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エクストラチャプター:フィロウ

テラー・オブ・ボーダー・フリー

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再誕歴7701年フェブラリー9日。

マーナガルム男爵邸。
執務室でマーナガルムがルー・O・スィーバを呼び出した。

「仕事だ」
「おー、 本当リアリーですか?」
「あぁ、 簡単な仕事だ、 クリュネフ医学のリネって言う麻薬の運び屋ブッシャーやってる先公が
薬をちょろまかしている、 薬の回収とその教授にヤキ入れてやれ」
半殺しハーフオア全殺しオール?」
「見た目派手に、 だが日常生活に支障が無い程度にボコれ」
甘いスイート、 何時から優しくカインドなりました?」
「重要な情報は渡してないし大した量の薬もねぇ
逮捕されパクられても俺達には何の問題も無い
年取ってるから今更出世も望めないし金が欲しけりゃ俺達に協力するしかねぇ
三流学校だが教授、 何かの役に立つだろう」
「OK、 じゃ行って来ますレッツゴー

執務室から去っていくルー。

「・・・・・あの喋り方ウザいわぁ・・・」

マーナガルムは1人葉巻を吸っていた。



一方その頃、 クリュネフ医学。 
その研究室の一つで一人の男が汗を流していた。
彼はリネ、 そこそこ年配の教授であるが薄給で副業として薬の運び屋をやっていた。
しかし金欲しさに薬に混ぜ物をしてちょろまかしてさぁ売ろう、 と売った相手がまさかの同業。
しかもちょろまかして売っているのがバレた。
恐らく自分の上の何某かが報復に来るだろう。

「はぁ・・・はぁ・・・」

恐らく自分は消される、 相手はマフィアか何かだろう。
それを裏切り損害を与えた自分は・・・

「っ!!」

リネはビール瓶を一気飲みした、 不安を酒で紛らわせるなんてクズのやる事だ。
しかしながらリネはクズである。
親が医者を目指せと無理強いされて勉強して入ったクリュネフ医学
卒業して医者になったがクリュネフ医学は三流以下の学校。
医学校のFラン※1 である。


※1:定員割れを常を起こし偏差値が付けられない最底辺の学校。
ボーダーフリーのFreeからFランと呼称される。


当然ながら入れる病院は最底辺の病院、 いや診療所であった。
ド田舎の限界集落、 医療機器どころか診療所もボロボロ。
オマケに患者も文句の多い老人ばかりで僻みで診療所に放火される始末。
こんな所には居られないと出て行ったが就職先が無い。
クリュネフ医学卒業のコネで就職したが医学教員とは言っても大した事は無い。
嘗ての自分の様なやる気の無い猿に近い連中に教鞭を取る。
低賃金でやりがいが無い仕事だった。

そんな中で備品の横流しを初めて、 どんどん悪事に手を染めて果ては薬の運び屋である。

「くそ・・・くそぉ!!」

報復が怖くて家に帰る事すら恐ろしい。
学校の宿直室に泊りがけの毎日である。

幸いにもクズの学校ではクズの教師が揃っている為、 家賃滞納で宿直室に転がりこむ教師は多かった。
狭いが恐怖は和らいだ、 しかしながら今日はリネ一人だけである。
他の連中は遊び歩きに行っている。

「すいませーん、 誰か居ますかー?」

警備員が宿直室を尋ねる。

「あ、 リネ先生、 ちょっと」
「何だ!?」
「酒くさ・・・あ、 いえ、 ちょっと検体希望者からの検体が届いて
ここで葬儀するらしいので遺体安置所で準備して貰って良いですか?」
「ここで葬儀?」

訝しんだが、 まぁこんな底辺学校に検体に来る奴なんて変人だろう。
ならばここで葬式やっても変じゃないか。

「わ、 分かった、 準備で具体的には?」
「葬儀は先方が準備してあるので一応立会と言う事で」
「分かった」

起き上がって宿直室から出て遺体安置所まで移動するリネ。

「ちぃ・・・太陽がまぶしい・・・」

鬱陶しがりながらもさっさと移動するリネ。
そうこうしている内に遺体安置所に着くリネ。

「どうも」
「あ、 どうも・・・」

葬儀を執り行う牧師が既に待機している。

「・・・・・この人が検体の?」

アサフの遺体を指差すリネ。

「・・・・・えぇ」

人の遺体に指差すな、 と言いたかった牧師だが言葉を飲み込んだ。

「損傷が激しいな・・・何をしたんだ?」
「崩れ落ちる教会から子供を救って瓦礫の下敷きに・・・」
「そうですか・・・・・座りますよ」

そう言って用意してあった椅子に座るリネ。
恐怖で胸が一杯だったが日の光に当たったからか少し恐怖が和らぎ眠ってしまうのだった。

「・・・・・」

酒臭いし直ぐに寝るし何だこの人、 と言いたかった牧師だが言葉を飲み込んだ。
そうこうしている内に二人の男女がやって来た。

「・・・・・どうも、 アサフは?」
「こちらに」

女性がアサフの遺体を見る。

「・・・・・」

涙を流し男が肩を抱く。

「故人とは如何言ったご関係で?」
「妻です」
「・・・・・血縁上は息子です、 と言うかボロボロじゃないですか
一体何が有ったんですか?」
「崩れ落ちる教会から子供を救って瓦礫の下敷きに・・・」
「ふん、 家族を捨てたのに良い身分だ」

男にぴしゃり、 とビンタをする女。

「・・・・・事実でしょうが」

男はぽつりと言った。
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