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チャプター11:フリー・ライド・ヘル・ライン

フロント・アンド・バック

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モーント・ズンディカーズ事務スタッフ、 運転手ドライバー
彼は戦闘要員では無いにも関わらずモーント・ズンディカーズにて幹部に上り詰めた。
無論戦えない訳では無い、 彼は文字通り運転手ドライバーとして
様々な場所に人々を送り届けていたのだ。

何故彼がモーント・ズンディカーズに入ったかと言うと単純明快。
彼は成り上がりたいからだ、 真面目に勉強して働いた方が良いのではないかと読者諸賢は思うだろうが
彼は元々イギリス帝国の貧民の子であった、 勉強したくても金がない
そもそも勉強を教えてくれる学校も無ければ教師も居ない。
働らこうにも一生名も無き労働者としてこき使われるだろう。
にも拘わらず『真面目に勉強せずまともな職に就かない破落戸ゴロツキ』として後ろ指を指されるのだ。

彼の人生の転機は7613年、 ヨーロッパ戦役。
彼はまだ若者だったが密輸などの様々な罪で捕まり
悪名高い罪人部隊として前線に投入された。
その戦いにおいて彼は”運転手ドライバー”と呼ばれる様になった。
彼には戸籍が無かったのだ、 それ故にその名前が与えられた。

運転手ドライバーと呼ばれた彼だったがヨーロッパ戦役においては
大した活躍はしていなかった、 寧ろ直ぐに逃亡した。
戦争に巻き込まれるなんてまっぴら御免である。
そもそも彼が若くして密輸等の様々な仕事を受けられたのも全ては
彼の危機管理能力の高さから逃げ足が速い事に由来する。
『優秀な悪人=強い』ではなく『悪人=強か』なのだろう。

何れにせよイギリス帝国の逃走兵になった彼に残された道は
真面目に勉強して働くなんて物では無く相変わらず密輸等の悪事だった。



不愛想な男で成り上がりたいが為に様々な仕事を請け負った彼は
モーント・ズンディカーズに重用される様になり何時の間にか幹部の
事務スタッフ、 運転手ドライバーとなった。

密輸の仕事でそこまでの地位が貰えるのか? という問いに対しては
彼はそこまでの仕事をしたと言う事である。
今でも裏社会では伝説の運転手ドライバーとして有名である。

彼には危機管理能力の高さ以外には大した才能は無い。
銃器を使うが並の達人という程度だ。
彼は自分が才能ではなく努力で
ここまでのし上がった叩き上げだと言う事に誇りを持っている



翻ってペーパーはスターダスト評議国の星派幹事長の家に生まれた男である。
スターダスト評議国は選挙で議員を選出して、 と言う民主主義的な国だが
現実問題として議員になる為には学歴が必要であり、 その学歴を取得するには
莫大な金がかかる、 一市民どころか中小規模の商会の跡取りでも厳しい。
大商会の嫡男ならば学費が払えて成績優秀者ならば学費の免除も有るが
そういう者が政治の世界に入って活躍するにはやはりコネクションが必要である。
優秀な者が政治闘争に負けるのは良くある事だ。

言うならばルールに則って民主主義に見せかけている封建制度である。
エメラルド・タブレットに関しても星派幹事長を歴任している一族が保管しているのだ。
言うならば努力はしているが大した事はしておらず
家柄90%で成り立っているのがペーパーと言う男である。




そして現在ペーパーは運転手ドライバーを殺そうと躍起になっている。
ポジション的には運転手ドライバーが圧倒的不利だが殺しきれない。
運転手ドライバーはこの程度の危険は既に経験済みだ。
銃口を必死に運転手ドライバーに向けようとするペーパー。

「っ~~~!! らあ!!」
「うお!?」

運転手ドライバーはペーパーの力に合わせて自分に引き寄せてペーパーを廊下から振り落とした!!

「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!?」

今まで感じた事の無い不安定に恐怖するペーパー。
運転手ドライバーはこの状況が危険だととっとと逃げる事にしたのだった。

「!?」

運転手ドライバーはガクンと転んだ。
右足が縛られている、 何が!?
アンテイアの天蚕糸テグスだ!!
アンテイアは天蚕糸テグスを使ってペーパーの落下と運転手ドライバーを防いでいる!!

「舐めんな!!」

運転手ドライバーはナイフを使って天蚕糸テグスを切断した。

「なっ・・・」

アンテイアは知る由も無いが運転手ドライバーは戦闘員ではないからと言って戦えない訳では無く。
きちんと武装を整えているのだ!!
銃のみならずナイフも勿論モーント・ズンディカーズの資金を使って良い物を買いそろえている!!
天蚕糸テグスは頑丈な素材だが糸故に頑丈な金属には遠く及ばない!!

運転手ドライバーは早急に逃げ出した!!

アンテイアは追いかけたかったが・・・

「!? 重ッ!?」

ペーパーが重くて支えなければ落ちてしまう!!
必死に支えるアンテイア!!

「助けてええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」

叫ぶペーパーに苛立ちながらもアンテイアは助けに入るのだった。
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