体は倒しておかなければならない。
兄が命を賭して稼いでくれた時間を、無駄にする訳には行かない。
その一心で勇は必死に初めて乗る機体を操り、怪獣へと攻撃を重ねた。
だが。
「えっ?」
新しい怪獣はスターブレイバーともう一匹の怪獣との戦いを無視し、まるでそれが勇と雪奈が守りたいものだと分かっているかのように、住宅地へ、そして病院の方へと歩を進める。
「しまっ……待て!」
食い下がって来る目の前に相手に対して肘を打って引きはがすと、勇はスターブレイバーをそちらへと走らせた。
新しい怪獣はその動きをあざ笑うかのように一瞬こちらを見ると、病院に向けて鋏を広げ、火球を放つ。
「やめてえっ!」
雪奈の悲痛な悲鳴が響く。
止められない。防ぎようもない。そして自分から新しい怪獣へと近づいてしまったせいで、兄が稼いでくれた時間も無下にしてしまった。
このまま何も守れないまま終わるのか。こんな巨大ロボットに乗っていると言うのに自分には何も出来ないのか。
勇もまた自分の無力さに絶叫を上げようとした時―――
その場に、もう一人の救世主は現れた。
爆発炎上したミニパト。そこを中心にするように無数の小さな金色の光が浮かび上がり、渦を作る。
そしてその光が連なってまるで金の鎖のようになると、空中をすべるようにガンガルの前に立ち塞がり、人の形を作る。
その人の形を取った光は両手を頭の上にかざし、左右に広げて膝を付きながら地面までのラインを引いた。そのラインが光の壁を作り、ガンガルの放った火球を弾き返す。
そしてその光の壁が消えると同時に人の形をした光も次第に実体を持って行く。
全長はやはり四十メートル近く。
スターブレイバーと同じく人に近いシルエットだが、筋骨隆々とした拳闘士を連想させるスターブレイバーと比べると、よりスマートで、全身は有機的な物と金属的な装甲のような質感の物が入り混じっている。
装甲部分は白、そして有機的な部分は赤と青のトリコロールで鮮やかに彩られた巨人がそこに立っていた。
「怪獣……じゃない。巨人……」
「街を……春奈を守ってくれた……?」
唖然として唐突に現れた新たな巨影を見やる勇と雪奈に対して、その巨人はまるで、自分は味方だ、と伝えるようにサムズアップのサインを送る。
こちらに向けられたその奇妙な顔には、人間らしさなど全く無かったが、それでもそのレンズのような瞳を見つめていると、何故か不思議と安心するような、心が和むような、そんな気持ちになった。
そして勇躍、と言う表現がぴったりの勢いで、その巨人――銀河超人コスモマンはガンガルへと立ち向かって行った。
自分の兄の乗ったミニパトが爆炎に包まれるのを見て勇はうめき声を上げた。
勇が乗っている巨大ロボットは起動するとコクピットの全面がモニターに変わるようで、今は360度どの方向を見ても透明な球体の中にいるように周囲の光景が映し出されている。
しかも勇が視線を向けるのに合わせて画面をズームしたり、複数のサブウィンドウが自動で現れて勇が見たいと思った方向の景色を的確に表示してくれるのだ。
そんなサブウィンドウの一つに、ズームされて炎上するミニパトが映し出されていた。
「翔さん……が。私が、あんな事を言ったせいで……ごめん……ごめんなさい、勇君……」
シートの後ろで雪奈が、ごめんなさい、と連呼しながら泣いている。
あの兄が、死んだのか。どんな事でも勇よりも上手くこなし、それを鼻に掛ける事も無く、いつだって優しく勇の失敗を笑ってフォローしてくれ、自分を導いて来てくれたあの兄が。
「……雪奈さん、お願いだから、今は泣かないで」
唇を噛み締め、力一杯レバーを握り締めると、勇は視線を正面の怪獣の方へと向けた。
嘆いている暇は無かった。
兄が新しい怪獣の気を引いてくれている内に目の前の怪獣を相手には優勢に戦いを進めていたが、それでもまだ動きを止め切れてはいない。
「今は、兄さんが作ってくれたチャンスを生かして、まずこいつを倒さないと……!」
拳を握り締め、連打を放つ。
「行け……スターブレイバー!」
Star braver
このロボットが起動した時、読み方すら分からない様々な文字で大量の単語がモニターの前面に流れたが、その中で最後に表示され、そして唯一読む事が出来たのが英語で表示されたその言葉だった。
それらが全てこの巨大ロボットの名前で、搭乗者が理解出来るように数多の言語でそれを表示しているのだろう、と言うのは何となく分かった。
新しい方の怪獣が動きを止めたミニパトから興味を失ったように頭を下げる。あれが再びこちらに向かってくる前に何とかして一体は倒しておかなければならない。
兄が命を賭して稼いでくれた時間を、無駄にする訳には行かない。
その一心で勇は必死に初めて乗る機体を操り、怪獣へと攻撃を重ねた。
だが。
「えっ?」
新しい怪獣はスターブレイバーともう一匹の怪獣との戦いを無視し、まるでそれが勇と雪奈が守りたいものだと分かっているかのように、住宅地へ、そして病院の方へと歩を進める。
「しまっ……待て!」
食い下がって来る目の前に相手に対して肘を打って引きはがすと、勇はスターブレイバーをそちらへと走らせた。
新しい怪獣はその動きをあざ笑うかのように一瞬こちらを見ると、病院に向けて鋏を広げ、火球を放つ。
「やめてえっ!」
雪奈の悲痛な悲鳴が響く。
止められない。防ぎようもない。そして自分から新しい怪獣へと近づいてしまったせいで、兄が稼いでくれた時間も無下にしてしまった。
このまま何も守れないまま終わるのか。こんな巨大ロボットに乗っていると言うのに自分には何も出来ないのか。
勇もまた自分の無力さに絶叫を上げようとした時―――
その場に、もう一人の救世主は現れた。
爆発炎上したミニパト。そこを中心にするように無数の小さな金色の光が浮かび上がり、渦を作る。
そしてその光が連なってまるで金の鎖のようになると、空中をすべるようにガンガルの前に立ち塞がり、人の形を作る。
その人の形を取った光は両手を頭の上にかざし、左右に広げて膝を付きながら地面までのラインを引いた。そのラインが光の壁を作り、ガンガルの放った火球を弾き返す。
そしてその光の壁が消えると同時に人の形をした光も次第に実体を持って行く。
全長はやはり四十メートル近く。
スターブレイバーと同じく人に近いシルエットだが、筋骨隆々とした拳闘士を連想させるスターブレイバーと比べると、よりスマートで、全身は有機的な物と金属的な装甲のような質感の物が入り混じっている。
装甲部分は白、そして有機的な部分は赤と青のトリコロールで鮮やかに彩られた巨人がそこに立っていた。
「怪獣……じゃない。巨人……」
「街を……春奈を守ってくれた……?」
唖然として唐突に現れた新たな巨影を見やる勇と雪奈に対して、その巨人はまるで、自分は味方だ、と伝えるようにサムズアップのサインを送る。
こちらに向けられたその奇妙な顔には、人間らしさなど全く無かったが、それでもそのレンズのような瞳を見つめていると、何故か不思議と安心するような、心が和むような、そんな気持ちになった。
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